虐待を受けた子どもらを保護 一時保護所の驚くべき現状と課題とは

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。11月19日(木)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、弁護士の三輪記子さんと慶応大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純さんが“一時保護所の現状と課題”について述べました。

◆混迷する一時保護所のルール作り

虐待などで親元にいられない子どもらが身を寄せる一時保護所の環境改善を目指し、関東地方の若手職員らが交流や勉強会を重ねています。保護所によってはトラブル回避のため、私語や私服の禁止、なかには「男女で目を合わせてはいけない」というルールもあるということです。

「一時保護」は児童福祉法33条で規定され、判断するのは基本的に児童相談所であるものの、その条件は「必要があるとき」と結構ざっくり。

保護人員、平均在所日数は年々増加傾向にあり、2015年度の総数は2万3,276件。保護理由の約半数は児童虐待です。

そんな一時保護所には多くの驚くべきルールがあるそうで、三輪さんはこのルール作りを疑問視。というのも、そこで重要なのは「何のために一時保護をするのか」。それは「子どもの安全を迅速に確保し、適切な保護を図るため」、「子どもの心身の状況、その置かれている環境、その他の状況を把握するため」と定められているものの、「現場ではその目的を忘れがち」と危惧。

さらには「ルールの必要性ばかり強調されている」と指摘し、まずは目的を検証し、その上で「子どもの最善の利益を最優先に」と訴えます。

これを改善するためには、「子どもは"管理の対象”ではなく、"人権享有主体”であることを忘れてはいけない」と明言し、併せて児童相談所の体制整備と職員の増員、さらには職員自体の力量の向上、処遇の改善を希求。総じて、「子どもの保護にお金の投入がまだまだ足りない。みんなで声を上げていかないと」と熱望していました。

◆ルールからカルチャーへ…最後の砦に必要なもの

一方、慶応大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純さんは、ルールをより意味のあるものにすべく「文化・カルチャーにしよう」と提言。既存のルールについては「絶対に正しいとも限らないし、いろいろなケースがある」と言い、「何かあればその都度考え、みんなで話し合うような価値観やムードに変えていかないと」と持論を展開。

なぜかと言えば、ルールは絶対・例外は許さないとしてしまうと「居場所を失い一時保護所にやってきて、そこからはみ出してしまった子どもはどうするのか」と疑問を呈し、「最後の砦となる場所は、ある意味例外を許せる運用が必要」と言います。

若新さん曰く、規則は解釈に幅がなく、運用が楽なものの柔軟性がなくなる一方、文化は解釈に幅があるから柔軟性があるものの運用が大変。そして、人手が足りず大変になると運用するにも複雑なものは困難でマニュアル通りになりがち。そうならないようにするためには「人材育成や人手を手厚くしていくしかない。そしてもう1つは、きっちり運用するという優等生の思想を変えていく必要がある」と主張。

テレビやネットも同じで、運用は大変だけど柔軟性がありましたが、結局規則化されています。そんな規則の価値観は「小学校の学級委員長の役割が生む」と若新さん。なぜなら学級委員長は優等生であるべき存在で、ルールを監督する役割だから。それを柔軟性のある文化を育てる役割に変えていくべきと訴えつつ、「そのためには教養も必要だし、時間もかかるし、根気強さがいる」とも話していました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

© TOKYO MX