ノリス、マーシャルが目の前を横切り驚愕「絶対に起きてはならないこと」とマクラーレンF1代表が問題視

 マクラーレンF1チーム代表アンドレアス・ザイドルは、2020年F1第15戦バーレーンGPでランド・ノリスの前をマーシャルが走って横切った件は、「絶対に起きてはならないこと」だとして、その危険性について警告した。

 決勝レース終盤、ノリスがターン10と11のエリアに差し掛かった時のことだった。そこではセルジオ・ペレスが出火したレーシングポイントのマシンを停車させたばかりだった。

 ノリスは視線の先に、突如コースを横切ってペレスの方へと向かうマーシャルの姿を発見し、無線でこの件を伝えた。

「マーシャルがトラックを横切っている」とノリスは驚きとともに叫んだ。「あんな勇気のある奴は見たことがない……」

 ザイドルは、マーシャルのこの行為は、マーシャル自身とノリスを危険に晒す可能性があったと考えている。過去にF1ではマーシャルの死亡事故が起きており、1977年南アフリカGPでマーシャルがコースを横切って走行中のマシンにはねられ、両者が死亡している。

「このようなコメントを無線でランドから聞くことになったのは、明らかに懸念すべきことだ」とザイドルは認めた。

「こうしたことは、絶対に起きてはならない。この件はFIAとともに非公開の場で分析することが重要だと思う」

「マイケル(・マシ/FIAレースディレクター)が、我々から情報提供を求めた上で対応するだろう」

「正しい結論が出ると確信している。我々はドライバーと、世界中にあるコースのマーシャル全員の安全を改善するために、ともに取り組みを続けていく」

2020年F1第15戦バーレーンGP ランド・ノリス(マクラーレン)

 言うまでもなく、ノリスはマーシャルの行動に驚いていた。夜間のレースであり、ペレスのエンジンから煙が出ていたため、視界が制限されているなかでの出来事だった。

「想像もしていなかったことだ」とノリスは語った。「彼はコースを横切る際、右も左も見なかった」

「ダブルイエローが出ていて十分に減速していたから、何かを危険にさらすようなことはまったくなかった」

「でも彼の見た目は目立つようなものではなかった。あの時、僕は空を見ていたし、彼は黒と紺色の服を着ていた。だから目立たなかったんだ。僕に見えたのは、消火器が揺れているところくらいだった。少しばかりクレイジーな瞬間だったね」

 この件についてレース後に質問されたマシは、マーシャルは衝動的に反応してコースを横切ったのだろうと語った。

「セルジオ・ペレスのマシンから新たな火の手が上がっていたことは明らかで、火を見た消火担当のマーシャルは、指示を受けることなく本能的に反応したのだ」とマシはウェブサイト『RaceFans』に語った。

「それより前に起きた状況を考えれば、優先事項は火を消すことだったと言えるだろう」

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