アパート経営をしていて空室率の高さに悩んでいるなら、リノベーションの検討がおすすめです。リノベーションでより入居者のニーズに合った賃貸物件になれば、なかなか向上しなかった入居率が上がる可能性があります。物件の価値が上がれば、賃料アップによる増益が見込めるのもメリットです。
この記事では、アパートのリノベーションにかかる費用相場や注意点について解説しています。実例や業者選びのコツも紹介しているので、ポイントをおさえて効果的なリノベーションをしましょう。
アパートリノベーションの費用相場
まずは、アパートのリノベーションにかかる費用相場を紹介していきます。リノベーションとリフォームの違い、リフォームにかかる費用相場も紹介しているので、状況や財務状況に応じた方を選びましょう。
フルリノベーションの費用の相場。スケルトン状態にして間取り変更
物件の内装や設備を全て解体し、一度まっさらな状態(スケルトン状態)にして間取りやデザイン、設備を一新する工事を「フルリノベーション」といいます。費用は1㎡あたり10万〜15万円程度が相場ですが、建物の構造によっても金額は異なるので注意しましょう。
鉄筋コンクリートや鉄骨造の建物なら、スケルトン状態にしても物件の耐久性に影響がないことがほとんど。スケルトンにすれば、スムーズかつ自由にフルリノベーションしやすくなります。ただ、木造の場合は耐久性の観点から取り除いてはいけない柱や壁もあることも。スケルトン状態にするのに時間と手間がかかり、費用がかさむ傾向にあります。
リノベーションをした方がいいケース
リノベーションと混同されやすいものに、リフォームがあります。リノベーションは部屋の間取りを変えたり設備の配置を変えたりして部屋の価値を高めるものですが、リフォームは劣化した外壁や壁紙、床の張り替えなどを再生させる、原状回復の意味合いが大きいものです。工事費用はリフォームの方が安く済みますが、次の場合にはリノベーションの方がおすすめです。
- 部屋の間取りや設備が時代遅れで入居者が集まらない
- 賃料をアップしたい
収納設備が押し入れしかない、お風呂がバランス釜で古いなど、部屋のつくりが時代遅れだと入居者が集まりにくいことも。流行りのウォークインクローゼットを導入したり、広いお風呂に取り替えたりすると空室率が下がる可能性があります。
キッチンを対面式やアイランド型にするのも有効です。賃料アップはリフォームでは難しいですが、リノベーションにより賃貸向け物件の機能性や価値を高めれば可能です。空室率が下がったり賃料をあげたりすれば家賃収入の増加が見込めるので、今よりもっと収益をあげたい場合は、リノベーションをおすすめします。
アパート「リフォーム」の費用相場についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください
アパートリフォームの費用相場|補助金や安くするコツ、注意点を解説
内装のリフォーム費用の相場
リノベーションではなくリフォームをする場合はどれくらい費用がかかるのか、相場を紹介していきます。費用対効果も考えて、リノベーションをするかリフォームをするか判断しましょう。
床|畳やフローリングの張替え・古くなった壁材の張替え
畳やフローリングの張替えにかかる費用相場は、以下の通りです。
- 畳からフローリングに変える:3万〜4万5000円程度/畳
- フローリングを張替える:2万〜6万円程度/畳
壁|古くなった壁材の張替え
古くなった壁材(壁紙)を張り替えれば、雰囲気ががらっと変わります。張り替えには、1㎡あたり750〜1500円程度かかります。
間取り|和室から洋室へ変更する
間取りを変更する費用内訳の相場は、次の通りです。
- 和室から洋室に変更:55万〜100万円程度/6〜8畳
- 押し入れをクローゼットに変更:8万〜25万円程度
- 2DKを1LDKに変更:80万〜160万円程度/約33㎡
水回り設備のリフォーム費用の相場|キッチン・浴室・トイレなど
