このままでは老後破綻!生活費と養育費で赤字の55歳会社員に今から何ができる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、55歳、会社員の男性。離婚をして、ひとり暮らしに戻った相談者。生活費と養育費で貯金がどんどん減っているといいますが、老後破綻を避けるためにどんな対策をとればいいでしょうか? 家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

次男の大学入学を機に、妻と離婚しました。今までの家事負担が原因でしたが、特に慰謝料などは発生しなく、財産は二分しました。

生活費については互いに収入があり、離婚後も生活費の心配はなかったのですが、長男、次男は妻の元から学校に通うというので、それぞれが大学を卒業するまでの間、養育費として月に10万円払うことになりました。本来は成人まででも良いと思うのですが、それが親の務めと思ったのです。

突然の一人暮らしで毎月の支出のやりくりもわからず、かつ、人恋しさから酒の量が増え、外で友人と飲み歩くことも多くなり、気がつくと毎月赤字です。今までは元妻と手取り収入を合わせ、月に100満弱の収入があったのですが、その時の感覚が忘れられていないのでしょう。

長男の学費は元妻が負担するので、私は次男の学費を払うのですが、それでボーナスはほぼなくなります。毎月の赤字を補填するには貯金を崩さなくてはならないので、この歳で貯金を減らして良いものなのかと考えています。

老後資金は2,000万円必要だと言います。元妻と分けた貯金は1,400万円ありましたが、1,200万円ほどになってしまいました。退職金は1,000万円ほど出る予定ですが、今のままでは定年までに2,000万円を残しておくことが難しいのではないかと思っています。

支出を減らせば良いというのはわかるのですが、どこを減らして良いか、検討がつきません。アドバイスをいただけないでしょうか。

【相談者プロフィール】

・男性、55歳。会社員

・元妻(53歳会社員)、長男(大学3年生)、次男(大学2年生)

・毎月の手取り世帯収入:51万8,000円

・年間の手取りボーナス:約150万円

・貯金:1,400万円

・毎月の支出の目安:61万6,000円

【支出状況】

・住居費:14万5,000円(家賃)

・食費 :9万7,000円

・水道光熱費:1万8000円

・通信費:1万4,000円

・生命保険料: 2万7,000円

・日用品代:2万2,000円

・教育費:1万5,000円

・自動車関連費:2万3,000円

・被服費: 1万8,000円

・交際費:8万3,000円

・嗜好品:2万4000円(酒)

・養育費:10万円

・その他:3万円


FP:一人で暮らすようになってから、赤字になっているのですね。ご夫婦で暮らしていたときは、どの程度家計のことを把握されていたでしょうか。単純に支出が半分になるわけではないので、現状で何にいくら支払って暮らしているのかを細かく把握しなおすことから家計改善を始めると良いでしょう。

収入は半分になっても支出は半分にならない

今までは100万円近い収入があり、その中で自由にお金を使う暮らし方だったように見受けますが、それはご夫婦で暮らしていたからこそできたこと。今までは収入の中でやってこられたからと単純に支出を2等分した金額で暮らせるとは考えないでください。

今は50万円ほどの収入があっても10万円は養育費となりますから、残る40万円以内で暮らさなくてはいけないと思わなくてはいけません。家賃、食費などは個別にかかるので、今までの一家族分までとはいかなくても、その3分の2〜4分の3ほどの支出にはなってしまうのではないでしょうか。一人暮らしでは、支出の効率が悪くなってしまいがちなのです。

そういうことを踏まえて考えると、相談者さんの支出は「以前同様」が多すぎるのか、かなりメタボ支出になっていると言えます。ひとり暮らしで気を紛らわせる為の支出も多いのかもしれませんが、今一度冷静に支出状況を把握し、過剰になっている部分をカットしていきましょう。それだけでずいぶんと支出を抑えられるのではないかと思います。

将来準備する老後資金の計算方法

支出の見直しをし、削減したとしても、減ってしまった貯金が戻ることはありません。あと5年のうちに、減った分を上回る貯金ができると良いのですが、養育費や学費を負担している状況では難しいのではないかと思えます。

老後資金に不安があるのなら、今の支出額と、将来受け取れる年金額との差額を出してみて、80歳、90歳までにいくらの老後資金が必要なのかを計算してみましょう。生活費だけではなく、臨時支出も必要になる時がありますから、できれば生活費に500〜1,000万円ほど上乗せした金額を準備することを目標にします。

それが退職金と、いま手元にあるお金で足りるのなら問題ありませんが、現状の暮らしぶりからすると、かなり資金不足である結果になるだろうと思えます。ですから、生活費の圧縮を進めるとともに、定年後も再雇用などで働くことを継続できれば、資金不足に対応できる可能性が高くなります。

老後資金の不安は、「働く」ことで解消を

高齢化社会に対応するために、来年4月から定年年齢は70歳にすることが努力義務となりますし、より長く働ける社会に変わっていくと考えられます。厚生年金も、今までは65歳、70歳に年金額を確定させてきましたが、2022年から随時改訂となりますから、働いてかけてきた厚生年金額が、すぐに反映されるようになります。

給料は現役時の5〜8割と企業により差がありますが、収入がないよりは良いはずです。また、常勤が難しいのであれば、短時間で働く、アルバイトなどで働くということも選択肢に挙げられます。ご自身の老後資金とその不足額の状況に応じ、働くことを検討してください。

今からでも、老後資金を増やす策を取る

また、もう一つできることとして、老後資金を増やすことを検討してもよいと思います。今は現金で1200万円を保有していますが、今の金利から言うと増えることはありません。そうであれば、時間(運用期間)もあるのでインデックスファンドで積立投資をするなど、運用することを検討しても良いと思います。

と言うのも、現状60歳までしか賭け金を拠出できないiDeCo(個人型確定拠出年金)が、2022年5月から65歳までに引き上げられます。60歳で国民年金に40年加入済みの人はそれ以後iDeCoに拠出していくことはできないのですが、厚生年金に加入していればその40年という括りに関係なく、拠出を続けられるのです。受けられる税優遇は同様で、拠出額が全額所得控除、運用益が非課税、受け取り時の所得控除が受けられます。そして、運用可能期間は75歳まで延長されるので、節税しながら老後資金を貯めていけるのです。

また、引き出せない資金づくりでは心配だと言うのなら、つみたてNISAを利用したり、普通に課税口座で積み立てることも可能です。積極的にお金を増やすと考えずとも、インフレリスクによるお金の目減りを防ぐために始める気持ちで良いと思います。

職を離れてから気づくよりも、いま気がついたことはラッキーであったと思います。気がついた今からできうることに取り組み、不安を最小限にした状態で老後を迎えていただけたらと思います。

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