【京都】舞鶴の東西対決!漁港と旧軍港、それぞれの魅力を堪能

東西で魅力の異なる舞鶴

京都府の北部にある港町、舞鶴市。西には江戸時代の面影を残す漁港と町並み、東には明治時代につくられた近代的な海軍の史跡と、東西で異なる雰囲気を感じることができます。それぞれの魅力を見ていきましょう!

先攻:古き時代の香りが漂う西舞鶴

舞鶴市の歴史は、西舞鶴から始まります。

戦国時代、この地を治めていた細川藤孝(ほそかわ・ふじたか)は田辺城を築きました。「舞鶴」という地名は、田辺城の別名「舞鶴城(ぶかくじょう)」に由来します。

徳川幕府の樹立を決定づけた決戦「関ヶ原の戦い」の直前、田辺城は約2カ月、反徳川軍に包囲されていました。

しかし、細川藤孝は多彩な策を展開し、15,000の兵を牽制。徳川軍の勝利を決定的なものにしました。田辺城は陥落せず、徳川家康は細川藤孝をおおいに賞賛したといいます。

天守台の石垣など一部を除いて、当時の城は残っていませんが、「田辺城資料館」でその面影をしのぶことができます。なお、復元された田辺城の大手門は、京都の有名な二条城の大手門を参考にして造られたのだとか。

老舗スイーツが楽しめる商店街

かつて田辺城の城下町だった地区は、現在は商店街になっています。ここには、江戸時代の風情を残す町屋や、白壁の倉庫などがあります。

商店街のひとつ、平野屋商店街は、鮮やかなアーチ状のゲートで飾られています。これは、かつてこの地をよく往来していたロシア人の影響だとか。

商店街にはスイーツの店が多くあります。そのひとつ、「夢菓房 みやした」は伝統的な和菓子店ですが、洋風のスイーツも販売しています。

写真にあるのは、葛粉(くずこ)で作った夏季限定フルーツアイスキャンディ(税込160円)。弾力があり溶けにくく、すばらしい味わいです。

隠れ家のようにひっそりたたずむイタリアンレストラン「アメイロ ビストロ アルル」。おいしいイタリア料理はもちろん、手作りスイーツも楽しめます。

さらに、持ち帰りできる商品も。特にマイヅルプリン(プレーン・税抜320円/抹茶・税抜350円)は大人気です!

東洋のベネチア!?漁師の町、吉原入江

西舞鶴の北側にある吉原入江。昔ながらの漁師町としての風情が漂い、今も多くの船が停泊しています。入り江に沿って多くの家が立ち並び、「伊根の舟屋」で知られる伊根町と似た雰囲気を感じるかもしれません。

吉原入江で一番人気の写真スポットは、船が並んで停泊している漁港の風景です。でも、このような狭い路地にも、町の人々の小さな物語を感じられるかもしれません。

有形文化財に登録された2つの銭湯

西舞鶴には、創業100年以上の銭湯「若の湯」と「日の出湯」があります。2つとも正式に国の登録有形文化財に登録されています

若の湯」は平野屋商店街にあり、創業は1903年。当時の流行の影響で、建物には西洋建築の趣が感じられます。

関西の銭湯には普通、壁絵は描かれていません。しかし、「若の湯」主人の若井さんは、日本に現在3人いる銭湯絵師のひとり、中島盛夫さんを招き、富士山の絵を2枚描いてもらいました。

ユニークなのは、男湯の壁絵は、富士山と天橋立との組み合わせとなっていること。現実ではありえないセッティングですが、「若の湯」ならではの1枚でしょう。

他方で、「日の出湯」は吉原入江の近くにあります。創業時期は正確には分かりませんが、ゆうに100年は超えているのだとか。

かつて住民が共同経営しており、2Fには休憩スペースや宴会場もあったそう。現在はご主人の高橋さん一家が経営権を取得し、元気に営業しています。

外観は伝統的な町家ですが、中にはタイル張りのこぢんまりとした浴槽があります。これは、典型的な関西の銭湯のつくり。

毎日入念に掃除されているため、タイルはピカピカに光っています。淡い緑やピンク、水色などの組み合わせが、とてもかわいいですね!

後攻:近代的な雰囲気が漂う旧軍港、東舞鶴

峠をひとつ越えると東舞鶴に出ます。

伝統的な日本の風情が漂う西舞鶴とは対照的に、東舞鶴には、近代技術でつくられた海軍の史跡や赤れんがの倉庫が立ち並びます。

海軍基地が変身!舞鶴赤れんがパーク

舞鶴には、かつて海軍の鎮守府が置かれていました。その関連の施設が今も多く残っています。

そのひとつ、赤れんが倉庫群が生まれ変わってできたのが「舞鶴赤れんがパーク」。現在、レストランやカフェ、おみやげ店などが入っています。

「舞鶴赤れんがパーク」は、テレビドラマ『坂の上の雲』や人気アニメ『鋼の錬金術師』の実写版をはじめ、これまでさまざまな映像作品の撮影の舞台となりました。ここに来たら、壮麗な赤れんが倉庫を背景に、ぜひ写真を撮ってくださいね!

