パソコンから「ピー、ピー」 件数増える特殊詐欺被害を追う

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ウイルス表示が出たパソコンを開き、被害を振り返る男性=島根県飯南町内

 11月下旬、島根県飯南町内に住む無職男性(69)は趣味のカメラについて調べようとパソコンを起動し、検索サイトを開いた。

 「ピー、ピー」

 何も操作していないのに甲高い警告音が部屋中に響き「ウイルスに感染しています」と画面に表示された。画面を閉じようと「×」が表示された部分をクリックするが、消えない。それならばと、パソコンの電源を落とし、再起動した。画面はそのままで「ピーピー」と音が鳴り続けた。

 画面には「050」から始まる電話番号に連絡するよう表示されている。怪しいのは分かってはいたが「消えればラッキーだ」と思い、自宅の固定電話から指定の番号にかけてみた。

 電話に出たのは日本語が堪能な「リー」と名乗る外国人風の女だった。向こうからパソコンを遠隔操作していると主張し、女性から「ウイルスの数が増えている。すぐにパソコンが使えなくなる」と警告された。

 続く説明は専門用語ばかり。理解が追いつかないまま、変な数字の羅列を読まされたり、入力させられたりした。最後に、パソコンの保証サービスについて話を振られ、半永久的に保証が受けられる「ZUTTO(ずっと)」という7万5千円のサービスを契約することになった。

 口座振替を希望したが拒否された。リーは「コンビニで電子マネーを購入するように」と指示した。

 男性は、電子マネーを購入するのは人生で初めてだった。そこでコンビニエンスストアで店員に事情を説明すると、「その話はおかしい」と感づいた店員が警察に通報し、難を逃れた。

 ■電子マネーを要求

 島根県内では2015年に約3億円あった特殊詐欺被害額が19年は1億円を下回り、今年は10月末現在で3126万円、前年同期比で4721万円減となっている。一方、被害件数は46件と前年比20件増で、8割が電子マネーを要求する架空請求詐欺だった。

 男性は「いかにも重大な事案だとプレッシャーを与えてきた」とリーの手玉に取られた自身を悔しがった。「050」の番号、外国人風の女、不審なサービス名-。冷静になって一つずつ考えれば「詐欺」と気付くことはできたと考える。その上で「焦らず、疑いの気持ちを持つことが大切だ」と教訓を語る。「パソコンに異常が出たからと警察に相談するわけにもいかない。通報のタイミングが難しい」と、パソコンに不慣れな高齢者に注意を促す。

 島根県警安全まちづくり推進室の山本達也室長は「料金について説明され、金銭を要求されたタイミングが詐欺の証となる。迷わず通報してほしい」と、遠慮なく通報することが予防策になると強調した。

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 遠方の親族を装い、振り込みを求める「オレオレ詐欺」から時代とともに手口が変わるが、特殊詐欺の被害は一向になくならない。近年はパソコンやスマートフォンにウイルス感染を装う仕掛けを仕込み、コンビニエンスストアで電子マネーを買うよう誘導する小口特殊詐欺の被害が多発している。「まさが自分が…」と証言する被害者、水際で電子マネーの収奪を防いだコンビニ店員といった現場を取材し、詐欺被害をなくす手だてを考察する。