「電車でGO!!」のPS4用を発売前に体験

「鉄道なにコレ!?」第14回

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大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)

共同通信ワシントン支局次長

大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)

共同通信ワシントン支局次長

1973年東京都生まれ。97年に入社し、松山支局、本社経済部、ニューヨーク支局、経済部次長などを経て2020年12月から現職。運輸と旅行、国際経済の分野を長く取材。日本一の鉄道旅行を選ぶ賞「鉄旅オブザイヤー」の審査員を務めている。

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 ゲームセンターの臨場感を、自宅で手軽に―。スクウェア・エニックスは、子会社タイトーの電車運転の疑似体験ゲーム機「電車でGO!!」の家庭用ゲーム機用ソフト「電車でGO!!はしろう山手線」を12月3日に売り出す。1997年に登場した前シリーズ「電車でGO!」時代から一連のゲームに親しんできた筆者が、発売前に試遊させていただいた。 (共同通信=大塚 圭一郎)

「電車でGO!!はしろう山手線」で、渋谷駅に到着する場面

 【電車でGO!!】タイトーの電車の運転士を疑似体験できるシミュレーションゲーム。最初に登場したゲーム機は「電車でGO!」という名称で、1997年に稼働を開始(開発秘話などは鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」の拙稿「『電車でGO!』の原点は“我田引鉄”だった!」ご参照)。大ヒットして家庭用ゲーム機用のソフトは販売が100万本を超えるミリオンセラーとなり、ゲーム機とソフトの両方で派生作品が広がった。

 感嘆符を一つ増やしたゲーム機「電車でGO!!」は、「電車でGO!」の20周年を記念して2017年11月に登場。タイトーの関係者によると、感嘆符を一つ増やしたのは「電車でGO!」の知名度の高さを生かしながらも「かつての延長線上ではなく、新生のゲームになったことの新しい驚きを伝えるため」という。ゲーム機は電車の運転席を模した幅2・6メートル、奥行き約1・5メートルの箱型になっており、三つある大型液晶画面は正面が55インチ、両脇はそれぞれ44インチとなっている。

 ▽まるで本物の乗務員室

 ゲームソフト「電車でGO!!はしろう山手線」はソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のゲーム機「プレイステーション4(PS4)」向けと、任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」用が売り出される。うち12月3日に発売されるのはPS4向けで、希望小売価格は7800円(税抜き)。スイッチ用の発売日と希望小売価格はまだ公表されていない。

 ゲーム機を家庭用に展開したソフトと言っても、実はソフトに収録されている内容がゲーム機より先行している。「電車でGO!!」で遊べるのは原宿駅から東京駅の内回りだが、ソフトは山手線の内回りを1周できる。

 一方、ゲーム機は11月26日に品川―東京間が追加され、山手線の全30駅で最も新しい3月14日開業の高輪ゲートウェイ駅も登場した。ゲーム機では「登場する区間が今後順次延び、遊べるようになる」(関係者)ものの、山手線で2番目に新しい駅の1971年開業の西日暮里駅は現段階では“未開通”だ。

「電車でGO!!はしろう山手線」で、今年3月14日に開業した高輪ゲートウェイ駅に到着する場面

 すなわち、ソフトのほうは全線が開通済みなので「山手線の最新駅から2番目に新しい駅へ」という遊び方もできる。これは個人的な名字に由来する感慨だが、「電車でGO!!」が待望の大塚駅に乗り入れるのもうれしい限りだ。

 ▽初心者も遊びやすいように工夫

 ゲーム機をゲームソフトに展開するのに当たり、どのような苦労があったのか?ソフトの開発に携わったスクウェア・エニックスの尾崎義規ディレクターは「アーケード(ゲームセンター)で遊んでくれている従来のファンと、新たなユーザーの両方に親しんでもらえるようにするのに知恵を絞った」と打ち明ける。

 そこで生み出したのが、ゲーム機に慣れているプレーヤー向けのコントローラーの操作方法と、初心者でも親しみやすい操作方法を選べるようにする工夫だ。

 ゲーム機は現在走っている山手線車両「E235系」と同じように「ワンハンドルマスコン」と呼ばれるレバーを手前に引くと発進して速度が上がり、奥のほうへ押すとブレーキが掛かって減速する。手前に引くのは自動車のアクセルペダルを踏むようなもので、奥へ押すのはブレーキペダルを踏むような操作になる。

