【島人の目】伊でワクチン反対運動

©株式会社琉球新報社

 最終治験で90%以上の感染防止効果があったとされる米製薬ファイザーとモデルナの新型コロナワクチン、さらに英オックスフォード大学開発のワクチンの成功は、大きな喜びを世界中にもたらした。
 ところが世界にはワクチンを喜ばない人々もいる。喜ばないどころか敵視さえするのだ。理由は拙速な開発や効果を疑うというまっとうなものから、根拠のないデマや陰謀論に影響された思い込みまである。後者の人々を科学の言葉で納得させるのはほとんど不可能に近い。それらの人々のうち、陰謀説などにとらわれている勢力は、科学を無視して荒唐無稽な主張をする米トランプ大統領や追随するQアノンなどを、ほうふつとさせる。
 ここイタリアにもそれに近い、激しい活動をする人々がいる。「“No Vax(ノー・ヴァクス)”」だ。No Vax運動は2017年以降、イタリアの左右のポピュリスト政党、五つ星運動と同盟の主導で勢力を拡大した。きっかけはほぼ4年前、イタリア政府が全ての子供に10種類のワクチンを接種する義務を課そうとしたことによる。
 ワクチンの「不自然性」を主張する、ひとつまみの過激な集団が政府への異議を唱えた。そこに「反体制」を標榜(ひょうぼう)する両党が飛びついて運動の火に油を注いだ。火はたちまち燃え盛った。2018年の総選挙では、五つ星運動と同盟が躍進して両党による連立政権が発足。No Vaxはさらに隆盛となりワクチン反対運動は激化の一途をたどった。
 そこに新型コロナが出現した。No Vaxはそれまでの主張を踏襲・拡大して、新型コロナワクチンにも断固反対と叫び、社会に無視できない影響をもたらしている。ワクチンが流通しても、イタリアを含む世界の新型コロナ問題はすぐには解決しない可能性も高いように見える。
(仲宗根雅則、イタリア在、TVディレクター)