倉庫をリノベーションして住宅に変えられる?費用や事例を紹介

倉庫を住居にして秘密基地のようにしたい。そう思っていたとしても、それが実現できるのかわからずあきらめてしまう人はいると思います。実は、倉庫を改装した住まいの例はたくさんあります。今回は、倉庫をリノベーションして住居に変える方法や費用相場、注意点、具体的な事例を紹介します。

倉庫のリノベーションといえば店舗やオフィス?

倉庫のリノベーションといえば店舗やオフィスを思い浮かべるかもしれません。倉庫は比較的安価に手に入る中古物件で、店舗やオフィス物件を欲しいと考える事業者にとって魅力的です。おしゃれなカフェに改装したり、レストランや居酒屋といった飲食店に用途変更したりといった事例はたくさんあります。

広々とした空間に、高い天井、豊富な収納スペースは、倉庫ならではの特徴といえるでしょう。配管ダクトむき出しのまま内装を仕上げるデザインなどはその典型例で、独特の雰囲気を醸し出しだせます。

店舗やオフィスの印象が強い倉庫リノベーションですが、住宅への転用もできます。水道やキッチンなどの水回り設備やインフラをきちんと整備することで、立派な家に改装することもできるのです。倉庫をリノベして住居に生まれ変わらせる方法には、デザイン性や居住性、コストの面で多くのメリットがあります。

倉庫を住宅にリノベーションするメリット

住居用にリノベーションする目的で倉庫物件を購入する方もいます。おしゃれで広々とした、個性豊かな住居が安価に手に入るのは倉庫の魅力。ここでは、倉庫を住宅にリノベーションするメリットを紹介します。

個性的でデザイン性の高い住居にできる

倉庫特有の雰囲気を残すことで、独特の内装デザインの住居となります。高い天井に通る梁に、柱、モルタルやコンクロートの打ちっぱなしの壁。どれをとっても倉庫のものは住居と異なり、無骨ながら味わい深い印象を与えます。大き目の排気ダクトも倉庫のなごりを伝え、通常の住居にはない雰囲気を醸し出します。倉庫ならではの住居アレンジが楽しめて、個性あるスタイルに憧れる方にピッタリの方法です。

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インダストリアルインテリアを上手に選ぼう。間違えない選び方のコツや実例を紹介

天井高が確保しやすく開放感がある

倉庫はもともと多くの荷物や資材、物資を収める用途の建物だけに、天井高が確保しやすい特徴があります。この特徴を生かしたリノベーションでは、開放的な空間が得やすくなるのです。ロフトを設けたり、吹き抜け構造にしたりといったスペース利用や設計も難しくありません。リビングやダイニングを規格外の広さにすることも可能です。

間仕切りが少ないため間取りの自由度が高い

倉庫はもともと間仕切りが少ない建物です。これは、物の運搬・移動をスムーズにするためですが、このシンプルな構造が間取りの自由度を高めてくれます。部屋の追加や水回りの移動もとくに大きな障害はなく実現できるでしょう。構造はそのままで、住居らしい空間に移行できます。

購入費用・解体費用を安く抑えやすい

倉庫にはもともと内壁が無い場合が多い。取り壊すものが少ないため、解体費用が安くなる可能性が大きい

倉庫物件はマンションや戸建てと比べ販売価格が低めです。同じエリアであっても倉庫のほうが安く購入できるため、コストをできるだけ抑えたい方にとって好条件で購入できます。都心など地価が高いエリアでの物件入手を検討する方にとっては、とくにうれしいメリットでは。

倉庫には余計な設備がなくがらんどうの状態で引き渡されることも珍しくありません。つまり購入者にとっては解体費用が浮くわけです。これも倉庫物件が手頃な価格で手に入る要素といえます。

倉庫を住宅にリノベーションするデメリット

倉庫リノベーションのデメリットについても把握しておきましょう。倉庫を住居用に転用するには、倉庫の状態によっては、水道・ガス・電気などのインフラを整備する必要があります。また、住居としての基本的なポテンシャルを備えていないことも問題で、防音性や断熱性を向上させるための工事が必要といたった手間がかかる点にも要注意です。

水道、ガス、電気などが住居用に整備されていない

電気、ガス、水道など、ライフラインのあらゆる設備を住居用に設置しなければならない

水道やガス、電気などのインフラが住居用としては不十分です。きちんと住めるようにするための水道・ガスの引き込み工事、コンセント設置、配管工事などが欠かせません。浴室やキッチンなどの水回り設備も新設しなければならないでしょう。とにかく、住居用にするためのさまざまな工事が必要です。

