鎌倉文学館35周年特別展 川端康成が描く日本の伝統美

川端の作品や愛蔵品などが並ぶ特別展=鎌倉文学館

 鎌倉文学館(鎌倉市長谷)が開館35周年を記念し、特別展「川端康成 美しい日本」を開催している。1935年から鎌倉に暮らし、日本人で初めてノーベル文学賞を受賞した作家・川端康成(1899~1972年)は数多くの作品を生み出してきた。一貫して追求してきた日本の伝統美や鎌倉とのゆかりの深さを、作品の原稿や愛蔵品など約80点から感じ取れる。

 会場では、川端が書斎で愛用した鎌倉彫の机や、土偶に埴輪(はにわ)、ロダンの彫刻「女の手」など愛蔵美術品を展示。川端に宛てた署名付きの太宰治の小説集「晩年」や中原中也の詩集「山羊の歌」は初めて公開した。「雪国」「千羽鶴」や未完小説「たんぽぽ」などの自筆原稿、戦況悪化で表現の場を失った川端ら有志が若宮大路に開いた貸本屋「鎌倉文庫」の記録もある。

 川端は鎌倉を舞台とした作品も多く生み出した。それだけでなく戦時色が濃くなった鎌倉で灯火管制の見回りもし、「自分のかなしみと日本のかなしみとのとけあふのを感じた」「自分が死ねばほろびる美があるやうに思つた」と作品でつづるなど、鎌倉とのゆかりの深さもパネルで解説している。

 同館の山田雅子学芸員は「川端の視点を通じて、日本語や表現の美しさを感じてほしい」と話す。

 特別展は12月23日までで月曜休館。午前9時~午後4時半(入館は同4時まで)で、入館料は一般500円など。11月中旬には動画投稿サイト「You Tube」で、川端作品を読み解く文学講座や古典講座の無料配信も始める。

 同館は85年、300人以上いる鎌倉ゆかりの文学者の著書や原稿、愛用品などを収集・保存・展示しようと開館した。問い合わせは同館、電話0467(23)3911。

© 株式会社神奈川新聞社