「88年世代」最速MVPから3度目のトレード…西武・吉川光夫に訪れた同級生との“縁”

入団会見に臨んだ西武・吉川光夫【写真:宮脇広久】

今季限りで引退の高橋朋己氏の背番号「負けないように頑張りたい」

日本ハムから西武に金銭トレードで移籍した吉川光夫投手が27日、埼玉県所沢市の西武球団事務所で入団会見を行った。背番号は、元守護神で今季限りで現役引退した高橋朋己氏が入団から背負っていた「43」を引き継ぐ。吉川と高橋氏は同じ本格派左腕で、1988年度生まれの同世代でもある。

「前任の高橋君に負けないように頑張りたい」と吉川。高橋氏はプロ2年目の2014年に63試合に登板し13ホールド29セーブ、翌15年も62試合で14ホールド22セーブを挙げるなど、まさに獅子奮迅の働きを見せた。左肩を痛めて18年オフに背番号「123」の育成選手となったが、球団は昨年と今季の2年間、高橋氏の「43」を欠番にして復帰を待ったほど。球団関係者は「ウチにとって43は重みのある番号だから、吉川には大切にしてほしいし、ぜひ活躍してほしい」と語る。

88年生まれは多士済々。吉川は06年の高校生ドラフト1位で広陵高から日本ハムへ入団した。同年の高校生ドラフトでは、現ヤンキースの田中将大投手が楽天、現ツインズの前田健太投手が広島、坂本勇人内野手が巨人、梶谷隆幸外野手(当時は内野手)が横浜(現DeNA)に入団している。

“大卒組”は10年ドラフトで、斎藤佑樹投手が日本ハム、柳田悠岐外野手がソフトバンク、今季の沢村賞に輝いた大野雄大投手が中日、今季途中にロッテへ移籍した澤村拓一投手が巨人入りした。

その後も高校、大学、社会人を経た88年度世代がプロの世界へ。12年ドラフトで高橋氏、現守護神の増田達至投手が西武、石山泰稚投手がヤクルト、17年首位打者の宮崎敏郎内野手がDeNAへ。13年ドラフトでも石川歩投手がロッテ、現日本ハムの秋吉亮投手がヤクルトに入団している。

田中将大、前田健太、坂本勇人…88年世代のひとりとして復活なるか

田中、前田がメジャーで活躍し、坂本は日本球界を牽引する存在に。澤村は海外FA権、増田、梶谷は国内FA権を取得し、このオフに去就が注目されている。一方、高校3年の夏の甲子園で優勝投手となり、この世代を“ハンカチ世代”と呼ばせたこともある斎藤は、今季1軍登板なしに終わり、最近5年間で1勝と苦闘が続いている。上田剛史外野手はヤクルト、森越祐人内野手は西武から戦力外通告を受け、プロ人生の岐路に立っている。

この綺羅星のような世代で、最初にMVPを獲得したのが吉川。6年目の12年に14勝、防御率1.71をマークし、日本ハムを優勝に導いて受賞した。翌13年には田中、15年には柳田、19年には坂本が続いている。

吉川はその後成績が下降し、16年オフにトレードで巨人へ移籍。昨年のシーズン途中には再びトレードで日本ハムに復帰したが、今季はリリーフだけで5試合登板にとどまった。西武・渡辺久信GMは「私の監督時代(08~13年)は手ごわい投手だった。まだまだボールには力があるし、経験値も高い。(起用法は)現場が決めることだが、先発も視野に入れている」と期待を寄せる。

斎藤の同僚から、高橋氏の後継者へ――。西武では、木村文紀外野手、増田、そしてザック・ニール投手が同世代として迎える。鮮やかな復活を成し遂げ、この世代で新たな伝説を作ってほしい。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2