続いて、キッチンや浴室、トイレなど水回りのリフォームにかかる金額目安を紹介します。水回りはとくに清潔さ、新しさが求められる部分なので、古くなって汚れが目立つなら、リフォームを検討しましょう。
キッチン|キッチン本体のみ、給湯器などキッチン回りも含めたケース
キッチン周りのリフォームにかかる費用相場は、以下の通りです。
- システムキッチンを交換する:50万〜100万円程度
- ミニキッチンを交換する:28万〜50万円程度
- 壁付けキッチンの向きを変えて対面式キッチンにする:100万円程度
- コンロや換気扇、食洗機を交換・設置する:30万円程度
キッチンの移動により水道やガス、電気の大規模な配管工事が必要になる場合は、150万円程度かかることもあるので、その点も事前に確認しておきましょう。
浴室・風呂|ユニットバスの交換など
浴室・風呂のリフォームにかかる費用の相場は、以下の通りです。
- ユニットバスの交換:40万〜80万円程度
- 浴槽の交換:11万〜53万円程度
- バランス釜の交換:20万〜25万円程度
- 3点ユニットバスの交換:47万〜75万円程度
- 浴室の拡張/移動/増築:75万〜250万円程度
- 手すりの設置:3万〜5万円程度
- ドアの交換:5万〜17万円程度
- 給湯器の交換:10万〜40万円程度
トイレ|トイレの交換や、和式から洋式への交換など
トイレのリフォームにかかる費用の相場は、次の通りです。
- トイレの交換:10万〜30万円程度
- 和式から洋式への交換:10万〜40万円程度
- 手洗い器の設置:10万〜20万円程度
壁材(クロスやタイル)まで取り換えるとさらに費用がかかりますが、まだきれいな箇所はそのまま活かすのもひとつの方法です。
アパートリノベーションの施工事例
続いて、アパートリノベーションの施工事例を紹介します。築年数が古いアパートでも、リノベーションによって清潔感や明るさ、デザイン性、機能性が感じられれば、入居者は集まりやすくなります。費用を抑えたリノベーションの事例もあるので、見ていきましょう。
明るい色を使って、開放感のある部屋に
明るい色を使用するメリットは、古さゆえ暗くて清潔感がない印象を持たれがちなアパートにも、開放感を与えられることです。とくに玄関や浴室、洗面所、トイレ、キッチンは清潔感や明るさが求められます。最近は無駄な装飾のない、シンプルでミニマルな部屋を好む人が多いので、明るい壁紙を使い、棚やドアは同じ色調で統一すると、物件探しをする人の目にも止まりやすくなります。
フローリングを張り替えて新築のように
畳の部屋も趣があり素敵ですが、古い印象を持たれがちで、置ける家具が限られることから敬遠される傾向にあります。畳の部屋しかないのであれば、フローリングに張り替えて新築のような印象に仕上げましょう。
すでにフローリングのアパートでも、古くて傷んでいたり、色あせていたり、傷があったりする場合は新しく張り替えた方が入居者に気に入られやすくなります。フローリングには白に近い色からこげ茶までさまざまな色の種類があります。中にはカラフルなデザインのものもあり、部屋のアクセントにも。どの色を選ぶかで印象が大きく変わります。好みが分かれるところなので、ターゲットをイメージして選ぶことも大切です。
既存の設備は活かしてデザインを変える
浴槽や備え付けの棚/扉といった設備は、DIYでデザインを変えることもできます。既存の浴槽におしゃれなシートを貼る、タイルのうえにパネルを取り付けるのもいいアイデアです。設備の見た目から古さが感じられるものの、機能自体に問題はないので交換はしたくない場合に最適。手間や時間はかかりますが、設備を交換するよりも費用を大幅に抑えられるメリットがあります。
アパートリノベーションの注意点
ここからは、投資用アパートのリノベーションならではの注意点を解説します。投資用アパートは収益をあげて運営していくものなので、費用やリノベーションの効果をシビアに考えていく必要があります。長くアパートを経営していくうえでも重要な観点なので、しっかり確認しましょう。