断熱性、防音性、耐震性が低い場合がある

断熱性や気密性、防音性などが不足した状態では住むことが難しく、断熱リフォームや防音対策が必須です。耐震性や耐久性が不足していれば、耐震補強や壁の補修などが必必要となるでしょう。

倉庫はもともと窓が少ない建物で、窓の増設工事が必要になることも。さらにサイズも小さめで、窓を大きくする工事が必要なこともあります。ただし、安易な窓の増設工事は建物の耐震性や強度を弱めます。この点を加味した場合、構造計算に対応できるリノベーション業者の依頼が賢明です。

リノベーション費用が高くつく可能性がある

前述の通り、倉庫はそのまま住める仕様になっていません。生活インフラ・水回り設備・断熱性・耐震性・防音性などが不足していれば改良工事や断熱材を入れるリフォーム工事、防音対策、採光対策が必要となり、費用がかさみます。

加えて屋根や外壁の補修が必要であれば、さらに高額となるでしょう。外装工事まで加わったら、1500万円以上かかるケースもあります。倉庫リノベーションだからといって、すべてのケースでリーズナブルになるわけではない点に注意が必要です。

倉庫をリノベして住宅にするのにおすすめの人は?

「普通の家にはない雰囲気やデザインを楽しみたい」といった方に倉庫リノベは向いています。広い空間に高い天井、大きな梁に柱など、独特な世界観がある点が多くの人を惹きつける要素です。個性的なデザインやインテリアにこだわりたい方にとくにおすすめのスタイルといえるでしょう。

倉庫リノベーションの費用相場

倉庫を住居用に使うためのリノベーション費用はどのくらいでしょうか?通常、倉庫の状態はそのままでは住居用として適さず、さまざまな設備を追加したり、性能を加えたりする工事が必要です。

その範囲がどこまで広がるかは、購入物件の状態次第なところがあります。「必要な設備が整っている場合と整っていない場合」「必要設備に加え外装工事や補強工事も必要な場合」について、それぞれ説明します。

必要な設備が整っている場合

電気・ガス・水道設備がそろっていて、断熱性や防音性、耐震性などにも不足がなければ、必要最低限の内装工事さえ実施すれば十分住めるようになります。500万円の予算があれば工事できるでしょう。

内装リフォームの費用目安について詳しくはこちら。
内装リフォームにかかる費用の相場とは。よくある失敗例や注意ポイントも解説

必要な設備が整っていない場合

必要なインフラが整っておらず、断熱性も防音性も欠如していれば、これらを穴埋めするための工事が不可欠です。断熱リフォームや防音対策にかける追加工事費用が発生します。予算は1000万円程度かかると見ておくのが無難です。

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断熱リフォームの費用相場は?気になる補助金や効果を紹介

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外装や補強工事もする場合

必要な設備も不十分で、かつ耐震性や耐久面に不安がある場合、設備追加工事と、屋根や壁などの外装・補強工事を行う必要があります。予算は1500万円以上かかると思っておきましょう。予算的に厳しい場合は、以下で紹介する工事費用を抑制する方法で対応できないか検討してみてください。

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工事費用を抑える方法

ここでは倉庫リノベ費用をできるだけ低く抑えるコツを紹介します。必要な設備工事や補強工事の見極めがつけば、不要な工事を避け無駄な出費を抑えられるでしょう。そのためにはその道のプロフェッショナルに判断を仰ぐのが一番です。

リフォーム会社に足りない設備を確認する

足りない設備や電気の必要容量などは、リフォーム会社に調査してもらって確認することをおすすめします。足りない設備はどれか、必要な追加工事はどこまですればいいかの判断がしやすくなるからです。相談すると同時に、リフォーム費用の大まかな見積もりを頼んでおくとどれくらいの予算でできるかの見通しも立てやすくなります。

ホームインスペクションへ調査依頼をする

購入を検討している物件に重大な瑕疵(かし)がないかを調査してくれる「ホームインスペクション」がおすすめ

建物の耐久性や性能、耐震性を診断するホームインスペクションもおすすめです。これらの診断で建物の状態が把握できるとともに、必要・不要な工事の判別が可能となります。ホームインスペクションの実績豊富な専門家に調査を依頼し、必要な工事をあらかじめ想定したうえでリノベーション業者に依頼するのもひとつの手です。ホームインスペクションを依頼する場合は、建築士など資格を持ったプロフェッショナルに頼むと安心です。

