少年に懲役9〜13年 川崎・中1殺害 地裁判決

 神奈川県川崎市の多摩川河川敷で市立中学1年の男子生徒=当時(13)=が殺害された事件で、殺人と傷害の罪に問われた無職少年(19)の裁判員裁判の判決公判が10日、横浜地裁であった。近藤宏子裁判長は「主導者として最も重い責任があるのは明らか」として、懲役9年以上13年以下の不定期刑(求刑懲役10年以上15年以下)を言い渡した。3人の少年が起訴された事件で判決は初めて。

 近藤裁判長は判決理由で、少年は年長者3人がかりで被害者に1時間余りもの間、カッターナイフで首などを切り付けたと認定。全身の傷痕は43カ所に及んだほか、被害者は命じられるまま真冬の川で2回も泳がされ、最後は放置されて自力で移動しながら絶命したとし、「凄惨(せいさん)というほかなく、手口の残虐さは際立っている」と非難した。被害者が味わわされた恐怖や苦痛は甚大で、「無念さは察するに余りある」と強調した。

 犯行の経緯については、事件前に少年が男子生徒の知人らとトラブルになったことを「被害者が告げ口したものと邪推して怒りを募らせた」と指摘。別の少年からカッターナイフを差し出されたことが大きな契機となったとしつつ、「殺害は自身の判断で、少年自身の責任は大きい」とした。

 また、犯行は「極めて自己中心的で短絡的な発想」とする一方、背景には少年に共感性の欠如や問題解決力の脆弱(ぜいじゃく)さがあったことも認めた。その上で、「計画性を欠いた突発的な犯行で、成育環境に由来した未熟さが影響していることからすると、不定期刑の上限にするとまでは言えない」と判断した。

 判決によると、少年は昨年1月17日午前2時ごろから約30分間、横浜市港北区の駐車場で、遊び仲間だった男子生徒の顔面を殴るなどしてけがを負わせた。2月20日午前2時ごろ、18歳の少年2人=ともに傷害致死罪で起訴=と共謀し、多摩川河川敷で男子生徒の首をカッターナイフで多数回突き刺して殺害した。

 横浜地検の勝山浩嗣公判部長は「判決の内容をよく検討し、適切に対応したい」とコメント。少年の弁護団は今後の対応について「コメントできない」とした。

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