住宅購入検討者が増加、「売れている新築マンション」の傾向とは?

マンション評論家のマンションマニアです。コロナ禍で住宅を探す人が建築費高騰の影響により新築マンションは採算が悪化しています。しかしながら住宅購入検討者の収入が上がっているかといえばそうではないでしょう。

そんな中どのような新築マンションが売れているのでしょうか。コロナ禍におけるマンション市場、マンション選びを合わせてお伝えいたします。


「高価格帯で好立地」か「現実的な価格帯で便利な郊外」

モデルルームの予約を取るのが困難なくらい人気の新築マンションがあります。

わかりやすいところでは「駅直結」です。具体的な物件名を出すとプラウドタワー東池袋ステーションアリーナやパークタワー勝どきです。東池袋は坪単価(坪あたりの価格)が500万円台前半、勝どきは坪単価400万円台前半といわゆる億ションになるわけですが平日でさえも満席となるくらい検討者で賑わっています。

駅直結ではないですが亀戸駅近くのプラウドタワー亀戸クロス、豊洲駅近くのブランズタワー豊洲も人気です。亀戸は坪単価360万円ほど、豊洲は坪単価400万円ほどと東池袋と勝どきよりは少しお安いですがそれでも容易に手が出せるような価格帯ではありません。

高価格帯でも便利な立地のマンションはより評価される時代になっています。共働き世帯が増え、時間に対する価値が高まってきています。そのような方からすれば高価格帯であったとしても便利な立地に住みたいという思いが強く、上記のようなわかりやすい好立地マンションが選ばれるわけです。

そして、そのような方は「失敗したくない」という思いを持たれていることも多いです。この失敗したくないというのは資産性の部分です。

駅直結もしくは駅近で大手ブランドの大規模マンションと資産性の高さに期待できることも評価されている理由の一つでしょう。

一方、現実的な価格帯でも売れている新築マンションがあります。

それは便利な郊外です。

今後のマンション市場は今まで以上に二極化していくと私は考えます。

この二極化は都心と近郊・郊外ということではなく同一エリア内での二極化です。

同じ沿線、行政区でもA駅は人気、一つ先のB駅は不人気などミクロの世界での二極化です。同じ駅でもAマンションは人気、Bマンションは不人気ということも今以上に数字として出てくることでしょう。

売れている新築マンションの具体的な物件名を出すとソライエグラン流山おおたかの森、幕張ベイパークスカイグランドタワーです。

どちらの物件にも共通することは物件周辺に商業施設、保育園や小学校などが整っておりミクロの世界でほとんどのことを済ますことができてしまうことです。それでいて都心まで電車で30分ほどと通勤もそれほど苦労がありません。

近郊・郊外に住むなら車を所有するのが当たり前という考えはマンション市場においては薄くなってきました。車なしでも満足な生活ができる街力でなければどのエリアでもマンションは売れない時代です。もちろんどこに住もうと車があれば便利ですが、なくても不便でないかは重要です。

上記2物件のマンション価格は3,000万円台、4,000万円台が主ですから平均的な収入でも手が届きます。マンション単体で見た際には同じ駅で買うなら大規模マンションのほうが「出口」も見えやすく、コストパフォーマンスにも優れることが多いです。大は小を兼ねるのがマンションと考えます。

最寄り駅でほとんどのことを済ますことができ、そのエリア内で目立つマンションはコロナ禍においても人気です。私は今回取り上げた物件のことを「おばけ物件」と呼んでいます。

なぜかというと新築マンション市場全体を見れば売れ行きが良いとは言えず、かつ明るい未来は見えないからです。その分、目立つ物件に人気が集中しているともいえます。

建築費が高騰しておりマンション価格が上がってしまう。でも検討者層の収入は上がらない。どうにか売れる価格に抑えるために部屋を狭くして設備仕様も抑える。それで売れるかと言えばそうではないでしょう。住宅購入検討者もしっかりと調べる時代です。ただ新しいことだけを売りにしても響かない時代が来ていると考えます。

