雲仙・普賢岳噴火30年 「火山活動 静穏な状態」 平成新山に防災視察登山 九大と島原市 「ドーム崩落 警戒必要」

平成新山は小康状態を保っているが、山頂付近からは噴気が上がっていた

 雲仙・普賢岳噴火から30年を迎えた17日、九州大地震火山観測研究センターと長崎県島原市は、噴火活動で形成された溶岩ドーム「平成新山」(1483メートル)の防災視察登山を実施した。清水洋センター長(64)は「火山活動は静穏な状態」と見解を示す一方、「小規模な水蒸気爆発の可能性があり、注意が必要。大地震によるドーム崩落にも引き続き警戒してほしい」と呼び掛けた。
 普賢岳は1990年11月17日に198年ぶりに噴火。91年6月3日には大火砕流が発生し43人が犠牲となった。視察登山は、火口周辺に形成された溶岩ドームの現状を関係機関で共有しようと95年から毎年春と秋に実施。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、春の開催は見送っていた。国土交通省や消防、警察、報道関係者ら約100人が参加した。
 参加者は、雲仙市小浜町雲仙の仁田峠(約1100メートル)を発着する往復約7キロの行程を登山。入山規制している警戒区域内に入り、不安定に折り重なった岩石を越えて山頂に登った。
 同センター関係者が数カ所で噴気温度を計測。噴火活動中は約900度とされ、観測を始めた95年春は500~800度程度あった噴気温度。今回、山頂部付近では沸点より低い94度だった。10年ほど前に100度を下回って以降、80~90度台の横ばいで推移しているという。
 国交省雲仙復興事務所などによると、溶岩ドームは1年間当たり約6センチ沈降。97年の計測開始から23年間で島原市側に計約1.36メートルずり下がった。警戒区域は島原半島3市が溶岩ドームの東側を中心に計約950ヘクタールを設定している。

山頂付近で噴気の温度などを調べる九州大地震火山観測研究センターの松島健准教授=平成新山

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