現ユーザーが悔しがる?マツダの「商品改良」がスゴい理由

12月3日にマツダの主力SUVである「CX-5」を筆頭に商品改良が行われました。これまでもマツダのほぼ年次ごとに行われる改良はユーザーを中心に注目を集めるほど“濃厚”な内容。その理由と実際の改良による向上したコスパの高さについて解説します。


そもそも「商品改良」とは何か

今回の商品改良で最も注目すべきはCX-5と言えます

現在のマツダ車のラインナップの多くはほぼ1年前後に商品改良を行っています。業界の中ではそのサイクルから「年次改良」と言う場合もあります。概ねですが、古くは国産車の場合、約2年強で「マイナーチェンジ」、トータルで約4年強で「フルモデルチェンジ」が行われていました。

逆に「年次改良」は輸入車に多く見られ、その時に最良の仕様への改良を行うことで、見た目はそれほど派手ではありませんが、クルマ好きの人からはしっかりとした改良の度合いが評価されてきました。またこれを行うことでモデルチェンジサイクルも伸ばすことができるので開発費の回収や次期モデルへの投資もしやすくなります。

昨今ではこの考えは国産車も浸透しつつありますが、モデルによっては「ただ長く販売しているだけ」、厳しい言い方をするとほとんど手を加えずにそのまま販売しているケースもあります。

少々くどい話になりますが、そういうモデルでも整備上の極めて小改良は行われています。それでもユーザーはわからないことが多いのです。

その中でマツダ車はこの「商品(年次)改良」をしっかりと行ってきました。その理由はどこにあるのでしょうか。

常に最新の仕様にアップデートするという考え

過去にも「どうしてこれだけの内容をアップデート出来たのか?」といった趣旨の質問をマツダ車の開発責任者にしたことがあります。

その際の答えの多くが「前回は出来なかったけど、その時に最新の技術を搭載することを常に考えているから」というものでした。

実際、マツダ車の過去を振り返ると技術的な部分での「年次改良」は数多く行われています。

一例ですが、筆者的に強く記憶に残っているのはコンパクトクロスオーバーSUVである「CX-3」です。2015年2月に発売を開始したCX-3ですが、2016年10月にはハンドリング性能を高める「Gベクタリングコントロール」の採用やADAS(先進運転支援システム)のレベルアップなどを行いました。

そして2017年6月にはガソリンエンジン搭載車の追加。そして2018年5月には既存のクリーンディーゼル車を従来の1.5Lから1.8Lへの大変更。さらに待望のEPB(電動パーキングブレーキ)も採用されるなど、ここには書き切れないほど、言い換えれば「フルモデルチェンジ並み」の変更を行っています。

それでいて車両価格の上昇は極力抑える。実の所、これが消費者に取っては一番重要なポイントなのですが、結果としてそれまでの所有ユーザーが「悔しがる」ほどの魅力ある商品に進化しています。

【CX-5】マツダコネクトが大幅にレベルアップ

2016年12月に発売を開始した主力SUVであるCX-5が今回最大の商品改良と言えるモデルです。

注目点は数多くありますが、やはり目に付く部分ではセンタコンソール上部に設置されたディスプレイを含めた「コネクテッド」機能の大幅進化です。

マツダのコネクテッド技術は「マツダコネクト(通称:マツコネ)」と呼ばれるものです。発想自体は独創性に溢れたものでしたが、導入初期の頃は特に「カーナビ機能」の実力がかなり厳しい出来で、実際ユーザーからも不満の声が聞かれていました。

CX-5は発売された段階である程度の改良は行われていましたが、その後2018年2月にはマツコネ自体も改良されることで実用性能は向上しました。

しかし、マツダの次なる新世代モデルである「MAZDA3」「CX-30」「MX-30」のマツコネには数多くの新機能が搭載され、結果としてマツコネ同士でも実力差が発生してしまいました。

そこで今回の改良です。これまでセンターディスプレイの大きさは7インチからスタートして2019年12月に8インチに変更されましたが、今回は新たに2種類設定されました。

特に上位系グレードには何と10.25インチの大画面、その他のグレードも8.8インチにサイズアップされています。ちなみに8.8インチはMAZDA3などと同じ大きさです。また、8.8インチディスプレイはグレードにもよりますが、メーカーオプションで10.25インチに変更することが可能です。

さらに新世代モデル同様に車載通信機を標準設定しました。これにより万が一(事故など)の際の「緊急通報サービス」の利用や専用スマホアプリである「MyMazda(マイ・マツダ)」により車外にいながら車両のコンディションの確認、そして万が一ドアロックをし忘れても遠隔操作で施錠することができるようになりました。

この他にもデータ転送などをデジタル化することで動作レスポンスも向上しています。

走行性能も大幅に向上

これまでもマツダが用いてきた手法ではありますが、新しいCX-5はクリーンディーゼル車のエンジン性能が向上しています。

具体的には出力を10馬力アップさせ、実用域でのトルクを向上させることで高速道路などでの合流時や追い越し加速などでの走りを強化しました。そしてここがマツダらしい改良点なのですが、アクセルペダルの操作力を最適化することでクリーンディーゼルエンジンの強いトルクを精度良く、加減速コントロールできるように改善したとのことです。

【CX-8】上質さと利便性を向上

3列シートのSUVとして人気の高いCX-8も今回の年次改良の対象車種です。

シートバリエーションは3種類。写真のオーバーン(赤褐色)を新採用しました

ポイントとしてはCX-5同様に「マツダコネクト」の進化、センターディスプレイの大きさも10.25インチを中心に展開します。

ディーゼルエンジンの出力向上も含めた改良ポイントも同様で走行性能を高めています。

またリアバンパー下に足を出し入れするとリアゲートが電動で開く「ハンズフリー機能付きパワーリフトゲート」や採用が拡大している携帯電話などのQi(置くだけ充電)もセンターコンソール前部に設定しました。

エクステリアではフロントグリルの形状を変更し、さらに新色として「プラチナクォーツメタリック」を専用設定しています。

【MAZDA6】特別仕様車を中心に改良

MAZDA6の車両本体価格は289万3000円~448万2500円となります

ミドルクラスのセダン&ステーションワゴンである「MAZDA6」は今年4月に発表された「100周年特別記念車」に2.5L直列4気筒ターボエンジンを追加設定。またこの特別仕様車以外の全グレードに現在のマツダ車で人気の「ポリメタルグレーメタリック」を設定しました。

【特別仕様車】4車種に独自の世界観を持つモデルを設定

今回の商品改良に合わせて、特別仕様車として「Black Tone Edition(ブラックトーンエディション)」がMAZDA2/MAZDA6/CX-5/CX-8の4車種で設定されました。

年次改良で魅力が向上する中、年末年始の商戦期を狙った商品ですが、ドアミラーカバーとホイールをブラックに加色、車種にもよりますが、内装も専用の表皮やレッドステッチのアクセントを様々な部位に採用、CX-5の場合はTFTカラー液晶を使った7インチのマルチスピードメーターやLEDの室内照明なども専用装備されます。

専用装備は各モデルごとに異なりますが、ベース車に比べても価格アップは小幅。さらにベース車に設定のない仕様を設けることでユーザーの所有欲を満たします。

商戦期も含め、一気にモデルの改良を起こったマツダ車ですが、昨今はトヨタ・ハリアー/RAV4や輸入SUVなど販売を大きく伸ばしています。今回、特にCX-5やCX-8のアップグレードはライバル車と十分勝負ができる魅力的な内容と言えるでしょう。

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