【F1第15戦無線レビュー(1)】炎上するマシンに動揺するルクレール「なんてこった。神様、お願いだ」

 2020年F1第15戦バーレーンGP決勝レースは、スタートから大クラッシュが発生。幸いにもロマン・グロージャン(ハース)は自力でコクピットを脱出し、最悪の事態は免れることになった。そのときの状況を無線とともに振り返る
────────────────────

 F1第15戦バーレーンGPは、今シーズン初の日没後に行われるトワイライトレース。スタート前、ガレージからダミーグリッドへ向かうレコノサンスラップで、ダッシュボードの光に反応していたのが、3番手からスタートするマックス・フェルスタッペン(レッドブル)だった。

フェルスタッペン:どうしてなのかわからないんだけど、ダッシュボードの左上が赤く光っていんだけど。
レッドブル・ホンダ:ちょっと待って……どう、直った?
フェルスタッペン:いや、まだ光っている。 黄色と赤い色が光っている
レッドブル・ホンダ:わかった。確認する

 午後5時10分にフォーメーションラップが始まり、その数分後にスタートが切られた第15戦バーレーンGPは、スタート直後にだれもが想像もしていなかった悲惨が事故が発生する。

 2コーナーでエステバン・オコン(ルノー)とピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)にサンドウィッチされたランド・ノリス(マクラーレン)はフロントにダメージを負って、たまらず無線を入れる。

ノリス:接触して、フロントウイングにダメージを負って、路面を引きずっている。チェックしてほしい。だれかわからないけど、信じられないような動きで接触してきた

 この接触で、直後にいたフェラーリ2台とランス・ストロール(レーシングポイント)が接触し、ストロールがコース外に弾き飛ばされる。ストロールと接触したセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)はコース内にとどまったが、3コーナーの立ち上がりでやや失速したため、その後方がさらに混乱を招いていく。

 失速したベッテルを左側からオーバーテイクしようとするカルロス・サインツJr.(マクラーレン)。その後方で行き場を失ったキミ・ライコネン(アルファロメオ)はコース左側のランオフエリアへ出て、サインツとベッテルとの追突を回避した。

 しかし、その一方で、ロマン・グロージャン(ハース)はコース右側へ進路を変更。だが、そこにはすでにコース右側を走行していたダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)がおり、グロージャンの右リアタイヤがクビアトの左フロントタイヤと接触し、グロージャンのマシンは飛ばされるような形でコース右側へコースアウト。ガードレールにマシン前方からクラッシュすると、炎に包まれる。

2020年F1第15戦バーレーンGPでロマン・グロージャン(ハース)が大クラッシュ

ルクレール:すごいクラッシュだ。*。とにかく、ひどいクラッシュだ。炎があがっている。だれがクラッシュした?
フェラーリ:グロージャンだ。それ以外はまだ何も情報は入ってきていない
ルクレール:なんてこった。神様、お願いだ
フェラーリ:赤旗が出たから、ピットレーンでクルマをとめてくれ
ルクレール:まだ情報は入っていないの?
フェラーリ:まだ情報は入ってきていない

 その後、グロージャンが自力でコクピットを脱出し、メディカルスタッフに救出された映像が入り、ようやくサーキットが動揺から解放され、落ち着きが戻った。ハースのギュンター・シュタイナー代表がテレビのインタビューに答える。

「彼(グロージャン)はまだ少し動揺しているようだが、大丈夫だ。 これから精密検査を受けることになるだろう。 今回、救出に尽力してくれたすべての人々に感謝したい。彼らは非常に迅速に作業にあたってくれた。最悪の状況だったにもかかわらず、この程度のダメージで済んだのは不幸中の幸いだ」

 その後、ピットレーンに戻ってきたメディカルカードライバーのアラン・ファン・デル・メルヴェと会ったシュタイナーは、直接ファン・デル・メルヴェに感謝の言葉を贈った。ファン・デル・メルヴェは救出の様子を次のように振り返った。

「あのようなクラッシュと炎を私はこれまで見たことがない。 ロマンは自分でコクピットから脱出してきた。あのような衝撃の後で、それはかなり驚くべきことだった。FIAが開発したすべてのシステム、ヘイロー、バリア、シートベルト、これらがすべてが正常に機能していたのだろう」

———————————-

無線レビュー(2)へ続く

© 株式会社三栄