リアライズGT-Rが初タイトル獲得。レースはタイヤ無交換を敢行した埼玉トヨペットSupraが今季2勝目【第8戦富士GT300決勝】

 11月29日、富士スピードウェイで2020年シーズンの最終戦となるスーパーGT第8戦の決勝が行われた。GT300クラスは埼玉トヨペットGB GR Supra GTの吉田広樹/川合孝汰組が今シーズン2勝目。タイヤ無交換作戦を成功させ、2位以下を大きく引き離して勝利を手に入れた。そして2020年シーズンのGT300クラスチャンピオンはリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rの藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ組がチーム発足後初タイトルを獲得した。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により3カ月遅れで開幕した2020年シーズンもいよいよ最終戦を迎えた。例年、最終戦の舞台はツインリンクもてぎで開催されてきたが、今季は変則スケジュールを採用したため、富士が舞台になった。開幕戦以来のノーウエイトバトルとなるこの最終戦で2020年のチャンピオンが決定する。

 前日に行われた予選では現在ランキング4位につけている埼玉トヨペットGB GR Supra GTが初ポールポジションを獲得。貴重な1ポイントを追加してチャンピオン争いへ望みを繋いだ。フロントロウにはここ数戦、セーフティカーのタイミングに涙を飲んでいるSUBARU BRZ R&D SPORTが並ぶ。
 
 一方、ランキングトップのリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rは7番手、2位のLEON PYRAMID AMGは5番手とライバル勢の後塵を拝している。11月末という今までにない寒い時期での300kmレース、肝はタイヤのウォームアップと今年、勝負の行方をことごとく左右しているセーフティカーか。果たして2020年チャンピオンの称号はどのチームが手にするのか。
 
 なお、予選で10番手につけていたマッハ5G GTNET MC86 マッハ車検はウォームアップ走行中にミッショントラブルが発生してしまい、残念ながらスタートすることができず、スタート直前にリタイアというアナウンスが出された。

 定刻13時、セーフティカー先導のもと、フォーメーションラップが行われた。今回、気温/路面温度がこれまでのレースより低いこともあり、フォーメーションラップが2周に増やされていたが、想定以上に低い気温となったため、もう一周増え、3周のフォーメーションラップが行われた。前日の予選と異なり、雲が上空を覆うコンディションで迎えた決勝は気温8℃、路面温度13℃、湿度32%でスタートする。

 スタート直後、加速に勝った2番手スタートのSUBARU BRZ R&D SPORTの山内英輝が埼玉トヨペットGB GR Supra GTの川合孝汰を捉えて1コーナー出口でトップに躍り出る。その後方では、6番手、7番手につけたランキングトップの2台、リアライズ 日産自動車大学校 GT-RとLEON PYRAMID AMGがサイド・バイ・サイドのバトルを見せるが、ここはリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rに軍配が上がった。

 レース4周目、ダンロップコーナーの立ち上がりでModulo KENWOOD NSX GT3にT-DASH ランボルギーニ GT3が接触。5周目に入るとGT300の集団後方にGT500クラスのトップ勢が追いついてきた。

 そして7周目に入ると、SUBARU BRZ R&D SPORTと埼玉トヨペットGB GR Supra GTのトップ争いが急接近。1コーナーで埼玉トヨペットGB GR Supra GT がレイトブレーキングでインに飛び込むも、立ち上がりの加速でSUBARU BRZ R&D SPORTが勝り、トップを明け渡さない。

 2台の争いはその後2周にわたって続き、レース10周目、埼玉トヨペットGB GR Supra GTの川合は1コーナーで再び仕掛けると、立ち上がりのラインをしっかり押さえて、トップを奪い返してみせた。レース13周目、GT300クラスのトップ集団にGT500クラスが追いつき、混走によってバトルが激しさを増していく。

 GT300の周回数で17周目、GAINER TANAX GT-R対リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rの4番手争いが白熱。チャンピオンがかかっているリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rはなんとしても前に出ておきたい。ストレートでサイド・バイ・サイドになった2台だが、1コーナーの飛び込みではGAINER TANAX GT-Rが前を抑える。しかし、立ち上がりでリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rがパスして4番手浮上。このままで行けば2ポイントリードでチャンピオン確定だ。その後方、LEON PYRAMID AMGも2台の争いに追いつき、GAINER TANAX GT-Rの前に出る。

