ネットの大学「managara(マナガラ)」開設

学び、キャンパスライフ、キャリア支援と、大学4年間のすべてをオンラインで提供するネットの大学『managara』が、2021年度の4月に開設される。20年10月に設置認可され、開設に向けて着々と準備が進められている。コロナ禍により、オンライン授業が急速に広がる中、先端技術を駆使した『ネットの大学』がどのような学びを展開していくのか、その可能性に注目が集まっている。

これから訪れるのは、テクノロジーを活用することで得られる「ながら学び」の時代。ブランド名「managara(マナガラ)」には、そのような意味が込められている。

デジタル社会が急速に進み、教育分野でも文部科学省による『GIGAスクール構想』、経済産業省による『未来の教室』など、EdTech(教育:Education×テクノロジー:technology)が推進されている。このような状況を背景に、「ネットの大学managara 」は、2018年に『学ぶ側の事情に即した学びの環境を作りたい』という思いで合致、提携した新潟産業大学(新潟県・柏崎市)を設置する学校法人柏専学院と、総合教育サービス企業の株式会社ウィザス(大阪府大阪市:東証JQスタンダード上場)によって構想された。『学ぶ意欲があるなら、いつでも、どこでも、誰でも』をコンセプトに、『働き

』、あるいは『夢を追い

』などの『

学び』を象徴するブランドとして、『managara(マナガラ)』と命名した。

授業は10分で構成 広がる学びの可能性

managaraは、新潟産業大学経済学部経済経営学科の通信教育課程に位置づけられ、『経済学分野』『経営学分野』の2コース。通学型の4年制大学と同様に124単位取得すれば、卒業時には経済経営学士を取得できる。基本教育科目として『学習力養成』『思考力養成』』『表現力養成』『人間力・社会力養成』『人間理解』『社会理解』『国際理解』が設けられ、その上でさまざまな経済学・経営学の専門科目を学ぶ。正規講座のほか資格・スキル取得のためのオプション講座も設定。『デジタルデザイン基礎講座』『ITパスポート講座』など、時代に即した5種類のラインナップで、随時増やしていく予定という。

従来の通信教育課程との大きな違いは、キャンパスでのスクーリングが必要ない点。これにより、仕事をしながらの履修、あるいは外国で履修するハードルを低くした。さらに講義は10分間で完結するため、移動などの隙間時間を利用して聴講できる。通常、大学の授業は90分で1コマだが、managaraでは「10分程度の映像講義×6本と小テスト(理解度チェック)やレポート作成等」が1コマの基本構成となる。学費は入学金5万円、授業料は30万円で初年度は35万円、4年間で126万円と、国立大学の半分以下に設定されている。経済的な理由で大学進学をあきらめざるをえない生徒にも、門戸が広がりそうだ。

授業は映像講義をベースとし、小テストやリポートなど課題が加わる。さらにslackやzoomなどのツールを使い、プレゼンやグループ学習も取り入れていく予定。教員やスタッフへの質問には、土日をのぞき原則24時間以内に対応する。イベントやサークル活動、キャリア支援も、同様にslackやzoomで行う。

どんな学習者のニーズに応えられるのか?managaraのホームページでは、『海外でバックパッキング』『地方で就職』『海外遠征をこなすアスリート』『起業の夢の実現に向かう』『心身に不安がある』など、具体的に5つのエピソードを紹介している。

働きながら、夢を追いながら、世界を訪れながら、趣味に没頭しながら、家業を継承しながら…。何かをし「ながら」大学卒業が目指せる、新しい大学のカタチ

WEB記者会見開催 設立の思いを語る

11月12日には、開学にあたってオンライン記者会見が開催された。第一部はmanagara学長・星野三喜夫氏、ウィザス代表取締役社長・生駒富男氏、managara設立プロジェクトリーダーの阿野孝氏が登壇した。星野学長は「地域社会を支える人材、起業を目指す人材など、幅広く社会に貢献できる人材を育てたい。時間、空間、経済の制約をなくした新しい学びを、最新のテクノロジーで提供していく」、生駒氏は「2005年に通信制の高校を開校したとき、学びの自由度を増すことで意欲的になれる生徒がいることがわかった。今回はそれを大学という舞台で提供していきたい。関係者と2年間議論を進めてきていて、内容の濃い教育を提供できると思う」と抱負を語った。阿野氏からは、managaraの詳細が説明された。

