半導体大手キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)の東京証券取引所への上場は、10月6日に予定通り実施すれば時価総額1兆5千億円超と今年最大の案件となるはずだった。だが直前に延期。上場はいつになるのか。株式の56%を持つ米投資ファンド、ベインキャピタルの杉本勇次日本代表が11月5日、共同通信のインタビューに応じた。(共同通信=新井勇輝ほか)
▽ファーフェイ制裁で不透明感
-なぜ、延期となったのですか。
なるべく早いタイミングで上場を目指してきた。延期の最大の要因はトランプ米大統領の華為技術(ファーウェイ)への制裁だ。ファーウェイは大口の取引先の1社であり、制裁で売り上げがごっそり消えてしまう。業績も不透明感が出てくる。無理をして上場を進めるよりも、先の見通しが示せるタイミングで上場する方が適切だ。
-制裁が緩まない限り、状況は変わらないのでしょうか。
フラッシュメモリーの需要は中長期的に伸びていく。ハードディスクから高性能のメモリーに代わっていく傾向は続き、データセンター向けも伸びる。ファーウェイへの制裁措置がなくなる、なくならないよりも、どういう業績になるか見通しを投資家に出せることが重要だ。
-それでは、上場はいつになりそうですか。
なるべく早いタイミングで、とは思っている。時間がかかるかもしれない。米国は、大統領選があり、新型コロナウイルスの影響もある。スマートフォン向けを含めて、景気に依存するところが半導体は大きい。経済が回復基調になってくるとそれに従って業績も伸びていく。どこが一番適切なタイミングなのか見極める。ただ、年内は厳しい。
▽キオクシアの行方
-上場後には、キオクシア株を売却することになりそうですか。
上場の時の状況次第にはなる。積極的に今後も投資を行っていくので、資金需要は強いビジネスだ。キオクシアにとって、早期に上場して資金調達の手段を多様化しておくのは重要と考えている。
-韓国半導体大手SKハイニックスが米インテルの半導体事業の買収を発表しました。さらに、キオクシアの買収に動くとみますか。契約上、SKは2028年までは15%超の議決権を持てないことになっています。
そういう取り決めがある。独占禁止法もある。おそらく難しい。インテルの買収許可が下りるかも注意深く見ている。資金調達の問題もある。キオクシア買収は相当な額になる。
キオクシアホールディングス スマートフォンやパソコンの記録媒体に使うフラッシュメモリーの専業メーカー「キオクシア」(旧東芝メモリ)を傘下に持つ持ち株会社。東芝メモリホールディングスが2019年10月1日に社名変更した。20年7月末時点の連結従業員は約1万3500人。20年3月期連結決算の売上高は9872億円、純損益は1667億円の赤字だった。 (共同通信=新井勇輝、松山成昭)