国内銀行108行『2020年9月中間期単独決算 預貸率』調査

 2020年9月中間期の国内108銀行の預貸率は64.1%(前年同期66.0%)で、前年同期を1.9ポイント下回り、調査を開始した2008年3月期以降では最低となった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う積極的な資金繰り支援で、貸出金は570兆3,878億円(前年同期比5.6%増)と伸びた。
 一方で、預金は889兆1,367億円(同8.7%増)と貸出金以上に伸ばし、預貸率を低下させた。
 預金と貸出金の差を示す預貸ギャップは318兆7,489億円で、前年同期(277兆7,877億円)から40兆9,612億円(14.7%増)拡大し、初めて300兆円台に乗せた。
 業態別の預貸率は、大手行56.1%(前年同期58.3%)、地方銀行75.2%(同76.5%)、第二地銀75.7%(同76.0%)で、全業態で前年同期を下回った。大手行は貸出金が前年同期比5.7%増(274兆6,577億円→290兆4,455億円)に対し、預金は同9.9%増(470兆8,653億円→517兆5,864億円)と預金の伸びが大きく、預貸率の低下が地方銀行や第二地銀に比べ大きかった。

  • ※預貸率は、銀行預金の運用状況を示す経営指標の一つで、預金残高に対する貸出残高の比率。
    本調査は、国内銀行108行を対象に2020年9月中間期の単独決算ベースの預貸率を調査した。預貸率(%)は、「貸出金÷預金×100」で算出。
    「貸出金」は貸借対照表の資産の部から、「預金」と「譲渡性預金」は貸借対照表の負債の部から抽出した。
    銀行業態は、1.埼玉りそなを含む大手行7行、2.地方銀行は全国地銀協加盟行、3.第二地銀は第二地銀協加盟行。

預貸率は過去最低の64.1%

 2020年9月中間期の国内108銀行の預貸率は64.1%(前年同期66.0%)と、2年連続で低下した。これは2018年3月期の65.2%を下回り、過去最低水準を記録した。
 預貸率は、2019年9月中間期に不動産融資などが低迷し、貸出金の伸び率は預金を下回った。また、2020年同期は新型コロナ感染拡大による積極的な資金繰り支援策もあって、貸出金は前年同期比5.6%増(前年同期1.5%増)と大きく伸びた。だが、その一方で、給付金や助成金に加え、多額の貸出金が一時的に預金に歩留まりし、預金が前年同期比8.7%増(同2.4%増)と大きく伸びて、預貸率を押し下げた。
 108行のうち、預貸率が前年同期を上回ったのは36行(構成比33.3%、前年同期69行)と、3割にとどまった。一方、低下は72行(前年同期39行)で、大手行が7行のうち4行、地方銀行が62行のうち42行、第二地銀が39行のうち26行だった。
 預貸率が低下した72行のうち、貸出金が増加したのは68行(構成比94.4%)だったが、預金は全72行で増加し、預貸率の減少につながった。

預貸率1

業態別の預貸率 全業態で前年同期を下回る

 業態別の預貸率は、大手銀行が56.1%(前年同期58.3%、前年同期比2.2ポイント低下)で、調査を開始した2008年3月期以降で最低を記録。このほか、地方銀行が75.2%(同76.5%、同1.3ポイント低下)、第二地銀が75.7%(同76.0%、同0.3ポイント低下)と、全業態で前年同期を下回った。
 銀行別で、預貸率が最も低下したのは、あおぞら銀行の9.7ポイント低下(89.7→80.0%)。預金(3兆1,790億円→3兆5,432億円)の増加に対し、貸出金(2兆8,544億円→2兆8,347億円)が減少し、預貸率が低下した。以下、スルガ銀行8.6ポイント低下(84.4→75.8%)、島根銀行8.0ポイント低下(80.5→72.5%)、山形銀行5.3ポイント低下(72.9→67.6%)、第四銀行・北越銀行5.1ポイント低下(67.7→62.6%)。
 上昇率の最大は、愛知銀行の10.4ポイント上昇(65.2→75.6%)だった。預金(前年同期比11.0%増)に対し、貸出金(同28.6%増)の伸びが大きく、預貸率が上昇した。

預貸率2

地区別 最高は九州の83.6%

 銀行の本店所在地別の預貸率は、10地区のうち、中部、近畿を除く8地区で低下した。。
 最高は九州の83.6%(前年同期84.0%)。次いで、中部77.2%(同77.2%)、中国76.1%(同77.9%)、北海道73.74%(同75.6%)、近畿73.72%(同73.3%)の順。。
 最低は東京の55.7%(同58.1%)。。
 低下率は、北陸の2.5ポイント低下が最大。次いで、東京2.4ポイント低下、関東2.3ポイント低下と続く。。
 全10地区で貸出金と預金は前年同期を上回った。ただ、伸び率は中部と近畿を除く8地区で、貸出金に比べ預金の伸びが大きく、預貸率の低下につながっている。

 2020年9月中間期の預貸率は、2年連続で前年同期を下回った。預貸率の中央値は74.5%(前年同期比1.1ポイント低下)で、2013年9月中間期以来、7年ぶりに低下した。
 新型コロナウイルス感染拡大で、国や自治体、金融機関による積極的な資金繰り支援策で貸出を伸ばしたが、それ以上に助成金などが回った預金の伸びが大きく、預貸ギャップは初めて300兆円台に乗せた。資金繰りに苦慮する中小企業も多く、金融機関が預金をどう運用していくか、今後の対応から目を離せない。

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