福井地震、校舎倒れ児童ら犠牲に

福井地震で落ちてきた二宮金次郎像を見上げる三井延子さん=福井県坂井市兵庫小

 兵庫村(現福井県坂井市)兵庫中の校庭。バレーボールの試合を3日後に控え、三井延子さん(83)=福井県鯖江市=ら同校2年の女子生徒たちは、円になって元気よくパスを回していた。そこに突然の揺れ。ゴオーッという地鳴りのような音も聞こえた。「みんなパニック。夢中で走リ出した」。一目散に校門を目指した。

 走って走って、砂利の道路へ踏み出した瞬間、バーンと地面が割れた。亀裂は幅20センチ、深さは1メートルくらいあったはず。「はまったら大変」。すぐさま校庭に引き返した。

 揺れは激しさを増し、立っていられない。校門近くに茂るシロツメクサの上に座り込んだが、座っていることもままならない。体がごろごろ転がりそうになるのを、茎や葉っぱをつかんで耐えた。四つんばいのような姿勢で、揺れに身を任せるしかなかった。

 ドン、と鈍く重い音が響いた。すぐ近くに二宮金次郎の銅像の頭が転がっていた。直撃していたらと想像し「背筋がぞくっとした」。

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 顔を上げると「スローモーションのように」講堂が傾き倒れていくのが目に入った。次の瞬間、舞い上がった土煙が押し寄せ、真っ暗闇に。煙が収まると、校舎も近くの家々も全部つぶれていた。

 バレーの仲間が、泣きながら集まってきた。涙でぬれた目の周りや口や鼻が、土で真っ黒になった顔を見合わせ「よかったね、すごい顔だね」。泣き笑いしながら、抱き合って無事を喜んだ。

 当時、同校と兵庫小は併設されていた。小学4年の妹は校内で踊りの練習をしていたはず。つぶれた校舎へ走った。余震は続いていたが、残骸の山に登っては柱を引っ張りだして下りる、というようなことを繰り返した。

 「今助けてやるぞ」。近所の男衆十数人が走ってきた。屋根板をはがし、柱を取り除いてくれた。一人、また一人と救い出され、ついに妹の姿も。白いブラウスに血がにじんでいたが元気だった。無我夢中で抱きしめた。

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 児童生徒11人と、女性教諭1人が校舎の下敷きになり亡くなった。数日後、合同葬が営まれた。女性教諭は産後間もなかった。赤ちゃんも自宅で亡くなったと聞いた。

 学校は休みになった。子どもも大人を手伝い、それぞれの家の後片付けに明け暮れた。9月に入り、授業が再開された。倒壊を免れた校舎を交代で使い、時には青空教室で学んだ。がれきから掘り出した教科書を使った。「授業が受けられる。頑張ろうと前向きだったと思う」。外での授業は風が心地よかった。

 今月5日に兵庫小を訪問した。今は中学は併設されていない。地震に遭った場所を訪れるのは約70年ぶりだった。校門付近はすっかり変わっていたが、二宮金次郎像は当時のものらしかった。「こんなに小さかったっけ」。あの日の光景が目に浮かんだ。

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