設置認可の報告をする managara学長・星野三喜夫氏とウィザス代表取締役社長・生駒富男氏。オンライン記者会見にて。

第二部はトークセッションとして、映画”ビリギャル”のモデルになった小林さやか氏、Dream Project School代表の山本秀樹氏、一部に引き続いて阿野氏が登壇し、オンライン教育の可能性について語った。山本氏は講師として、managaraで講義を担当する予定だ。各氏の発言は次の通り。

小林氏:「公立中学校で『大人になるのが楽しみか』というアンケートをとったら、『はい』『いいえ』が半々でした。『はい』の理由は勉強をしなくてもいいから、『いいえ』は大人は大変そうだから。どちらの答えもネガティブで、これは大変な事だと感じました。勉強って基本みんなが嫌いで、義務教育を卒業する子どもたちの8割が、勉強嫌いなまま卒業するというデータもあります。でも大人になると、みんな子どもに「勉強しなさい」と言い出す。目標が明確になると、学びの必要性が感じられるからだと思います。

今はどちらかとういうと、勉強は大学に入ることが目的で、受験やテストに重きが置かれている。自分のためという意識が持てません。生徒や学生に言いたいのは、勉強は苦行じゃないということ。目標が明確になると、学びは楽しくなります。私は最終学歴じゃなくて、最終学習歴という言葉が大好きです。学習歴なら何歳になっても更新できる。そういう意味では、managaraのような学び続けるプラットホームができることは、義務教育のあり方すら変えるくらいの大きなパワーになるのではないかと思います」

山本氏:「学びが生まれるのは、インプットではなくアウトプットの瞬間です。今の日本では、社会人になって学び直す人はほとんどいません。海外では、社会に出てから一定の年数が経つと、学び直したいという意志を持って大学に戻ってくることがよくある。小林さんの言うとおり、どこにいても、何をしていても学べるという環境が整っていれば、新たな学び方のスタイルを後押しするかもしれない。

日本の教育には、柔軟性がないと思う。いろいろな考えを持った人がいるのに、こと教育に関しては偏差値による序列が浸透していて、そこからこぼれた生徒は『自分はダメだ』と自信をなくする。教育方法にも工夫がなく、海外の先進事例を見ても『すばらしいですね。でも本校では無理』というスタンスです。それが今、ようやく是正され、柔軟性が生まれつつあるように感じます。オンライン授業の広がりは、ローコストキャリアエアラインが登場したときと似ています。飛行機は自分には関係ないと思っていた人たちが、格安料金で長距離移動できるようになった。その結果、様々な波及効果が生まれて、新しいビジネスも誕生しました。

教育機関であるとともに研究機関でもある大学では、現在使われているオンラインのツールを、使いこなすだけではなく発展させていく機運が生まれている。managaraの誕生は実にタイムリーで、今後の展開か楽しみですし、一教員として身が引き締まる思いです」

阿野氏:「山本氏から柔軟性という言葉をいただきましたが、世界中どこにいても学べる等、オンライン教育には柔軟性があります 日本の社会人は本当に忙しいから、スクーリングがないことは、学び直しの垣根を低くすることにつながると思います。もちろんメリットのある高校生も多いと思います。経済・経営を学ぶ事は、将来絶対プラスになります。各自のライフスタイルにあった学びを提供するとともに、学びたいのに学べなかった人にも門戸を開くことができればとても素敵だと思います。

今後は、たとえば日本中を旅して各地で貢献活動し

、あるいは海外にい

、さらに外国人の方には自国にい

、学べるように、様々なサービス団体とアライアンスも組んでいきたい。2021年の開設が待ち遠しいです」

第三部はデジタルハリウッド大学大学院教授の佐藤昌弘氏、TURNSプロデューサーの堀口正裕氏、ブルボンウォーターポロクラブ柏崎 総監督の青栁勧氏、ユーチューバーの葉一氏からの応援メッセージが紹介された。

managaraがどのように発展し日本の学びを変えていくのか、期待が高まっている。

■ネットの大学「managara」(2021年4月開設)

https://managara.nsu.ac.jp/

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