<社説>コロナ拡大続く 医療従事者ケアに予算を

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、沖縄県内の医療供給体制が悪化している。県内の病床占有率は5日時点で73.3%で、8日連続70%を超えた。これは警戒レベル第4段階の「感染蔓延(まんえん)期」に相当する状況だ。コロナ患者以外が対象の非コロナ病床の利用状況も4日時点で92.1%と厳しい状況に陥っている。 コロナ感染者の急増で病床や医療従事者の数がひっ迫し、別の病気の患者に影響が及ぶ悪循環が起きている。医療崩壊を防ぐための対策が急務だ。

 医療関係者の危機感は強い。冬は例年、インフルエンザが増加するのに加え、心筋梗塞や脳卒中などの発症も増える。非コロナ病床は特に那覇や本島中南部で利用率が上がっており、県も「感染拡大が続くようであれば強い措置が必要になる」と警鐘を鳴らす。医療機関の負担を減らすには何よりも感染者を減少させなければならない。

 県によると、コロナ感染拡大の要因は職場、親族間のゴルフやボウリング大会後の打ち上げ、模合など飲み会で、複数の感染者が出て家族に広げている。医療崩壊を防ぐために一人一人が行動を制御する必要がある。

 問題は「Go To 事業」をどうするかだ。旅行代金を補助するGo To トラベルを巡っては「ブレーキとアクセルを同時に踏むようなもの」と批判されてきた。

 政府は「Go To トラベルが感染を広げたというエビデンス(証拠)はない」と言い続けてきたが、札幌市や大阪市を対象外にしたのに続き、東京都は高齢者や持病のある人に限って利用自粛を呼び掛ける措置を取った。

 しかし、効果については疑問符が残る。あくまで自粛で、高齢者以外に旅行を推奨していることには変わりがない。感染症対策の基本は人の接触を最小限にすることだ。

 飲食店支援の「Go To イート」でも政府は都道府県にプレミアム付き食事券の販売停止を要請したが、一方では事業の期間延長を検討している。ここでもアクセルとブレーキだ。事業者をはじめ国民の混乱を招きかねない。

 新規感染者が急増し、医療崩壊が迫っているとして独自の「赤信号」を出した大阪府では重症者が療養する臨時施設を稼働させる予定だが、看護師不足が深刻だという。

 さらに府がコロナに対応する医療従事者1200人に5~7月に実施した調査では13%が「中等度以上のうつ症状」とされた。人手が足りずに休みも取れず、対応が長期化する中で、現場は疲弊感が積もり積もっているという。

 大阪府の事例は人ごとではない。ましてや離島県沖縄では他府県との広域で人材を確保することは難しい。また、医療関係者に対する心ない仕打ちも報告されている。政府は医療崩壊を防ぐためにも医療従事者のケアを手厚くするために予算を使うべきだ。

© 株式会社琉球新報社