「電車でGO!!はしろう山手線」に登場するE235系

 ゲーム機と同じような操作方法を選んだ場合、コントローラーの左スティック(左側にある棒)を手前に引くと加速し、5段階の強さから選べる。一方、奥に押すと非常ブレーキを含めて9段階のブレーキをかけることができる。

 初心者向けは逆で、左スティックを奥に倒すと加速し、手前に引くとブレーキがかかる。加速、ブレーキそれぞれ3段階にとどめている。

 私はゲーム機に親しんできたため、ゲーム機と同じ操作方法で山手線の運転に挑んだ。しかし、出発すると制限速度をオーバーするミスを早くもしでかした。

 ゲーム機でワンハンドルマスコンを引いて加速中に制限速度に近づいた場合、ワンハンドルマスコンを押して加速も、ブレーキも作動しないオフの位置に戻せばいい。だが、コントローラーの場合は左スティックを1段ずつ動かさないと戻らない。このため、5段階まで加速している場合、左スティックを5回押さなければオフにならないのだ。

 「(コントローラー背面の左上にある)L1ボタンを押すと元に戻ります」と尾崎さんに助け船を出してもらった。

 ▽VR対応も

 山手線を全線遊べるのは、SIEの家庭用ゲーム機「プレイステーション2」向けが2004年5月に発売されたタイトーの「電車でGO!ファイナル」も同じだ。しかし、「電車でGO!!はしろう山手線」は駅のプラットホームから電車に乗り込む人の姿も、走行中の沿線風景も画面で精細に再現しており、臨場感に圧倒された。

 さらに、運転室に入り込んだような体験を味わえるのが、仮想現実(VR)に対応した「VRモード」だ。別売りのヘッドセット型の端末「プレイステーションVR」を頭にかぶると眼下にはスピードメーターなどの計器類が並んでおり、横を向くと客室の扉を開閉する装置もある。

「プレイステーションVR」を装着し、スクウェア・エニックスのゲームソフト「電車でGO!!はしろう山手線」を遊ぶ様子=11月17日、東京都新宿区(筆者撮影)

 VRモードを遊べるのは、山手線の原宿―品川間の内回りに限られる。ただ、走行中の設定は晴れの朝、昼、夕方から選べるため、朝日を浴びた「恵比寿ガーデンプレイス」という熾烈な販売競争を繰り広げるビールメーカー同士の“競演”や、夕日に染まった渋谷の街並みといった東京のさまざまな顔を満喫することができる。

 ▽国電時代の車両も

「電車でGO!!はしろう山手線」に登場する103系

 現在の山手線はE235系で運行されているが、ゲームでは1987年に分割民営化された旧日本国有鉄道が製造した黄緑色の鋼鉄製車両「103系」、ステンレスを採用した「205系」、今年1月に引退した「E231系」の運転も可能だ。

「電車でGO!!はしろう山手線」に登場するE231系

 すなわち新橋駅近くの貨物駅跡を再開発し、超高層ビルが林立する「汐留シオサイト」を旧型国電の103系が駆けたり、高輪ゲートウェイ駅に205系が停車したりといった車両と風景の“幻のマリアージュ”がゲームの世界で広がる。

「電車でGO!!はしろう山手線」に登場する205系

 ゲームのサブタイトルは「はしろう山手線」と名付けているが、ゲーム機「電車でGO!!」で人気の総武線市ケ谷―秋葉原間も収録している。さらにゲームを遊び進めると、山手線と並走している区間で埼京線、京浜東北線、上野東京ライン、特急「成田エクスプレス」もそれぞれの車両で運転できるようになるという。

 これらももちろん体験したかったが、残念ながら「運転終了」の時刻が来てしまった。本稿では飲食店などのガイド本「ミシュランガイド」のように、ソフトを格付けするのは控える。ただ。スクウェア・エニックスの本社を出た後、インターネット通信販売で「電車でGO!!はしろう山手線」の予約販売を探し、すぐに注文してしまった。この行動から、私の本作に対する評価を分かっていただけるだろう。

 ※「鉄道なにコレ!?」とは:鉄道と旅行が好きで、鉄道コラム「汐留鉄道倶楽部」の執筆者でもある筆者が、鉄道に関して「なにコレ!?」と驚いた体験や、意外に思われそうな話題をご紹介する連載。2019年8月に始まり、随時お届けしています。ぜひご愛読ください!