<金口木舌>どこでもドアと今帰仁

 時空を超える“トンネル”「ワームホール」の理論を応用しているとみられるドラえもんの「どこでもドア」。LINEリサーチの調査によると、ドラえもんの秘密道具の中の「一番ほしいもの」ランキングで堂々の1位を獲得した▼「どこでもドア」をイメージしたドアが出現している。渡嘉敷島とかしくマリンビレッジに設置されたドアは、地元の人たちが記念撮影するなど人気。今帰仁村運天のウッパマビーチにも「どこでもドア」があり、SNS映えのスポットとなっている

▼時空のトンネルを抜けると、世界のどこにでも瞬時に行ける。人類は移動時間を短くすることに挑戦してきた。どこでもドアが人気なのはうなずけるが、今帰仁村運天には別のトンネルがある

▼源為朝が「運を天に任せて」たどりついたとの伝説から名付けられた「運天港」。その周辺に1924年、「運天トンネル」が開通した

▼「なきじん研究 山原の津(港)と山原船」によると、運天トンネルが完成したのは海上交通から陸上交通の転換期。移動はより便利になった

▼時間に追われる日常では抜け穴を探してでも移動時間を短くしたいのが心情だが、たまにはゆっくり散策してみてもいい。為朝が一時暮らしたとされる「ティラガマ」や北山王族らが葬られているとされる「百按司墓」。トンネルの向こうには日常にない異空間が存在する。

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