『Away』デザインに優れ、創意工夫に満ちたアニメ

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 アニメーションの映画祭では世界最高峰とされるフランスのアヌシー国際映画祭で、2019年に新設されたコントルシャン賞(実験性・革新性のある長編が対象)の初代グランプリを受賞したほか、世界各国の映画祭で9冠に輝く。驚くべきは、ラトビアの新進監督がたった一人で3年半かけて完成させたこと。しかも、手作り感のある素朴な作風ではないのだ。

 飛行機事故から唯一生き延びた少年が、森で見つけた地図を頼りにオートバイで島を駆け抜ける話だ。ほかに人間は出てこないため、セリフは一切ない。そのことが本作の魅力や評価につながっているのは間違いない。アニメーションを志す者なら当然といえるが、言葉に頼らず、映像(と音)だけで何もかも表現する創意工夫に満ちているから。さらには、アニメならではの動物たちの活躍も大きい(もちろん擬人化はされていない)。

 それでも、個人的に最も惹かれたのは、デザインのセンス。例えば、少年を追い掛け続ける黒い巨人(少年の強迫観念が生んだ幻?)は、半分だけスケルトンでカッコイイ。上部にだけ葉を蓄えた木が林立する森、鳥の群れを映し込んだ湖面はパノラマのよう…一つ一つの絵面が美しく、一見シンプルだけど余白をうまく活用した、素朴とは真逆のポップで都会的な世界観が構築されているのだ。アニメファンだけでなく、現代アートとして一般の層にも響きそう。★★★★☆(外山真也)

監督・制作・編集・音楽:ギンツ・ジルバロディス

12月11日(金)から全国順次公開

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