ラルシュかなの家のコミュニティ生活

第三回 愛されたい、愛したい

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聖母の騎士社は印刷出版業務を行うことを目的として長崎県長崎市の聖母の騎士修道院内に設置されているキリスト教の出版社です。

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私が所属している生活支援のグループ「めぐみ」に本多さんというなかまがいます。(ラルシュかなの家では知的障害者の利用者のことを「なかま」と呼んでいます。)

午前中にみんなと西ヶ谷運動場へ散歩に行きましたが、前日に肺癌で亡くなった父の葬儀があり疲れているので、運動場の回りを周りたくないなあと思っていたのですが、本多さんが、水を飲む水道で水遊びをはじめました。もう涼しくなってきたので風邪をひくとこまるので本多さんと運動場を周り始めました。半周くらい周ったところで本多さんが「ハグー」と言ってハグをしてきて、「つらいー」と言ってきました。甘えん坊の本多さんの決まり文句です。また少しあるいてハグをして、「つらい」と言ってきたので、私は「田邊さんのお父さんが神様を信じないで死んじゃったからつらいんだよ」と話しました。決まった言葉しか話さない本多さんが「神様はー」と言ったので、ちょっとビックリして今度はなんて言うのだろうと本多さんの顔を見ました。そして少し歩いて今度は「神様のー」と言い直して、次に、「することはー」と言って、「救うことです」と言いました。未信者の本多さんがキリスト教の真理を言ったので私はすごく驚き、本多さんの顔がなぜかキリストに見えました。そして最後に本多さんはやさしい顔をしてやさしい言葉で「しんじているよ」と言ってくれました。私はあまりの驚きで体が震え何も言うことができずに立ちすくんでしまいました。仕事が終わって家に帰るとほっとして、神様が父を救ってくださったことを実感して泣きじゃくりました。本当に安心して、神様の愛を受け取ることができました。未信者のもっとも弱い本多さんをとおして神様は思いもよらない方法で私を癒してくださいました。

ラルシュの創設者ジャン・バニエが人間には「愛されたい、愛したい」という深い望みがあると言っています。なかまの人たちの愛する能力は直線的で他人を信じて身を任せることです。本多さんその他のなかまの人たちから、私はあふれんばかりの愛を日々受けとっています。かなの家が所属するフランスのラルシュコミュニティはジャン・バニエが言うお互いの弱さをもって共に歩むことを大事にしています。障害者はとても弱い存在です。それを支えているアシスタントは、なかまの弱さから自分の弱い部分を知り共に生活することの大事さを教えられます。ぜひ皆さんも一度ラルシュかなの家に遊びに来てください。なかまたちが大喜びで迎え入れてくれて、それぞれの個性をもって接してくれるすばらしさを知ることができます。(ラルシュかなの家 田邊豊)

聖母の騎士 2019年3月号より一部掲載

社会福祉法人ラルシュかなの家 https://larchejapankana.localinfo.jp/