魂震わせる珠玉の映画を世界初の舞台化! 東山紀之主演・谷原章介共演、宮本亞門演出『チョコレートドーナツ』

2014年、単館上映から話題となり日本中を感涙させた映画『チョコレートドーナツ』(2012年/アメリカ)を覚えています? ゲイカップルが障がいを持つ少年と養子縁組するために法廷に挑む、無償の愛を描いた物語――。

全米映画祭が絶賛、観客賞を総ナメにし、不朽の名作と呼ぶにふさわしい作品が世界で初めて、東山紀之主演・谷原章介共演、宮本亞門演出で舞台化されます! 映画とはまた違う、舞台ならではの臨場感と感動。70年代のアメリカのヒットナンバーを散りばめた華やかなショーシーンと、緊迫の法廷ドラマを織り交ぜつつ、愛と希望、未来を求めて偏見や差別と闘う感動のヒューマンドラマは必見の価値あり。

また、舞台化を記念した映画のアンコール上映も決定。ブルーレイやDVDの廉価版の再リリースもあるので、劇場まで足を運べない人はもちろん、大切な人へのクリスマスプレゼントにもオススメ。ちなみに「実話」をベースに描かれた作品ということですが、この作品が出来上がった経緯は以下の通り――。

1970年代のアメリカ・ブルックリンのあるアパートの一室。そこには母親に育児放棄された障がいを持った子どもを育てている一人のゲイが住んでいました。ある日、友人から彼らを紹介された脚本家のジョージ・アーサー・ブルームは、このゲイ男性がもしカップルで、少年と養子縁組をしようとしたらどうだろうと考え、彼らが「家族」になるために直面する問題を調べ、一本のシナリオを書きます。

やがて時が流れて2011年。トラヴィス・ファイン監督とジョージ・アーサー・ブルームの息子が同級生だったという偶然から、約30年前に書かれたオリジナルのシナリオが、新たな映画のアイデアを探していたトラヴィス監督の目に留まったそうです。

映画化するにあたって脚本を新たに書き直すことにしたトラヴィス監督が当時のことを調べたところ、ゲイ男性が育児放棄された少年を育てていることを伝える小さな新聞のコラムを見つけたそうです。ただ、残念ながらその後の彼らについてはリサーチしても分からずじまい。

つまり、『チョコレートドーナツ』はジョージ・アーサー・ブルームの脚本をきっかけに、トラヴィス監督が小さな新聞記事から創作した物語なんです。

また、この映画のモデルとなった興味深いエピソードは他にもあります。『チョコレートドーナツ』 のエグゼクティヴ・プロデューサーを務めた、弁護士のウェイン・ラルー・スミス氏と不動産ブローカーのダニエル・スカヘン氏は20年来のゲイカップル。彼らは実際に、二年間育てていた2人の里子を巡って裁判を起こし、1993年にフロリダ州で初となる養育権を勝ち取っているのです。この子どものうちの一人は様々な民族の血をルーツにした男の子でした。そして、このゲイカップルがニューヨークタイムスのインタビューに答えた「血の繋がりがない、異種族の血を持つ6歳の子どもを養子にしたいと思う人は誰もいない」という言葉は、映画の中では「肥満のダウン症の子どもを欲しがる人はいない、自分たち以外は」というセリフに引き継がれているのです。

マイノリティを取り巻く環境が今よりずっと過酷だった70年代に血ではなく愛情で繋がった「家族」がいたのは紛れもない事実。その後の彼らがどういう時を過ごしたのかは想像するしかないんだけど、きっと、今もこの世界のどこかで笑顔に包まれて幸せに暮らしていると思うのです。養育権を巡って法廷に挑んだエグゼクティヴ・プロデューサーのゲイカップルは、映画製作時(2014年)には33人もの子どもを育てたとのこと。彼らがいたからこそ、この愛の物語が生まれたんです。

かつてに比べればマイノリティが生きにくい世の中ではなくなったけれど、逆に情報に踊らされ見知らぬ人とのコミュニケーションに必死で、身近にいる人同士の心の繋がりが薄くなってしまった現代。誰かを愛することや優しさを忘れていないか、舞台&映画『チョコレートドーナツ』で再確認してはいかがでしょうか。

■ 舞台:PARCO劇場オープニング・シリーズ
『チョコレートドーナツ』
日程/2020年12月7日(月)~12月30日(水)
場所/PARCO劇場(渋谷パルコ8F‎)
※地方公演/2021年1月~順次上演(上田、仙台、大阪、東海)
https://stage.parco.jp/program/choco

※映画再上映は、12月11日(金)~24日(木)まで東京・ホワイトシネクイントにて公開(舞台『チョコレートドーナツ』のチケット提示で200円割引)

※映画予告編は2014年劇場公開時のものです。
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記事監修/よしひろまさみち
記事制作/みさおはるき(newTOKYO)

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