77歳の母親が突然「施設に入りたい」と言い出して…介護保険の申請方法から介護サービスの選び方

人生100年、老後2,000万円問題などメディアで取り上げられていますが、誰のお世話にもならずに元気で安心した老後を送りたいと思っている人も多いかもしれません。しかし、年齢を重ねるごとに避けては通れない健康と老いの問題。今回は、一人暮らしの女性が家族に「施設に入りたい」と言い出したことがきっかけでおこった介護保険の体験談をもとに紹介します。


77歳女性が「施設に入りたい」と思ったきっかけ

77歳の女性は夫が約15年前に亡くなってから一人暮らし。近くに、娘2人と、親戚夫婦も住んでいます。高血圧、狭心症があり、約10年前に右の股関節に人工関節を入れる手術をしていて、膝も悪く、杖をついて歩いていますが、定期的に受診をし、薬の管理もできていて物忘れもないため、日常生活は問題ないと思っていました。ところが、病気や一人暮らしの不安を訴えて娘に「施設に入りたい」と言うようになりました。

女性は「血圧が高い日はふらついてしんどいし、一人で住んでいるから倒れていても見つけてもらえないかも知れない」との不安からです。どういった施設がいいか、どれくらいの料金がいいかもわからず、とにかくどこか施設に入りたいという気持ちばかりが先走っており、しかも、病院の先生に相談したら、すぐにでもどこかの施設に入所させてもらえると考えていたようです。

介護の申請どうするの?介護保険の基本を知ろう

まず、申請の手続きに必要になりますので、介護保険の基礎知識です。介護保険の被保険者は、65歳以上の方「第1号被保険者」と、40~64歳までの「第2号被保険者」に分けられます。第1号被保険者が介護サービスを利用するには、利用したい原因を問わず要介護認定(要支援認定を含む。以下同じ)を受けることが必要です。

普段生活している中で、例えば、かがんだ姿勢で掃除をすることができない、買い物で重い物を持って帰るのがしんどい、足元がふらついて転倒しそうになる、などでも要介護認定の申請は可能です。介護ができる家族がいる、いないは要介護認定の要件には特にありません。要介護認定の申請に関する相談や困りごとは事前にかかりつけ医や自治体の設置する「地域包括支援センター」に相談することができます。

なお、40~64歳の第2号被保険者は、老化が原因とされる表2の特定疾病が原因で要介護認定を受けたときには介護サービスを受けることができます。

介護保険申請から介護サービス利用までどうなるの?

77歳女性は、家族の協力のもと介護保険の申請をして、実際介護サービスを利用できるようになりました。では、実際介護サービスの利用までどのような流れになるのか紹介します。

(1)要介護認定の申請は市役所の窓口で
65歳になると誕生月には介護保険証が自治体から送られてきます。その介護保険証を持参し、市役所の介護保険課の窓口で、要介護認定の申請を行うことができます。要介護認定の際、主治医に意見書の提出などが求められるので、主治医にはあらかじめ相談しておくとスムーズでしょう。

(2)介護認定調査を受ける
認定調査員が自宅などに訪問し、「体がどこまで動くか」「移動や食事、トイレ着替えはどのようにしているか」「物忘れはないか」「周りが大騒ぎするような問題行動はないか」「薬やお金の管理、買い物は誰が行っているか」など、77歳女性は30~40分くらいかけて約70項目の質問を受けたそうです。

(3)要介護認定を受ける
介護認定調査後、市役所より要介護度が印字された新しい介護保険証が届きます。77歳女性の場合は、「要支援2」で有効期間は12ヵ月とのことでした。
※有効期間は新規申請(初めて)の場合、6ヵ月ですが、市町村が認める場合は3~12ヵ月の間で定められます。

(4)介護サービス計画書(ケアプラン)の作成
介護サービスを利用する場合は、ケアマネジャーに介護サービス計画書(ケアプラン)の作成をしてもらいます。「要支援1、2の支援を地域包括支援センター、要介護の支援をケアプランセンター(居宅介護支援事業所)に相談することになっています。要介護認定を受けたら、本人、家族が納得のいく支援が受けられるよう、何ヵ所かに話を聞いてみましょう。

介護保険で利用できるサービスってどのような内容?

介護サービスは、大きく6つに分かれ、さらに細かく分類されます。要介護認定を受けた人のみのサービスや、要介護度によっては受けられないサービス、条件付きのサービスがあります。利用する介護サービスを選ぶときには、ケアマネジャーに本人・家族の希望をしっかり伝えておくことがポイントです。

77歳女性が選択したサービスと費用

冒頭で紹介した77歳女性は、病気により「1人で倒れていたら嫌だ」という不安があったため、ケアマネジャー、本人、娘とで、困りごとをもとにサービス事業所をどこにするか話し合い上の表2のうち以下のサービスを選択しました。

(2)体調管理のため、看護師による週1回30分の訪問(訪問介護)
(6)自身で購入した簡易ベッドでの寝返り、起き上がり、立ち上がりをしやすくするため、ベッドサイドに手すりのレンタル(福祉用具貸与)

居宅での介護サービスを利用する場合は、利用できるサービスの利用限度額が要介護度別に定められていて、利用者の自己負担額は、介護サービスにかかった費用の1割(一定以上所得者の場合は2割又は3割)です。なお、自宅を離れ施設に入居して受けるサービスは別に定められています。

77歳女性は要支援2のため、介護サービスの利用限度額は1ヵ月あたり10万5,310円となっています。実際利用したサービスは下記のとおりです。

利用限度額の10万5,310円まであと8万4,590円分のサービスまで介護保険により利用することができ、利用限度額を超えた場合は、超えた分が全額自己負担となります。

まさかこんなに早く介護保険のお世話になるとは…家族の感想

77歳女性の家族(40代女性)が介護保険を利用してみた感想を紹介します。

「一人暮らしで不安がっていた母でしたが、ケアマネジャーが決まり、週1回、看護師さんが訪問してくれていることで、安心できているようです。また、手すりもレンタルし、環境が整ったため、できる限り家で生活することを選びました。

まさか自分の母がこんなに早く、介護保険のお世話になるとは全く想像できませんでしたが、母自身一番抵抗があったようです。高額になってしまうかも知れない有料老人ホームに、すぐにでも入りたいと思い悩んでいたことを思うと、介護保険を上手に利用することで住み慣れた地域での生活が続けられ、なおかつ費用もおさえられて、私たち家族も不安が解消されました。」

相談内容によっては、わかりにくい部分もでてくるかと思いますので、各市区町村の高齢介護課もしくは地域包括支援センターへ気軽に相談してみてください。

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