2005年、ロッテで日本一を経験するなどパの代表的な守護神だった小林雅英氏
SMBC日本シリーズはソフトバンクが巨人に4連勝で4年連続の日本一に輝いた。これで2013年の楽天から8年連続でパ・リーグの球団が頂点に立った。なぜここまでセとパの力の差が出たのか。ロッテで2005年の日本一を経験するなど、パの代表的なクローザーとして活躍した小林雅英氏に分析してもらった。そこには「パワーピッチャー」の系譜が関わっていると見る。
終わってみてば、ソフトバンクの圧倒的な強さで、2020年の日本シリーズは幕を閉じた。投手陣は千賀を中心とした先発陣、甲斐とのバッテリーで巨人打線を翻弄。打っても、ラッキーボーイ・栗原らの活躍で打ちまくった。
――ここまで差がついてしまった要因はどのあたりにあると思いますか?
「パ・リーグの打者たちは、パワーピッチャーたちを打ってきている。そこの差は大きいと思います。それは今に始まったことではありません。積み重ねてきたパの歴史がそうなっていると思います」
――今年で言うとソフトバンクの千賀投手、オリックスの山本投手あたりでしょうか?
「西武の高橋(光成)投手もそうですし、日本ハムの有原(航平)投手、今は少し変わっていますが、(楽天)涌井投手も昔はそういうタイプですよね。ただ、それは今年に限ったことではありません」
――と言うと?
「古くは西武の黄金期から。西武の渡辺久信さん、郭泰源さん、石井丈裕さん……。近鉄の野茂(英雄)さん、ロッテには伊良部(秀輝)さん、僕がプロに入った(1999年)頃もそうです。西武に(松坂)大輔が入ってきて、ダイエー(斉藤)和巳がいて、みんなそういう速い投手を打たないと行けないとバッターが思うようになっていた」
――当時のロッテもそうでしたか?
「やっぱり大輔の存在は大きいですよね。練習でもミーティングでもいかにあの速いボールを打とうかと考えていた。彼を打たない限りは勝てないわけですから。当時は1チーム5~6人の先発投手のうち、半分くらいがパワーピッチャーでしたから、打者はみんななんとかしようとしますよね」
「打者は今年のソフトバンクの投手陣の強さを忘れてはいけない」
――その後もパには好投手たちが続々と……
「そうですね、ドラフトでパワーピッチャーがパ・リーグに入ってきましたよね。先ほど、名前を挙げた涌井投手もそうですし、ダルビッシュ投手、マー君(田中将大)……。バッターたちはああいう投手たちを倒そうと向き合ってきた。スカウティングとくじ運も関わっているとは思います」
――セ・リーグを見渡すと……
「もちろんいました。古くは90年代の巨人の斎藤雅樹さん、桑田真澄さん、槙原寛己さんの3本柱もそうですし、中日の抑え、ギャラードとか横浜のクルーンとか、リリーフでもいました。今年でしたら巨人の菅野(智之)投手。他の球団を見ると、広島の大瀬良投手……。ただ、近年、そう多くはないのかな、と」
――セ・リーグでパワー系の投手が出てくれば、状況は変わってきますか?
「そう簡単ではありません。前述したように、打者はパワー系の投手を打ってきた歴史があります。力をつけてきた打者に対し、さらに上をいこうと投手がさらに力をつける。その相乗効果というか、繰り返されて、強い投手と、強打者たちが育っています」
――小林さんのロッテ時代もパには強打者たちが多くいました。
「パ・リーグの歴史を見ると、日本ハムのビッグバン打線にダイエーのダイハード打線、近鉄のいてまえ打線……他にも西武の松井稼頭央、カブレラ、和田一浩さん、オリックスもイチローさん、ニールら強打者がいました。ロッテはそういうのあんまりなかったかな(笑)。4~5球団にそういう打線があったら、投手は力がつくと思います」
――来年こそ、巨人がリベンジするにはこの経験を生かさないといけない
「打者は今年のソフトバンクの投手陣の強さを忘れてはいけないですし、あのボールを打つという思いを持っていないといけない。しばらくはこの悔しさを忘れずに練習すると思います。しかし、時間と経過とともに、そのパワー系や高いレベルのボールは忘れてしまうし、シーズンが始まればセ・リーグの投手たちは打ててしまうでしょう。今年は交流戦がなかったというのも影響があったかもしれません。でも、ソフトバンク、パ・リーグの強さを忘れずに一生懸命、練習してほしいと思います」(Full-Count編集部)