現在は海上自衛隊が使用している「海上自衛隊北吸桟橋」は、土日祝日のみ入ることができます(※1)。平日も遊覧船に乗れば、大きな艦艇や、映画に登場するような大砲も目の当たりにできますよ。

赤れんがには、限定公開されている施設もあります。興味のある方はHPから事前予約しましょう。

海上自衛隊の金曜日!海自カレー

海軍では船上で長期間勤務するため、曜日の感覚が麻痺しやすくなります。そうした人々に時間を意識してもらうため、艦隊では毎週金曜日にカレーを食べるようになりました。この文化は、現在も海上自衛隊に受け継がれています。

当時のカレーの作り方は『海軍割烹術参考書』に記されていますが、現在は船ごとに独自のレシピがあり、味付けや材料が異なるのだとか。

「海軍カレー」は「舞鶴赤れんがパーク」内のレストランで食べることができます。ただ、当時のレシピを味わいたいなら、オススメは港近くにある「海軍料理 松栄館」。

もともと1904年に旅館として開業し、海軍関係者も頻繁に訪れたのだとか。建物は内観、外観ともに和洋折衷で、一歩足を踏み入れると、当時の酒宴の様子が思い浮かぶでしょう。

こちらが、当時のレシピを元につくられた「海軍カレイライス」(税込1,000円)。香辛料の調合、食材のカットの仕方など、すべて当時を忠実に再現しており、牛乳ともよくマッチします。

松栄館には『海軍割烹術参考書』を再現した別のメニューやスイーツなどもあるので、ぜひ試してみてください。

商店街にもおいしい海軍メニューが!

東舞鶴の商店街にも、『海軍割烹術参考書』に出てくる料理があります。海軍ロールと肉じゃがです。

海軍はカレーだけでなくデザートにもこだわっていました。こちらは、菓子の老舗「東月堂」が、当時のレシピに少し手を加え開発した「まいづる海軍ロール」(税込980円)。軽やかな味わいの中にほのかな甘みがあり、ペロっと食べることができます。

海外でもよく知られる日本料理「肉じゃが」も、実は海軍、それも舞鶴基地で考案されたと言われています。

オススメは「坂井精肉店」の「元祖肉じゃがコロッケ」(税込120円)! このほか「海軍カレーコロッケ」もありますよ(税込100円)。

1日じゃ足りない!?オススメ宿「宰嘉庵」

東西それぞれに特色がある舞鶴。日帰りではもったいない。東と西の観光に1日ずつ割き、1泊2日の旅行がちょうどよいでしょう。

ここでは西舞鶴のオススメ宿「宰嘉庵(さいかあん)」を紹介します。

もともとはたばこ屋だったという「宰嘉庵」。建物は130年以上の歴史を持ち、これまで大切に保存されてきました。

現在のご主人・長尾さんにより古民家ゲストハウスに生まれ変わった今も、至る所に古い時代の優美さが漂っています。さらに、部屋からは、美しい庭園を見ることもできます。

「宰嘉庵」には近年、別館が増設されました。日本式の古い建物ですが、内装は近代的な洋式。明るいスペースとキッチンを備えています。

どちらに宿泊する場合も、無料で銭湯に入れ、自転車も無料でレンタルできます。西舞鶴に到着したら、まずここで荷物を置いて、自転車でゆっくり周遊しましょう。

その他のオススメスポット

舞鶴の東西には多くの観光地があります。最後に、2つのスポットをピックアップして紹介します。

西舞鶴でのかまぼこ体験

海に面した港町・舞鶴では、さまざまな種類の新鮮な魚が獲れます。その味を凝縮したかまぼこは、最高のおみやげ。

西舞鶴では、かまぼこの手作り体験教室も開催されています。職人さんが、親切かつ丁寧に教えてくれますよ。焼きちくわと天ぷらもその場で作って食べられます。事前予約は公式HPから。

東舞鶴の舞鶴自然文化園

関西最大のあじさい園がある舞鶴自然文化園。春の椿がきれいです。高台にあるため、東舞鶴や港湾を見渡すこともできます。

舞鶴自然文化園では、椿オイルを製造しています。100%天然で、肌や髪などの手入れにぴったりですよ。

京都と異なる魅力に満ちた町

舞鶴は、一般的な京都のイメージとは異なる魅力に満ちた場所です。町に入れば、潮の匂いだけでなく、人の暖かみも感じられるでしょう。

「小さい町なんだから、1泊2日で十分」と思うかもしれませんが、実際に訪れたら、きっと去りがたい気持ちになりますよ。

© 株式会社MATCHA