コロナ禍の影響 労働生産性にも  2019年度の日本の労働生産性は前年度を上回る

新型コロナウイルスの感染拡大によって日本経済が打撃を受けるなか、日本生産性本部が公表した「日本の労働生産性の動向2020」(報告書本文はこちら)によると、コロナ禍は労働生産性にも大きな影響を与えていることが明らかになった。

日本生産性本部は、経済成長や働く人の豊かさを実現する政策立案や施策の展開に役立てることを目的に、日本の労働生産性の現状を定点観測・分析し、毎年11月に公表している。

 2019年度の日本の労働生産性は、時間当たりの名目労働生産性が4,927円と、2年ぶりに前年度の水準を上回った。また、物価上昇を織り込んだ時間当たりの実質労働生産性上昇率でみると、2019年度は前年度比プラス1.2%であり、前年度のマイナス0.4%から1.6ポイント改善している。これは、2019年度に非正規雇用の増加や働き方改革などによる労働時間の短縮が進んだことが影響したのではないかと報告書では分析している。

 しかし、コロナ禍により経済情勢が一変したことから、2020年4~6月期の実質労働生産性上昇率は前年度比マイナス2.7%と大幅に下がった。ただし、これは実質経済成長率のマイナス幅より小さくなっている。 

また、同じく2020年4~6月期の前年同期比で算出した産業別の労働生産性上昇率をみると、製造業全体ではマイナス13.8%、サービス産業全体ではマイナス9.0%と大幅な減少となった。製造業には米中貿易摩擦やコロナ禍に伴う貿易コスト上昇の影響が、またサービス産業には外出自粛や飲食店などを中心とした営業自粛の影響があったとみられる。 

なお、日本生産性本部が例年公表している「労働生産性の国際比較」は2020年12月下旬に公表予定だ。

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