【入試改革】間近に迫ってきた2025年度新課程入試、入試概要の公表は来年の夏頃

先月末、新聞等の各メディアが2025年度入試(令和7年度)での大学入学共通テストの出題教科・科目案を報じました。すぐさま大学入試センターは10月23日に「検討途中であり修正を行うこともある」との発表をしました。しかし、その発表文の中で「一定の方向性を整理した」とも記しており、一部に疑問が残る組み合わせが見られるものの、ほぼ最終案に近い科目構成と見られます。文部科学省のスケジュールでは2025年度入試の概要は来年2021年夏頃に公表することになっており、各大学の試験科目の予告期限は2022年9月の見込みです。今回は、現在の中学2年生が受験することになる、新学習指導要領に対応する初年度の大学入試について考えます。

「数学Ⅱ・B」が「数学Ⅱ・B・C」へ、理科の基礎科目は4つ合わせて1科目

10月末に報道された2025年度入試における大学入学共通テストの出題教科・科目案を一覧にしたものが<図表1>です。外国語と国語は変更がありませんが、それ以外の教科はいくつか注目される点があります。

まず、数学ですが、従来は「数学Ⅱ・数学B」までが出題範囲となっており、数学Bが3つの分野で構成されていることから選択問題が3題出題され、いずれか2問を選択する仕組みでした。案ではこれに数学Cが加わることから、出題範囲が広がることになります。これは数学Cで学ぶことになっている「ベクトル」を出題範囲に入れたかったものと思われます。当然、選択問題が用意されると見られますが、文系受験生にとって負担は重くなる可能性が考えられます。今後、各大学が入試科目としてどの科目を指定するかにもよりますが、場合によっては数学に代わって「情報」を選択した方が有利になるかも知れません。理系受験生にとっても数学Cは、標準的には高校3年生で学ぶことになるため、共通テストまでに十分な理解と演習ができるかどうか心配されるところです。

また、地理歴史では、「地理総合」、「歴史総合」が出題範囲に加わります。中でも「歴史総合」は日本史と世界史の内容が含まれているため、受験科目として日本史(「日本史探究」)を選択した受験生は世界史の知識も必要となります。同じように受験科目として世界史(「世界史探究」)を選択した受験生も日本史の知識が必要となります。これも受験生にとっては負担増となりそうです。

さらに、理科で検討されている「物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎」を1つにまとめた科目ですが、果たして受験科目として選択する受験生がいるかどうか疑問です。次期学習指導要領では、基礎を付した科目(「物理基礎」等)は3科目を履修すれば良いとされています<図表2>。つまり、基礎を付した理科の科目を4科目履修する生徒はほぼいないと考えられるため、この科目を受験する生徒もほぼ存在しないことになります。現実的には4科目にわたる選択問題が用意されると思われますが、どのような出題フレームになるのか注目されます。

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各大学が科目を予告する期限は2022年9月、従来は年度末が期限だった

受験生にとって重要なことは、志望する大学がどのような入試科目を課すのかということです。大学入試には“2年前予告ルール”があり、各大学は受験該当学年の生徒が高校2年生になる前までに、入試に必要な教科・科目を公表することになっています。ただ、各大学としては共通テストの概要などが決まらなければ、少なくとも共通テストを利用した入試方式の教科・科目は決められません。現在のところ、文部科学省は2021年夏頃に共通テストの大綱と入学者選抜実施要項を公表する予定です<図表3>。

こうした文部科学省による通知等を受けてから、各大学は自大学の入試制度や入試教科・科目を決めることになります。現段階でも、すでに入試担当者が情報収集を始めている大学も一部には見られますが、組織的に検討を進めている大学はまだないと言って良いでしょう。特に私立大学の場合は、併願者が多い他大学の入試科目を見てから、自大学の科目等を決めたいと考えていますので、公表時期が遅くなりがちです。ただし、前述のように2年前ルールがありますので、公表の期限は決まっています。ところで、この期限ですが、従来は公表年度の「年度中」とされていました。つまり、3月末までに決定して公表すれば良かったのですが、文部科学省の資料<図表3>を見ると2022年9月頃と読み取れます。高校1年生が2年生からの選択科目を決めるためには、年度末ではなく、この方が有り難いのですが、多くの大学は今のところ従来のように年度中に決定・公表すれば良いと考えているでしょう。今のところ、2021年度高大接続元年入試の準備や新型コロナウイルス感染症対策のため、とても2025年度入試のことを考える余裕はないと思われますが、改訂後の学習指導要領やその解説は文部科学省のHPで公表されています。できるだけ早く検討を開始して早めに公表をして欲しいところです。

その他の注目点は、英語4技能評価、英語問題の作問、理科・地歴の記述問題

共通テストに話を戻すと、科目構成以外でもいくつか注目されるポイントがあります。まずは英語4技能評価の問題です。2021年度入試では英語の資格・検定試験の成績提供システムの実施が見送られ、共通テストでの英検等の民間試験の導入が見送られました。再びこのシステムを導入する時期として、新課程入試は目標としやすい年度です。そのため、2025年度入試の共通テストで民間試験を活用し、英語4技能評価を行う可能性は捨てきれません。

その英語4技能評価と関係しますが、文部科学省は当初、共通テストの英語試験は2023年度までは継続して実施し、それ以降は実施しないとしていました。高校、大学の関係者からは、大学入試センターによる作問・出題の継続を望む声が多いのですが、今の段階では廃止か継続か明確になってはいません。ただ、行政側が一度「作問しない」と発表した後、それを否定していない以上は施策としての「作問しない」は継続していることになります。昨年末に英語4技能評価と数学・国語の記述問題を見送ることを大臣が発表したように、然るべき時期に政策変更の措置をとるのか、あるいは来年夏頃に公表予定の入学者選抜実施要項で、英語4技能評価に全く触れないで自然消滅の形をとるのか、注目されるところです。

そして、大きな混乱を招いた記述問題の導入も再び目指すとすれば、やはり新課程入試の初年度が目標となるでしょう。当初の予定では数学、国語に加えて地理歴史・公民、理科にも記述問題を導入するとされていました。実現可能性はかなり低いと見られていますが、総合型選抜や学校推薦型選抜でのオンライン面接の急拡大などのように、突然、ゲームチェンジが起こるかも知れません。

まだ先のことのように考えられている2025年度入試ですが、共通テストの教科・科目の検討は着々と進んでいます。大学・高校双方の入試の現場では、目の前の2021年度入試を無事に乗り切ることができるかどうかが当面の大きな課題ですが、来年の夏頃には2025年度入試の概要が見えてきます。そこから新課程入試が動き始めることになります。

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