契約更改交渉とは一体なにを話すのか? 中日OBが語る交渉と査定の“中身”とは…

元中日・友永翔太氏【写真:小西亮】

2019年まで中日でプレーした元外野手の友永翔太氏が経験語る

2020年シーズンはオフに入り、各球団で来季の契約交渉が進んでいる。その中でも、中日は保留者が続き、選手会が抗議文を出す状況になった。球団側と選手側が一年に一度、膝を突き合わせる契約交渉。一体、どんなことを話しているのか――。

「まずは、球団代表から『1年どうだった?』と自分のシーズン総括を聞かれます」

そう話すのは、2015年から外野手として中日で5年間プレーした友永翔太氏。自身も2019年限りで戦力外通告を受けるまで、4度の契約交渉を経験してきた。1年目の推定年俸1200万円からほぼ毎年ダウン提示を受けていただけに「自分としては、数字的に不甲斐ないことを伝え、来季の目標を言う場でした」と振り返る。

では、契約交渉はどう進むのか? これはあくまでも友永氏の現役時代の中日の場合であり、球団によって多少なりとも違いがあることは理解していただきたい。まず、そのシーズンが始まる前に選手個々の「査定基準」をもらうという。「その段階で、今季自分がどういうものを求めれらているかが分かります。僕の場合は1軍に出れていなかったので、まずは100試合以上というのがひとつの目安でした」と語る。

その査定基準は安打や打率、盗塁など単なる成績だけでなく、進塁打や送りバントなど勝利への貢献度も細かく設定されている。各指標とも100%がベースで、そのシーズンで基準にどれだけ到達できるかが判断されるという。

そしてシーズン終了後、交渉の1週間ほど前に事前に今季の査定評価が3枚ほどの書類で渡されるという。中日の場合、2軍成績は加味されず「その結果を見た段階で、ある程度の金額はわかると思います」と友永氏。球団代表との交渉の場に臨み、具体的な金額提示を受ける。

コロナ禍の球団経営とAクラス入りのチーム「それぞれの思いは痛いほど…」

「査定の結果を見て『もっとやったはずなのに』とか『意外と評価されてるな』とか選手によって受け取り方はさまざまだと思います。そこで浮かんだ疑問を球団代表と話して理解する感じですかね」

今季の中日は、今季8勝を挙げた福谷浩司投手や最優秀中継ぎのタイトルを獲得した福敬登投手らが相次ぎ保留。さらに、選手会は球団側の説明が不十分などとして抗議文を提出した。エース大野雄大投手の沢村賞受賞をはじめ、嬉しいニュースが続いた中での不穏な状況に、OBの友永氏も心を痛めている。

新型コロナウイルス感染拡大によって打撃を受ける球団側と、8年ぶりAクラス入りを果たした選手側。「それぞれの思いは痛いほど分かるし、選手も球団も一緒に強くなっていきたい気持ちは一緒のはずなんです。でも、こういう報道が出ると応援するファンにとっても少し残念な気持ちになると思います」。その上で友永氏は、あくまで契約交渉は「人と人」だと強調する。

「選手にとって年俸は大きなモチベーション。でも、たとえ金額自体は上がらなかったとしても、言い方ひとつで気持ちも変わってくるはず。選手が来季に向けてどうモチベーションを高められるかが契約更改だと思います。お互い納得することが一番ですし、別に保留の1回は何の問題もないかなと」

思わぬ形で注目を集めることになった中日。昨季まで現役としてプレーしていたOBとしては、球団が一体となって魅力あるチームになっていくことだけを願っている。(小西亮 / Ryo Konishi)

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