コロナ禍で生き残る日系レストラン「相談」が決め手

ジェトロロサンゼルス事務所が展開している「日本食レストラン等向け支援相談窓口」にはCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)で混乱するなか、日系レストラン等の経営者からの問い合わせが多く寄せられている。

一時は条件付きで飲食店の店内営業を再開していたカリフォルニア州ロサンゼルス郡では、7月1日に再び屋内飲食営業禁止となった。州による経済再開のためのブループリントでも依然として規制が最も厳しい「紫」のランクのままである。屋外飲食は可能になったものの、サンクスギビングやクリスマスといったホリデーシーズンを直前に控えた11月25日以降、追い討ちをかけるように新型コロナウィルスの感染者数はまたも急上昇傾向となり、屋外飲食を含めた対面飲食がまたも全面禁止となってしまった。

コロナ禍で営業がままならず、苦境に立つ飲食店は日系レストランも例外ではない。ジェトロロサンゼルス事務所はそんな各地日系レストランのために、5月にレストラン支援窓口を開設。スマホやパソコンを通じて利用できるこの相談窓口では、無料で経営者のニーズにあった相談を受けつけ、親身になった回答をしてくれると評判になっている。

相談内容はまさに多種多様だという。レストラン営業再開に向けた準備、デリバリーやピックアップ営業へのアドバイス、SNSやアプリ・飲食情報サイトなどのデジタルツールを活用したマーケティング、公的機関等の支援策の紹介、法務・労務に関する相談など、飲食業界の知見豊富な専門家がお店や企業に合う、今すぐにできる対策を提案してくれる。労務・法務関連ではアドバイスをしてくれる弁護士も紹介してくれる。

例えば、テイクアウト営業を始めたもののどのような宣伝をしてよいかわからず客足が伸びずに悩んでいたレストランは、相談窓口の専門家のアドバイスのもと、デジタルでのマーケティングを積極的に行った。初めはSNSアカウントの立ち上げ方もわからなかった相談者だったが、継続的で効果的な投稿をすることで、今までになかった層の客を取り入れることができ、新しい顧客開拓に成功した。

またコロナ禍に加え全米で5月から6月にかけて暴動やプロテスト活動が激しくなったことは記憶に新しいが、この折に店のドアガラスを割られてしまう被害に遭ったレストランでは、相談窓口で提案されたようにファンドレイジング・サイトへ現状を訴求すると、期待を上回る募金を得て、営業再開の見通しを立てることができたという。

現在は全てオンライン会議システムを使って相談を行っている

また各衛生局から発表されるレストラン向けのガイドラインに関しても、非常にわかりにくいうえに頻繁に内容が変更されてしまうと感じるレストラン経営者も多く、これも大きな悩み・不安のひとつだろう。万が一、ガイドラインに反していればペナルティーや場合によっては営業停止を命じられる恐れもある。寿司を握るのにもゴム手袋を着用する必要があるのだろか?生ものを屋外で調理することはガイドラインで禁止されていないだろか?といった細かな疑問についても、相談窓口事務局では各所に確認をしてガイドラインに沿った回答を提供してくれるのだ。

レストラン支援相談窓口はオンラインで申し込みができ、2021年3月まで無料で受け付けている。コロナウィルスに対するワクチン開発が進んでいるとの朗報もあるが、完全な終息の見込みが不透明ななか、この相談窓口を利用して新たな対策を検討し、ニューノーマルを乗り切るのも前向きで賢い選択肢のひとつかもしれない。

【ジェトロ・日本食レストラン等向け支援相談窓口】

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