リノベーションの目的を確認し費用対効果を具体的に考える
投資用アパートをリノベーションする際は、費用対効果を重視することがポイントです。リノベーションをしても費用の回収に時間がかかったり、回収できなかったりすると経営状況が悪くなり、本末転倒です。
家賃をあげることが目的なら、大規模なリノベーションをして建物の全体的な価値を高める。空室を埋めることが目的なら、建物の中でも現在空いている部屋のみをリノベーションするなど、できるだけ少ない費用で目標通りのリターンが見込めるよう、心がけましょう。
補修程度なら、大家自身のDIYで対応できる部分もあります。手間や時間はかかりますが、業者に頼むよりも費用がかからない点、使う材料も工夫次第で安く抑えられる点がメリットです。
費用の回収時期を試算して予算を決める
アパートのリフォーム費用は、一般的には家賃収入の0.5カ月〜3年分以内におさめるのが望ましいとされています。ただしリノベーション費用はこの期間では収まりません。何年くらいでかけた費用を回収できるのかしっかり計算して明確にし、経営体力も考慮したうえで予算を組みましょう。
リノベーションによって家賃収入が増えても、かかった費用を回収するまでは実質無収入です。ハイリターンを見込んで大胆に予算を組んでしまうと、費用を回収し終える前に経営が立ち行かなくなる可能性があります。リノベーションで増収するどころか、最終的に負債が残ったままになるリスクもあるので、無理のない範囲を心がけましょう。
入居者のニーズを調査して設備・デザインなどの工事内容を決める
リノベーションによる増収を目指すためには、入居者のニーズにあった設備・デザインを取り入れなければなりません。入居者層の好みに合わない間取り・デザインにしたり、ニーズのない設備を導入したりしても、入居率のアップにはつながりにくいです。入居者の年齢や家族構成から必要なリノベーションを予想したり、雑誌やリノベーション会社の施工事例から流行りの間取りやデザインをチェックしたりと、入念な下調べが重要です。
家賃の賃上げは慎重に
リノベーションによって建物全体の価値を上げると賃料アップも可能ですが、あまりに大幅な賃上げをすると、入居者が見つかりにくく、空室が増える可能性があります。リノベーションをしたのに入居率が低いと、費用の回収にも想定以上の時間がかかりますし、増収もかなわずデメリットばかりが残ってしまいます。周りの賃貸アパートの賃料や建物の築年数、立地などの要素も踏まえて、妥当な賃上げを行うことが重要です。
「一括借上げリノベーション」やリノベーション賃貸住宅といった方法はリスクも
賃貸アパートのリノベーションには、「一括借上げリノベーション」、「リノベーション賃貸住宅」があります。どちらもオーナー自身はリノベーション費用を負担しなくていいので一見お得ですが、リスクもあるので確認していきましょう。
一括借り上げリノベーションはサブリース契約を利用する方法です。賃貸アパートをサブリース会社が借上げて、オーナーに代わってリノベーションを含むアパートの運営・管理を行います。オーナーはリノベーション費用を負担しなくていい点、入居率に関係なく一定の賃料がサブリース会社から支払われる点が魅力ですが、次のリスクに要注意です。
- 費用:オーナーが支払うべき費用には何があるのかを確認する
- 免責期間:サブリース会社からオーナーへの賃料支払いが免除される期間があり、1〜3カ月が一般的
- 解約規約:規約によっては一方的にサブリース契約を打ち切られる可能性がある
- 条件変更:規約によっては賃料が減額される可能性がある
リノベーション賃貸住宅とは、入居者が各々でリノベーションできる賃貸住宅を指します。オーナー自身で費用を負担したり、リノベーションのための手続きをしたりしなくていい点や、入居者が長く住んでくれる可能性が高いところが魅力ですが、以下の点に注意が必要です。
- 入居者が退去する際に原状回復をどの程度課すかを決め、入居者の理解を得なければならない
