3年半・たった1人で長編アニメ「Away」を作ったラトビア人監督 音楽まで担当 「大きなチャンスだと思った」

ラトビア人新進クリエイターであるギンツ・ジルバロディスが、3年半をかけてたった1人で作り上げたアニメーション映画「Away」の公開を前に、ジルバロディス監督がラトビアからリモートで参加するトークイベントが、6日に都内で行われた。

1人で作ろうと思ったきっかけを聞かれたジルバロディス監督は、「短編から作り始めて、いろんなスタイルを試しました。そこから制作は小さな作品から大きな作品へ、自然な形で進んできたと思います。より大きな形でやりたいと思った時に、どうやって始めるべきか経験もなく、準備も整ってなかったので、自分1人でやろうと思ったんです。実際、いろいろと試しながら進められて、同時に勉強もできたのでよかったです」と語った。

子供の頃から触れてきたものとして、「インディペンデントなゲームや映画も好きで、実写も撮っていました」と明かし、「上田文人さんの『ワンダと巨像』も好きですし、アルフォンソ・キュアロン監督も長回しの特徴があって好きです。あとは、スティーブン・スピルバーグ監督の『激突!』、バスター・キートンの『キートンの大列車追跡』など、1つのモノへ進んでいく、シンプルなストーリーに惹かれます」と影響受けたゲームや映画を挙げた。さらに、「その他にも、ジブリや黒澤明監督にもとても影響を受けています」と日本の作品についても触れた。

音楽も含めて1人で作り上げたことについては、「大きなチャンスだと思いました。学びながら作れるのは、後々の人生であまりないかもしれないとも思ったんです。自分の思うままに作ることができました。そもそも他の人に指示できるほどに自分に経験がなかったというのもあります。それに、逆にいろんな作業工程が発生して、自分も飽きることなく、切り替えができたのでよかったです」と振り返った。

物語の着想については、「できるだけアニメーションがやりやすい方向で考えていました。最初から何でもできる可能性があると困りますが、逆に制限があることでやりやすかったです」と答え、制約をポジティブに捉える制作への姿勢を見せた。また、「1人で制作する利点は、いろんな変更を加えても許されることです。途中の編集の段階でもいろいろ気付くことができ、新しい発見が都度ありました」と、あらためて1人制作の利点を語った。

監督が影響を受けた日本人として挙げている村上春樹については、「村上さんの描く雰囲気が興味深いです。変わったネコなど登場しますが、私の作品にも不思議なネコが登場します。変わった存在や彼の作る雰囲気。何も起きていないようなのに、興味を惹かれてしまうんです」と魅力を語った。

最後に、日本へ来られないことを残念に思う気持ちを語り、「『Away』は家でなくスクリーンで観てほしい作品なので、日本でも大きなスクリーンで観ていただける機会ができ、とても嬉しいです。コロナが落ち着いたら、また日本に行きたいと思っています。この作品は“人との繋がり”を描いた作品なので、皆さんもこの作品を通して人と繋がっていただけたら嬉しいです」とメッセージを送った。

Away
12月11日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給:キングレコード
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