【博報堂×三井物産】渋谷でまちづくりの実証実験 2021年中の本格サービス開始へ

株式会社博報堂の新規事業開発組織「ミライの事業室」は、東京・渋谷エリアを対象としたデジタルアプリサービス「市民共創まちづくりサービス shibuya good pass」を開発し、13日から三井物産株式会社と連携サービスの実証実験を開始した。2021年中に本格的なサービス開始を見すえる。

両社は今年9月に「生活者ドリブン・スマートシティ(=生活者が主役のまちづくり)」の実現を目指して連携し、新事業推進に向けた協業を開始した。

13日には都内で両社の協業活動の一つである生活者共創型の都市サービスプラットフォーム「shibuya good pass」の発表会が行われた。

「shibuya good pass」のキーワードは「みんなでつくるgoodな渋谷」。今秋から渋谷エリアで展開し、「shibuya good pass」アプリ利用者は、渋谷の街のソーシャルグッドな活動への参加や渋谷エリアの社会課題の解決につながる連携サービスを利用できる。

■月額固定乗り放題のモビリティサービスで2km圏内の移動を自由に

連携サービスの第一弾として、小型車やマイクロバスをオンデマンドで呼び出し、月額定額で乗り放題できるモビリティサービス「shibuya good ride」のテスト走行を13日から15日にかけて実施した。

「shibuya good ride」は地域内の「チョイ乗り移動」のニーズを集約化し、最適ルートで最適車両を提供するAIオンデマンド交通サービス。WILLER株式会社が現在京丹後エリアでサービス提供をしているMaaSアプリに渋谷エリアを追加したかたちとなる。13日〜15日のテスト走行時はマイクロバス1台と小型車3台の計4台が走行した。

アプリ画面のイメージ

「shibuya good ride」はアプリ内で検索・配車・決済が可能。乗車時はアプリで検索・配車すると約10分でエリア内を巡回する車両が呼び出せ、各自の目的地まで相乗りできる。月額定額制(サブスクリプション)の乗り放題で、個人利用のほか法人利用も可能だ。通院や買い物、子どもの送り迎え、仕事の移動などでの利用を見込む。今後は実証実験を通して、車両台数や仕様、サービス提供時間などを検討し、来春から本格的にサービス提供を開始する予定だという。

「shibuya good ride」で提供されるマイクロバスと小型車。

渋谷区は区民調査からも交通利便性の良い街という声が上がっているが、バリアシティ化の遅れや道幅の狭い道が多く残っていること、また、渋谷駅構内の乗り換えの複雑さや駅から離れた大学などへの長い徒歩移動などの課題があるという。

WILLERの代表取締役である村瀨茂高氏は、「開発のコンセプトは地域で共有する『コミュニティモビリティ』。皆でモビリティを共有することで、移動時間やコストを最適化できると考えている。特に渋谷エリアでは、毎日の移動、自宅から1~2kmの近距離生活圏の移動を変えることに可能性を強く感じている」と期待を込めた。

三井物産 NewDownstream新規事業開発室長の生澤一哲氏(左)
WILLERの村瀬茂高社長(右)

「shibuya good pass」では、一つの共通基盤の上に多様な都市サービス事業者が連携し、アプリサービスを利用する生活者のニーズや声を反映しながら、生活者と企業の創造性を引き出し、共創によるまちづくりの実現を目指す。

「これからのまちづくりは、生活者の多様化する価値観に答えていくことも重要。生活者自身にまちづくりに参加してもらうことや、データ・AIの活用が鍵となる。生活者を中心としたスマートシティ創造のために連携して進めていきたい。」(株式会社博報堂ミライの事業室室長 吉澤到氏)

「社会課題は地域固有のものなので、基本的には地域ごとにサービス開発をしながら、同時にいろいろな場に参画していきたい。すでに複数自治体からの問い合わせもあり、さらにアジアの中でも課題の多い都市など、グローバル展開も考えている。」(三井物産株式会社 エネルギーソリューション本部 NewDownstream事業部長 松本陽介氏)

今後、両社は渋谷での実証実験を経て、2021年春のβ版のサービス開始を予定しており、本格サービス開始後、「good pass」事業として2025年までに国内の複数都市での実装を目指す。さらに、日本発の「生活者ドリブン・スマートシティ」のモデルケースとして、全国や海外都市への展開も視野に入れていく。

渋谷エリアの課題解決につながる連携サービスを順次提供する。

(取材・記事/柴田 祐希)

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