RCサクセションとチケットぴあ、難攻不落のクリスマス武道館公演! 1988年 12月25日 RCサクセションのライブ「TOUR 1988 LOVE ME LIVE」が日本武道館で開催された日

難攻不落のチケット予約、人生のなかでもっともかけた電話番号は?

03-237-9999―― ひょっとしたら、人生のなかでもっともかけた電話番号かもしれない。そして、ひょっとしなくても、もっともお話し中になる確率が高かった電話番号。そう、チケットぴあ、だ。東京23区の局番が4桁になり、03-5237-9999に変更されてからも、それは続いた。

大学入学を期に1986年に上京。田舎では見られないライブも東京なら見ることができる! しかし、それもチケットが入手できたら…… の話。かくして、マナブは電話線バトルの荒波へと突入していった。

マイナーなバンドは30分くらい頑張れば、なんとか手に入ることもあった。海外のアーティストなら、プロモーターに優先予約する方法があることを覚えていったので、これも何とかなる。

しかし、日本の大物となるとそうはいかない。この頃ライブ会場の規模がどんどん大きくなっていくザ・ストリート・スライダーズは結局、最初の武道館公演(確か1988年)までチケットが取れなかった。

もっとも厳しいバトルを強いられたのはRCサクセションだ。どの公演も電話がつながったときにはソールドアウト。とりわけ、恒例のクリスマス武道館公演は難攻不落だった。

チケットぴあ電話予約バトル “あるある”

ここで、あの頃の電話予約バトルの模様を思い出してみよう――
9時55分くらいから電話前に待機。「ひょっとしたら繋がったりして…」と思いつつ10時前にかけてみるが、“受付前ですよー” …… というアナウンス。そこで10時きっかりにつながるようトライするが、同じことを考えている人間は他にもいるので、当然お話中だ。その後は “ただいま電話が大変込み合っています。しばらく経ってからおかけなおしください” のアナウンスとの格闘。“しばらく経ってから” では間に合わないんだよ!!

格闘が始まってから30分ほどすると、10分に1回は、アナウンスの連続の中に、通常のお話し中の信号音が鳴るようになる。あー、もうすぐつながるかなぁ…… と思ったりもするが、そんなに甘くはない。

そのうち、リダイヤルを繰り返しているこちらも、“1分間に何度リダイヤルできるか?” という自分だけのゲームに興じてみたり、リダイヤルボタンを繰り返し押しながら、雑誌を読み始めたり。しかし、それらには弊害がある。もはや電話を切ってかけ直す機械的な作業に指先が慣れてしまい、つながったときでさえも反射的に電話を切ってしまうのだ。

“バトルには集中力が欠かせない” のである。そんなこんなで2時間以上が経過して午後になり、やっとつながったと思ったらソールドアウト。徒労に打ちひしがれる…… そんなパターンを何度か経験した。

ついに獲れた!RCサクセンションのクリスマス武道館公演

RCに話を戻そう。ある世代には、武道館といえばディランだったり、チープ・トリックだったり、爆風スランプだったり、のイメージが付いているが、我々の世代にはやはりRCだ。

まだ田舎にいた頃、初武道館公演のライブ音源をテープにダビングして聴き、「スゲー! コレは1度は体感しないと!!」と思い、思春期の悶々を潜り抜けてきたのだから。

しかし、やはりチケットは取れない。チケットぴあに電話はつながらない。RCサクセションのライブバンドとしての凄まじい実力は、さんざん語られてきたことなので、ここであれこれ説明する必要もないだろう。「スゲー!」は、この壮絶すぎるチケット争奪戦からも、十分にうかがい知れるというものだ。

1988年のクリスマスの武道館公演。いつものように電話をかけまくり、珍しく1時間ほどでつながった! ついに、ついにチケットが獲れた!! 席は2階の北東、ステージ横よりチョイ後方というかなり悪い席ではあったが、この際それはどうでもいい。

あの「COVERS」をリリースした1988年、鋭く尖っていた忌野清志郎

1988年は、大作『MARVY』をリリース、さらに問題作『COVERS』が発売中止→レコード会社を移籍してリリースするという、RCにとって激動の1年。発売中止にしたレコード会社や原発問題への怒りからか、この公演も「サマータイム・ブルース」「アイ・シャル・ビー・リリースト」「軽薄なジャーナリスト」「LONG TIME AGO」など攻撃的なメッセージソングが多かった。

ソフト化されている過去の武道館公演はロックンロールショーのエンタメ性がビンビンに伝わってくるが、この日の公演は趣が違った。エンタメと呼ぶのがはばかれるほど、鋭くとんがっていたのだ。実際、ラストナンバーは、この時点では、まだレコーディングされていない「Rock'n Roll Show はもう終わりだ」。この攻撃性は、今思えば、翌年の清志郎の覆面プロジェクト、ザ・タイマーズへの布石ととれなくもない。とにかく、進化するRCは、やはり「スゲー!」だったのだ。

チケット予約はネットで比較的、簡単にできてしまう現代、2時間35分も電話をかけ続けることはなくなった。徒労はできれば避けたいし、時間がもったいないとも思う年齢だから、有難いといえば有難い。しかし、「スゲー!」ものを追いかけた、あの熱意は忘たくないし、そのために(そのためだけではないが)今も見たいライブがあれば時間が許す限り通うようにしている。安心してコンサートを楽しめる日がすぐに戻ってきますように…… そんなことを思う、2020年のクリスマス・シーズンである。

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カタリベ: ソウママナブ

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