流鏑馬の伝統守る場に 鎌倉に馬場整備

射手が馬上から次々に的を射止めた流鏑馬。観客からは拍手が起きた=鎌倉市内

 流鏑馬(やぶさめ)の普及発展を進める公益社団法人「大日本弓馬会」(鎌倉市御成町)が今月、同市梶原に、稽古や披露に使う馬場を整備した。流鏑馬は源頼朝が鶴岡八幡宮で奉納した鎌倉とゆかりが深い人馬一体の妙技。29日にお披露目され、関係者は「鎌倉から伝統文化を発信する場に」と意気込む。

 流鏑馬の起源は6世紀とされ、一時は衰退したものの、源頼朝が1187年に同八幡宮で天下泰平を祈願する神事として復活させた。

 1939年設立の同会は流鏑馬など伝統文化の保存や発展に取り組み、同八幡宮や寒川神社、明治神宮などの祭礼で奉納。元米大統領のレーガン氏やオバマ氏ら外国要人にも披露してきた。

 そんな同会の悲願は、ゆかりの地・鎌倉に馬場を造ること。鎌倉時代から続く手法の実践には全長220メートルが必要だが、稽古を行う三浦市の乗馬クラブはこれに満たなかった。

 今回、鎌倉市の市役所移転先などとしている深沢地域整備事業用地のうち、市有地約1万平方メートル分を、区画整理事業が始まるまでの数年程度、利用できることが決定。全長220メートルの走路と観覧スペースを備えた馬場が今月15日に完成した。

 お披露目を行ったこの日は、各国大使や地元住民など約250人が集まる中、平和と健康を祈願して妙技を披露。射手12人が次々に直径20~55センチの的を射抜き、拍手に包まれた。

 同会の奥山幸猛副会長は「射手を育成し、子どもたちにも流鏑馬に興味を持ってもらい、鎌倉で伝統を守る場としたい」とし、馬場で流鏑馬の披露イベントなども開くという。

 同会は馬場の整備・維持費の一部の寄付をインターネット上で呼び掛けるクラウドファンディング(CF)にも取り組んでいる。来年1月18日まで、整備・維持費2200万円のうち1200万円を募る。問い合わせは、同会電話0467(24)3600。

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