F1王者目指す角田裕毅「2021年に昇格し、日本のファンの期待に応えたい」ライセンス取得逃がせば帰国の予定

 2021年、スクーデリア・アルファタウリ・ホンダからF1デビューを果たす可能性が高まり、注目を集めている角田裕毅が、Formula1.comのインタビューにこたえ、自分の夢はF1チャンピオンになることであると語った。そのためにFIA-F2選手権を1年で卒業し、来年F1に昇格する必要があると、角田は考えている。

 角田はホンダおよびレッドブルの育成プログラムのメンバーで、現在FIA-F2選手権に参戦している。レッドブル首脳陣は、角田がF1出場に必要なスーパーライセンスを取得できた場合、来年アルファタウリに加入させることを望んでおり、今年中にF1フリープラクティス1に出場させることを目標に、そのための条件をクリアすべく、11月4日にはイタリア・イモラで角田のためにF1テストを実施。角田はアルファタウリのサポートのもとで自身初のF1テストに臨み、2018年型トロロッソSTR13・ホンダで300km以上の距離を走りこんだ。

アルファタウリで初のF1テストに臨んだ角田裕毅

 角田は日本でカートレース活動を行った後、2016年に4輪レースにデビュー、スーパーFJ、FIA-F4選手権に参戦し、FIA-F4シリーズチャンピオンを獲得。2019年にはFIA-F3選手権とユーロフォーミュラオープンに参戦、2020年にFIA-F2選手権に昇格した。残り2大会4戦の現時点で、角田はランキング3位につけている。

2020年FIA-F2ベルギー戦で優勝した角田裕毅

「日本では自分のパフォーマンスと競争力に自信を持っていました」と角田は『F1.com』に対してコメントした。

「そのころは、ヨーロッパでレースをしたことがありませんでした。(レッドブルのモータースポーツコンサルタントを務める)ヘルムート・マルコさんから、レッドブルのジュニアドライバーになるなら、F3で他のドライバーと戦って競争力を発揮する必要がある、(彼らと)同等のレベルの力を発揮し、結果を出さなければならない、と言われました」

 2019年にイエンツァー・モータースポーツからFIA-F3に参戦した角田は、シーズン後半の8戦で6回入賞、1勝を含む3回表彰台に上った。

「最初は結果のことはあまり考えていませんでした」と角田は言う。

「一生懸命プッシュして、どうなるかを見ていたのです。僕にとって真のターニングポイントとなったのは、2019年のスパ戦です。その週末、アントワーヌ・ユベールが(FIA-F2での事故で)命を落としました。彼は僕のその後の結果に影響を及ぼしました。僕は彼から学び、彼のためにレースをしました。そうして事故翌日のレース2で、シーズン初の表彰台を獲得したのです」

「次のモンツァ戦で(レース1で)表彰台と(レース2で)初優勝を挙げました。ドライビングパフォーマンスの面ではこれが本当のターニングポイントになりました。それがヘルムートに好印象を与えることになったのです」

## ■「F2を1年で卒業できるようでなければF1で活躍するのは難しい」と角田

 2019年、FIA-F3でランキング9位を獲得した後、角田は2020年にはカーリンからFIA-F2選手権に参戦した。

「F2は今までの人生のなかで最大のチャレンジでした」と角田は語る。
「でもF3シーズン開始時よりも強さを実感しながらシーズンスタートを迎えました。僕自身のペースはよかったですし、チームも優れていました」

 F3参戦時にヨーロッパに移り住んだ角田は、F2シーズンスタート前に、レッドブルの本拠のある英国ミルトン・キーンズに引っ越したという。ヨーロッパに拠点を移したことについて角田は、大好物の日本食を食べられず、食事の面で苦労していると明かした。

「日本から移り住むのは簡単ではありませんでした。越してきた当初は食事で苦労しました。日本食が合っているので、ヨーロッパに来て食事が変わってしまい、日本食が恋しいんです」

「今シーズン、目標を達成したら、上等なお寿司を食べたいですね。そうやってお祝いしたいです。お祝いで食べるお寿司は格別です。まずまずな一年を送った後で食べるお寿司は普通の味ですが、いいニュースを受け取った後で食べると、違う味がします。それが同じお寿司であってもです。おいしいお寿司とラーメンを食べるために、頑張ります」

 その目標と、いいニュースとは具体的に何かと聞かれ、角田は「ヘルムートから、今シーズン、いい仕事をしなければならないこと、スーパーライセンスを取得するためには(ランキング)5位を獲得する必要があることを、知らされています」と答えた。

「5位になったら、F1で走る資格を得られるのだそうです。それができなければ、また日本で走る必要があります」

「厳しい言葉でしたが、彼の言っていることに賛成です。もしもジョージ・ラッセル、ランド・ノリス、シャルル・ルクレールのように優れたドライバーなら、F2で走るのは1年で十分です。彼らは2年や3年を必要とはしませんでした」

FIA-F2第7戦ベルギー 角田裕毅(カーリン)

 現在ランキング3位の角田にとって、残り2大会4レースは非常に重要になる。

「毎レース、優れたパフォーマンスを発揮する必要があります。プレッシャーになりますが、そういう気持ちで戦うのは良いことです。今年は今のところ悪くはありませんが、今後何が起こるのかを見ていきましょう」

「僕の夢はF1世界チャンピオンになることです。F2で苦しんでいるようでは、難しいと思います。ランド・ノリスやジョージ・ラッセルのように、ルーキーシーズンにしっかり結果を出す必要があります」

 角田がF1に参戦する場合、小林可夢偉以来の日本人F1ドライバーが誕生することになる。可夢偉は2009年終盤にトヨタからF1にデビュー、2010年から2012年にザウバーから、2014年にはケータハムからF1に参戦した。

「日本のファンは、(日本人の)ドライバーがF1に参戦するのを待っています。それはソーシャルメディアを見れば分かります」と角田は言う。

「日本からのプレッシャーを感じるとも言えますが、それは悪いプレッシャーではなく、いいプレッシャーです。彼らは日本人F1ドライバーを待ち望んでいます。それを達成するのに一番近くにいるひとりが僕なのです。彼らの望むことを実現したいですね」

 角田は、F1の終盤3戦、バーレーンGP、サクヒールGP、アブダビGPのどこかでFP1で走行した後、最終戦後のアブダビ若手ドライバーテストにも、アルファタウリから出場する見通しとなっている。

アルファタウリで初のF1テストに臨んだ角田裕毅

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