<南風>復帰の頃の大学受験

 大学受験シーズンまっただ中です。私は大学の入試担当でもありますが、今回は1972年5月の本土復帰の前後、私自身が経験した沖縄の大学受験事情について書きたいと思います。 復帰まで沖縄には国費・自費沖縄学生制度があり、沖縄内での選抜で、本土の大学に入学できました。復帰後も国費は医学を中心に、琉大に医学部ができて1981年に学生を受け入れるまで続きました。また復帰の年に開学した自治医大は、その翌年に沖縄からの学生に門戸を開きました。

 私の大学受験はそうした大きな制度変化のさなかでした。復帰の数か月前に国費を受験して東工大に配置されました。しかし、入学後、専攻について考えた末に中退を決め、復帰のすぐ後に沖縄に戻りました。その後わかったことは、国費制度で入学して中退したらもう受験資格はなくなるということでした。そのため、二年目は通常の受験しかなくなりました。専攻について、まだはっきりと決められなかったこともあり、入学後に学部選択が可能な東大を受験することとし、理科二類に合格しました。もう一校、その年から受験可能となった自治医大にも合格しましたが、東大への入学を選びました。

 沖縄に戻ってから受験までの数か月、限られた時間で私がしたことは、教科書を中心に、徹底的に内容の理解に努めたことです。膨大な過去問を分析して対策を考える時間はなく、一方で「本わかり」さえすれば問題も解けるだろうと考えてのことでした。その自分なりの勉強の仕方と東大の出題方針の相性が良かったことが合格につながったのだろうと思います。そのような「本わかり」を求める東大の出題方針は、いまも変わっていません。

 最後に沖縄の受験生の皆さん、希望が叶(かな)うよう、粘り強く取り組んでください。応援しています。

(南風原朝和、東京大学理事・副学長)

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