- どこまでのリノベーションを許容するかを決めなければならない
- 前の入居者のリノベーションを残したままにしていると、次の入居者が見つかりにくい可能性がある
アパートリノベーションの工事期間と工程
投資用アパートのリノベーションでは、工事期間も家賃収入に影響してくるので、工程と合わせて確認しましょう。
工事期間の目安
リノベーションの規模にもよりますが、工事期間は3〜6カ月程度が目安です。この期間中は部屋を人に貸し出せないので家賃収入は0となりますし、工事終了後、すぐに入居者が見つかるとも限りません。工事中や入居者が見つかるまでの間にも、各種税金などランニングコストはかかるので、家賃収入0の期間が続いてもこうした費用を支払えるだけの蓄えをしておくことが必要です。
工程
リノベーションは、次の工程ですすめられます。
- リノベーション会社を選び、依頼
- リノベーション範囲の解体工事
- 新しい間取りでの木工事
- 新しい設備の運び込み
- 内装の仕上げ工事
- 新しい設備の設置
- 室内クリーニングと設備試運転
- 引き渡し
木工事とは、部屋の骨組みを作る木材の加工・組み立て・取り付け工事のことで、木工事と解体工事にもっとも時間がかかります。工事中は廃材の運び出しや材料の運び入れのため、車や人の出入りが多くなり、工事による音も大きいので、防音対策が必要です。とくにアパートに入居者がいる状態で一部の部屋のみリノベーションを行う場合は、他の入居者の理解を得るとともに、工事の時間帯に配慮しましょう。
リノベーションの依頼先の決め方
アパートのリノベーションをする場合は、依頼先の選定も重要です。会社によって得意とする工事や費用が異なるので、よく比較して決めましょう。ここからは、依頼先を決める際に確認するべきポイントをふたつ、解説します。
工務店、ハウスメーカー、総合建設会社の特徴を把握
リノベーションの依頼先には、工務店、ハウスメーカー、総合建築会社があります。
工務店
工務店は比較的狭いエリアで営業を行う、地域密着の色合いが強い業者です。いちから依頼主の相談/希望に沿って計画を検討するので、オーダーメイドのリノベーションが可能です。技術力は職人によるところが大きいので、「当たり外れ」の生じる可能性があります。
点検や修理などのアフターサービスは工務店によってさまざまで、問題が生じた場合にすぐに対応してもらえることもあれば、あまり手厚いアフターフォローは受けられないこともあります。
ハウスメーカー
ハウスメーカーは工務店よりも広いエリアで展開しています。リノベーション計画は複数あるプランから選択していく形がほとんどなので、工務店ほど厳密なオーダーメイドにはなりません。その代わりデザイン力や空室率改善のための提案力に強みがあります。リノベーションの流れがシステム化されていることから工務店よりも工期が短い傾向にあること、アフターサービスが充実していることが魅力です。
総合建築会社
総合建築会社はいわゆる「ゼネコン」で、工事日程の調整、品質管理、下請け業者への依頼を行います。工事自体は下請け業者に任せ、総合建築会社は工事全体のマネジメントを行う点が特徴です。公共事業やビル建築の実績が豊富ですが、依頼の際には住宅に関する工事の実績がどの程度あるのかを確認しましょう。
「アパートの」リノベーションの実績を確認
依頼先を決める際には、アパートのリノベーション実績があるかを確認しましょう。一口にリノベーション実績が豊富といっても、それが一戸建てなのか、アパートなのか、マンションなのかビルなのかによって持っているノウハウや強みが異なります。
アパートの工事実績が多い業者の方が、より効果的なリノベーションができる可能性が高まります。リノベーションによる空室対策を重視したい場合は、アパート経営に関する提案力がある依頼先を見つけることも大切です。無料で相談や費用の見積もりを受け付けている工務店・ハウスメーカー・リフォーム業者もあるので、複数の会社とコンタクトを取って比較してみましょう。