 レース総周回数の3分の1を超えると続々とマシンがピットへ入ってくる。上位陣で真っ先に入ったのはLEON PYRAMID AMGで、タイヤ無交換作戦を選択する。果たしてこれで順位はどう変動を見せるのか。

 24周目終わりにリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rがピットイン。こちらは4輪交換を選択してコースへ復帰する。ピットへ入った組の上位陣ではLEON PYRAMID AMG、ADVICS muta 86MC、リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rの並びとなる。まだピット作業を済ませていない埼玉トヨペットGB GR Supra GTとSUBARU BRZ R&D SPORTはどんな戦略を採るのか。

 先にピットへ入ったのは埼玉トヨペットGB GR Supra GT だ。29周終わりでピットインを済まし、開幕戦で勝利したとき同様、タイヤ無交換作戦を敢行する。序盤に稼いだマージンは大きく、余裕を持ってトップでコースに復帰。翌周にはSUBARU BRZ R&D SPORTもピットインしたが、こちらは4輪すべてを交換してコースへ出ていく。SUBARU BRZ R&D SPORTはリアライズ 日産自動車大学校 GT-R の後ろで復帰したものの、冷えたタイヤでのアウトラップではスピードが上げられず、GAINER TANAX GT-Rのオーバーテイクを許してしまう。

 レース中盤、気温10℃、路面温度35℃となかなかコンディションは上がっていかない。ほぼ全車がピット作業を終えた38周目、トップ10は埼玉トヨペットGB GR Supra GT、LEON PYRAMID AMG、ADVICS muta 86MC、リアライズ 日産自動車大学校 GT-R、PACIFIC NAC D’station Vantage GT3、GAINER TANAX GT-R、SUBARU BRZ R&D SPORT、ARTA NSX GT3、SYNTIUM LMcorsa RC F GT3、TANAX ITOCHU ENEX with IMPUL GT-Rという顔ぶれになる。

 この順位のまま行くと、タイヤ無交換作戦を作戦でポジションをアップさせたLEON PYRAMID AMGが逆転でチャンピオンの座につくことになる。一方のリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rは3番手にアップできれば、チャンピオン獲得ということになり、タイトル争いはこの2台の争いとなった。リアライズ 日産自動車大学校 GT-Rは12秒近くある3番手ADVICS muta 86MCとのギャップをつめなければいけない。

 GT300クラスの周回数で46周目終わり、タイトル争いの渦中にいたGAINER TANAX GT-Rはタイヤが厳しいのかピットへ再び入り、リヤタイヤを交換して再びコースへ。

 レース50周目、4番手のリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rが3番手のADVICS muta 86MCに追いつき、2台のギャップは1.1秒。チャンピオンを視界に捉え始めた51周目、最終セクターでADVICS muta 86MCのテールを捉えると一気にパスして3番手に浮上して見せた。その勢いは留まることなく、54周目にはタイトル争いで直接のライバルとなるLEON PYRAMID AMGも捉えて、1コーナーでオーバーテイクを果たして2位に浮上。

 GT300クラスの決勝レースはトップが61周で終了し、レースは埼玉トヨペットGB GR Supra GTが第1戦富士に続く今シーズン2勝目。2位に40秒以上の大差をつけて勝利を飾った。そして、2位にはリアライズ 日産自動車大学校 GT-Rが入り、2020年シーズンのチャンピオンを獲得。チーム発足後初、そしてふたりのドライバーにとってもキャリア初のタイトルを手にする劇的なシーズンとなった。

 以下、ADVICS muta 86MC、LEON PYRAMID AMG、PACIFIC NAC D’station Vantage GT3、TANAX ITOCHU ENEX with IMPUL GT-R、SUBARU BRZ R&D SPORT、ARTA NSX GT3、SYNTIUM LMcorsa RC F GT3、TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT(31号車)の顔ぶれがトップ10に揃っている。

 2020年シーズンのスーパーGTは例年と異なるスケジュール、厳しい状況下を乗り越えて無事シーズンを締めくくった。果たして2021年にはどんな戦いが待っているのだろうか。

2020年スーパーGT第8戦富士 スタート
埼玉トヨペットGB GR Supra GTとSUBARU BRZ R&D SPORT
2020年スーパーGT第8戦富士 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)
2020年スーパーGT第8戦富士 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰)

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