事前に知っておきたい注意点

倉庫リノベを実施する前に、知っておきたい注意点を説明します。リノベーションの満足度を高めるためにも、事前準備をしっかり整えたうえで工事を進めましょう。

住宅ローンを組む場合は事前に「用途変更」が必要

おそらくほとんどの方が、物件の購入と改修工事の資金調達のために住宅ローンを利用することと思われます。この場合、事前に建物の用途を「倉庫→住宅」へ変更しておかなければなりません。

手続きを怠ったばかりにローン審査や工事計画が滞ってはもったいないため、必ず変更手続きを済ませておきましょう。なお、ローンを組まずに工事ができる場合は、事後の用途変更でも問題ありません。用途変更しないまま住み始めると違法状態となるため、それだけは注意してください。

リノベーションローンについて詳しくはこちら。
リノベーションのローンの選び方とは?住宅ローンとリフォームローンを徹底比較

「工業専用地域」にある倉庫は住居として使えない

工業地帯にある倉庫は住居用へ転用できない

倉庫をリノベーションして住居への転用を考えている場合、物件の用途地域の種別確認が重要です。なぜなら、「工業専用地域」に住居用建物を建てることはできないためです。同地域の倉庫は住居に転用できないことになります。地域によって転用可能の可否が分かれる点に注意してください。

倉庫リノベーションの手順、工事期間

倉庫リノベーション完了までは、「物件の購入」「建物用途手続き」「リノベーション設計の打ち合わせ」「リノベーション工事」の流れで進みます。工事の規模にもよりますが、設計の打ち合わせに1~2カ月半、工事に2カ月半~3カ月程度かかるのが通例です。それぞれの内容について簡潔に説明します。

物件の購入

まずは物件探しからスタートします。価格や立地条件、アクセス条件、住みやすさ、通勤通学の面、リノベ可能かどうか、生活インフラの整備状況など、さまざまな面を考慮して選ぶことになります。倉庫物件は多いわけではないため、物件探しにも時間がかかります。

建物用途変更の手続き

物件を購入後、早速「用途変更確認申請手続き」に入りましょう。これを済ませないと住宅ローンを利用できません。確認申請手続きを行わずに異なる用途で建物を使用すると、法律違反に問われます。建物は用途別に安全基準が設けられており、住居と倉庫では基準が異なるのです。そのため安全に使用するためにも用途変更確認申請手続きは必ず行いましょう。

リノベーション設計打ち合わせ

工事に入る前に、リノベーション設計の打ち合わせを入念に行います。これに要する期間は、およそ1~2カ月半程度です。もちろん工事内容やこだわりにもよりますが、最低1カ月は使ったほうがいいでしょう。多くの日数を確保しておいたほうが準備もたっぷりとできて万全な状態で工事に入れます。

リノベーション工事

施工業者との間で打ち合わせが済んだら、満を持して工事着手です。工事期間は規模によるものの、2カ月半~3カ月程度を想定したほうがいいでしょう。ただし、一般的な住宅規模より大きな面積の場合は、竣工がどれくらいになるか事前に確認しておくのが安心です。

倉庫リノベーションの事例

間取り変更も自由にできる倉庫リノベにはさまざまな選択肢があります。選択肢が多いことは、それだけ可能性の広がりもあると考えていいでしょう。実際にどうリノベーションしていいのかイメージがつかない人のために、倉庫リノベーションの事例を紹介します。

おしゃれなカウンター造りのキッチン

mi___myhome_m4さんのインスタグラムより

動きやすさや収納、動線など、キッチン設計で欠かせないポイントはいくつかあります。それらに加えて、個性やおしゃれな雰囲気も大事にしたいところです。倉庫だった空間にあらたにキッチンを造作しようと思えば、大胆な改装と造作が必要となります。

倉庫ならではの雰囲気を活かすなら、太い配管や大きな排気ダクトをあえて見せるキッチンもおすすめです。キッチンカウンターなどの家具を配管に合わせてグレーに造作すれば、味のあるテイストで統一できます。倉庫の非日常性をうまく取り入れながら、さまざまな工夫やアイデアを凝らして日常空間に近づけてみましょう。

倉庫リノベなら洗面所もこんなに広く使える

mi___myhome_m4さんのインスタグラムより

洗顔やメイク、髪のセットで使う洗面所。さまざまなアイテムを収納するスペースでもあるため、広く使いやすいほうが便利です。倉庫リノベなら、もとある倉庫の間取りによっては広く使える空間にすることも可能です。

広い空間を確保すると鏡も洗面ボウルも規格外サイズのものを設置できます。これなら子どもたちが並んで歯磨きするなど同時使用も大丈夫です。誰かが使っているときに脱衣所や浴室へ移動するのにもそれほど困らないでしょう。

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