諫干開門確定判決10年 混乱招き 解決の道筋見えず

開門問題を巡る賛否が分かれる中、開門確定判決から今月で10年を迎える諫早湾干拓の北部排水門=諫早市高来町

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門閉め切りと有明海の一部の漁業被害との因果関係があるとして、福岡高裁が国に「3年猶予後、5年間の排水門の常時開門」を命じた判決(2010年12月6日)が同21日に確定してから、今年で10年を迎える。その後、提起された訴訟では、国に開門を禁じる判決が昨年6月、最高裁で確定。国は「開門」と「開門差し止め」の相反する義務を負う一方、有明海沿岸の漁業者や農業者、住民の間に混乱と分断を招き、解決への道筋は見えない。
 開門による環境悪化を懸念した農業者らによる開門差し止め仮処分決定(13年11月)など、「開門を認めない」司法判断が続く。この間、国は17年4月、「開門によらない100億円の漁業振興基金による和解」方針を示したが、和解条件を巡る隔たりは大きい。
 開門を求める諫早湾近傍部の漁業者の訴訟が福岡高裁、長崎地裁で続くほか、08年4月から入植が始まった干拓農地の営農者の一部も18年2月、開門を求める訴訟を長崎地裁に提起。営農者側は、野鳥による食害や寒暖差の激しい営農環境を訴えている。
 今後の行方が注目されているのが、国が10年の開門確定判決の「無効化」を開門派漁業者に求めている請求異議訴訟の差し戻し審。昨年9月、最高裁が国勝訴の2審判決を破棄、福岡高裁に差し戻し、同高裁での審理が続いているが、開門派漁業者側が求める和解協議のめどは立っていない。
 一方、長年、膠着(こうちゃく)状態が続く問題に対して、環境法や社会学などの学識者が対立する利害関係の検証調査、地域住民の同事業に対する意識を探るアンケートを実施。第三者の立場から解決の糸口を模索する動きも出てきている。


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