異なる価値観が米国分断 日本の公選法、制約多く弊害も 米コロンビア大名誉教授ジェラルド・カーティス氏インタビュー

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オンライン取材に応じる米コロンビア大名誉教授のジェラルド・カーティス氏

 新型コロナウイルス感染拡大の中、繰り広げられた米大統領選はオバマ前政権で副大統領だった民主党のバイデン氏が勝利を決め、当選を確定する選挙人投票が14日に実施される。コロナ禍で郵便投票が増える一方で、日本では禁止されている戸別訪問が展開され、投票率は歴史的な高水準に達した。知日派で知られる米コロンビア大名誉教授のジェラルド・カーティス氏(80)=政治学=に、分断が際立った選挙戦の背景や日米の選挙制度の違いについてオンラインインタビューした。(聞き手高宗亮輔)

 -今回の大統領選をどう捉えますか。

 「多くの人が重要性を意識して参加した前例のない選挙だった。ただ、敗北宣言をしないトランプ氏に一定の支持者もいる。この選挙が民主主義の勝利なのか、(選挙の存在意義への)危機なのか、結論を出すのは難しい」

 -何が有権者の選択に影響しましたか。

 「メディアの影響はかなり大きい。ただ、主要メディアの記者は民主党支持が多く、この4年間、トランプ氏を失脚させようとばかりして、公平ではなかった。民主党支持の20~30代の記者の中にも、客観的な事実を伝えるのではなく、人によって解釈が分かれる“真実”を伝えるべきだとすら考えている傾向もある」

 -米国では分断が進んでいます。

 「コロナ対策をやらず、猛烈に批判されたトランプ氏を国民の半分が支持した。アメリカは価値観の問題で妥協するのが難しくなっている。例えば自由の価値観。今回、トランプ氏はコロナ感染者が増えている中西部で勝った。民主党は『危ないからマスクをした方が良い』と主張したが、人々は『マスクをするかどうかは個人の自由だ。国が押しつけるのはおかしい』と反発したからだ」

 -コロナ禍の中、どんな選挙運動が展開されましたか。

 「パンデミック(世界的大流行)の中で、やりにくさはあったようだが、それでも民主党の支持者は、ニューヨーク州から南部テキサス州、中西部オハイオ州に出向き、(住宅を訪ねて投票を求める)戸別訪問をした。はがきや電話での勧誘も実施され、郵便投票が広がり、投票率アップに貢献した」

 -日本の公選法は戸別訪問を禁止し、文書配布や演説会の開催にも制約があります。自由を重視する米国とは対照的です。

 「日本の候補者は戸別訪問を隠れてやっているから、認めた方がいい。国民の政治意識が低すぎて、戸別訪問で票が大きく動くと国は考えているのではないか。管理しようとする官僚的な発想が根底にある」

 -日本では国政・地方選挙で投票率が大きく下落するケースが目立ちます。選挙運動に多くの制約が課される弊害ではないですか。

 「選挙運動を制約すると、知名度が高い現職が有利になる。現職は(企業や政党から)政治資金も集められる。新人の立候補が難しくなり、選挙への関心も高まらない。他国に比べても、日本の選挙運動は非常に制約が厳しい」

 -法改正などで選挙運動の規定を変えられるのは現職議員です。

 「だから変わらない。政治家は自分の当選が危うくなるばかな改革はしない。国民が怒って『このやり方じゃだめだ』と強く求めない限り、選挙運動の自由化は望めない。国民は自由な選挙をもっと求めるべきだ」

◇メモ
 今回のインタビューは、地方紙や地方テレビ局の記者に米大統領選取材を支援するスマートニュース社(東京)の「フェローシッププログラム」の一環。熊本大法学部の伊藤洋典教授(政治学)の協力で、11月28日にオンラインで実施した。

Gerald・Curtis(ジェラルド・カーティス)
 1940年ニューヨーク生まれ。64年、日本語を学ぶため米コロンビア大大学院から日本に留学。67年衆院選で初当選した大分2区の自民党候補の選挙運動に密着し、日本型選挙と政治の特質を分析した「代議士の誕生」などの著書がある。