何が争点かわからない学術会議問題…その原因は国会とマスコミ?

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。11月5日(木)放送では、弁護士の倉持麟太郎さんが“社会問題の争点”について述べました。

◆何が争点なのかわからない…学術会議問題

政府は、日本学術会議の会員任命を巡り、法解釈が以前から一貫しているとする主張を裏付ける記録や根拠を出すよう求められましたが、示せませんでした。立憲民主党の枝野代表は政府見解について「解釈を変えたと受け取らざるを得ない」と批判。任命権を巡っては、1983年に当時の中曽根首相が「形式的に過ぎない」と答弁。政府は「学術会議の推薦通りに任命する義務はない」とする内部文書を2018年に作成し、1983年から一貫した考え方だと説明しています。

社会のさまざまな問題を裁く裁判では、双方が主張し合うなか、争点を整理し、判決へと導いていきます。しかし、学術会議問題について倉持さんは「何の話をしているかよくわからない。争点を整理したほうがいい」と指摘。

倉持さんは、今回の問題は4層構造だと考えているそうで、その1つは「政治的責任の問題」。2つ目は「法律論」。3つ目は最も重要だと言う「制度的な問題」。もしもこれが違法の場合、争う手段があるかと言えば「今の日本にはない」と倉持さん。また、任命拒否された学者のなかに法学者がいるにも関わらず、この制度的な欠陥に誰も言及しないことを懸念。そして4つ目は「学術会議の存在意義」です。

これら4つの争点があるにもかかわらず、倉持さんは「菅首相が、俯瞰的総合的に反・菅首相を押さえつけるような構図になっており、何が争点なのかがわからない」と危惧します。

◆与野党ともに都合よく法解釈をねじ曲げている!?

こうなってしまった要因は、国会とマスコミにあると倉持さんは示唆。例えば、枝野代表は「学術会議のメンバーについて内閣総理大臣に任命の拒否権を認めると天皇陛下に内閣総理大臣の任命の拒否権を認めることになる」と述べていましたが、倉持さんは「法律的にはこんなことにはならない」と明言。この2つは「全く違う話で、これは法律家だったら誰もがわかっている話」と言います。

しかし、枝野代表は元弁護士でありながら、「自分の支持者や上顧客向けに演説していて全然争点整理ができていない」と嘆きます。そして、情報を垂れ流すだけのマスコミにも慨嘆しつつ、「菅首相の法解釈もまずいと思うが、与野党ともに自身の都合のいいように法解釈をねじ曲げ過ぎ」と意見します。

◆争点を形成・提示しないと国民は不幸に?

整理だけでなく、新たな争点の形成も重要視する倉持さん。実際、社会では多くの問題が棚上げ状態で、「政治家にしかできないことやマスコミにしか伝えることができないようなことがたくさんあるにも関わらず、争点を社会に示して作っていくことができていない」と悔やみます。

こうなってしまった理由は「議席を守るためだけに上顧客に訴える構造の定着化」と推察しつつ、「政策やスキャンダルに関して、国会は争点整理をしていくべき」と倉持さんは訴えます。そして「それだけでは国会、野党の機能は小さすぎる」と指摘し、「現代社会が抱える構造的問題について、それが自分たちのタブーに触れるかどうかではなく、積極的に国民に提示していかないと健全なオルタナティブが育たない。そうでないと選択肢がなく、国民が不幸になる」と力説。

さらには、説明責任を果たさずとも勝ち続ける政府の現状に関し、「答えなくても勝てるなら答えない。それはすごく合理的な権力者だと思うし、国民が監視してしなくてはいけない」と民主主義の問題についても言及していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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