それでも新築マンションはしばらく値下がる気配なし

新築マンションにおいても二極化は進んでいきますが、大手デベロッパーばかりが新築マンションの供給をしている以上は売れなければ供給物件数を絞るだけですから、リーマンショック時のようにアウトレットマンションとして投げ売られることは考えにくいでしょう。

体力ある売主ばかりですから竣工までに完売させることを目標とせず、中長期的にできるだけ高値で販売していく方針にすることも容易ですから2021年中に新築マンションが安く買えることに期待しないほうが良いでしょう。

もちろん2023年~2025年などもう少し長い目で見れば今より落ち着く可能性もありますが、少なくとも2021年~2022年に出てくる新築マンションは原価が確定しているわけで安く出てくる可能性は極めて低いのです。

郊外シフトはごく僅か

コロナ禍でテレワークが増え、郊外へ住まいを移すという方が増えているというニュースなども見受けられますがマンションにおいては微増ではないでしょうか。私はマンション購入者の相談を業務としていますが、都心派の方が急に不便な郊外へシフトしたという例は滅多にありません。

もちろんご相談者様のほぼ100%がマンションの相談であり、戸建ては専門外ですから不動産全体という話ではありませんがマンションにおいては微増程度と感じます。

テレワークが主となったとしてもまったくもって出社しないという方は少ないでしょうから、あまりに不便な郊外でマンションを買うという流れには今後もならないと私は考えます。

中古マンション市場は在庫が不足

コロナ禍において住宅購入を検討される方が増えていることはたしかです。ただ、その多くは「賃貸脱出組」です。テレワークなどが増え専有面積のゆとりや遮音性などを求めて住宅購入を検討するわけですが、すでに分譲マンションに住んでいる方はどうでしょうか。

このコロナ禍に特別な理由もなく引っ越しという大変な作業をするのを避けるのは当然ですし、そもそも住み替え先の対象となることが多い新築マンションが建築費高騰の影響で価格が高いのに狭い・スペックが低いとなれば転勤などどうしても引っ越さなければならない場合を除けば自宅を売却とはなりません。

ステップアップの住み替えが減っているのに賃貸脱出組が増えており、人気の中古マンションが値下がることはしばらくなさそうです。

中古マンション購入のコツ

中古マンションの在庫が不足しているとはいえ、まったくもって売り物がないわけではありません。しかしながらエリア内で人気のマンションが適正価格で出れば1つの部屋を数組で争うことになります。

ポータルサイトに掲載された週末には密にならないように時間を区切り、土日で計10組見学が入ることもあります。

ライバルに負けずに購入の権利を勝ち取るためには住宅ローンの事前審査を済ましておき、「買える人」であるエビデンスをもった状態で見学、室内状況など問題なければその場で担当営業に申し込み意思を告げましょう。持ち帰って家族会議をしている時間はありません。

しかしながら、相場より高い価格で売りに出している部屋は新着だとしても見学者は少なく、申し込みが入らず数ヵ月が過ぎることも多いのです。そうなれば痺れを切らして「価格改定」をおこないます。価格改定は売りたいサインです。そのサインを見逃さないことで良質な中古マンションを手にする可能性が高まります。新着で適正価格の部屋よりはライバルが少ないものです。

結局のところ狙うべき物件に変わりはない

駅力や沿線力があるところでのマンション購入を勧めているのは、コロナ禍の影響ではなく、以前から変わりません。マンションを買うなら便利な立地にすべきです。

どのような街を好むかは人それぞれですし、好きな街でマンションを買えば良いわけですが、住宅ローンで買う以上はある程度は出口も見ておくべきでしょう。もちろん使用価値を最優先にして良いのですがまったくもって資産価値を見なくて良いのは現金一括で買えるくらい資金にゆとりがある場合くらいでしょう。

郊外であろうと便利な立地にするべきなのです。郊外でマンションを買ったから値下がるというわけではありません。そして郊外でマンションを買ったから不便、では困るのです。

共働き世代が減らない限り利便性を求めるトレンドは変わらないでしょう。

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