【紙面診断 宮日を読んで】SDGs後押し期待 県産業振興機構常務理事・冨山 幸子

 世界が注目した米大統領選。本紙でも連日大きく紙面を割き、丁寧に報道された。バイデン氏が勝利を確実とし(10日)、米国の国際協調路線への回帰、中でも温暖化対策の枠組み「パリ協定」への復帰が大きな関心をもって伝えられた。

 折しも、菅首相が2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにすると宣言。国の第3次補正予算案の編成でも新型コロナウイルス感染症対策やデジタル改革と並び、温室効果ガス削減対策への万全の措置を指示した(11日)。首相の本気度がうかがえる。

 この日米の変化を引き金に脱炭素に向け潮目が変わり、世界が大きく動き出したように思える。これらを歓迎する一連の報道には共感を覚えた。より強力なメッセージがあるとなお良かった。本紙には、社会がどのように脱炭素への変革を進めるのか、しっかりフォローしてもらいたい。

 コロナ禍で、社会や企業、個人がどうあるべきか問い直されている。そんな中、SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まってきた。気候変動対策など、持続可能な世界を実現するための17の目標で構成。地球上の「誰一人として取り残さない」として国連が掲げたものだ。

 豊かな自然環境を守り、多様性、調和、寛容に優れた本県は、SDGs先進県として高いポテンシャルを有しているのではないか。その思いを本紙が具現化してくれた。創刊80周年を記念し「宮日SDGs宣言」がなされたのである(25日)。豊かで安心な未来を次代に引き継ぎ、地域に貢献すると誓っている。

 16日以降、SDGsの意義や先駆的な取り組みなど、詳細に分かりやすく、時には厳しく、深掘りしながら報道された。大いに敬意を表したい。心から拍手を送りたい。本県でのSDGsに向けた取り組みが加速するよう、読者の共感と行動につながる継続的な報道を期待してやまない。

 「ウィズコロナ」が日常化している。オンラインの活用がさまざまに活発化しつつあることも積極的に報道された。本紙の県内企業30社へのアンケート調査では、29社がウェブ会議を実施しており、そのメリット、デメリットも紹介された。

 このほか、ウェブ商談会(13日)や1次産業でのオンライン活用(16日、にっぽん診断)、学びでのオンライン活用(18日、みやざきSDGs・先駆者たち)、日向市でのワーケーション実証実験(18日)等々。オンラインが新たなチャンスを生み出すことも紹介され、読者にヒントを与えている。本紙記者の次代を見据えた探求心あふれる取材・報道を今後も注目したい。

 15日の紅葉巡り。迫力のパノラマ写真には目を奪われた。季節を感じさせる色鮮やかな美しい森林。本県の自然の奥深さを再認識した。コロナ第3波、鳥インフルエンザが心配される中、心癒やされる紙面であった。

 (11月の紙面から=毎月第1日曜日掲載)

 とみやま・さちこ 神奈川県出身。県産業集積推進室長や県工業技術センター所長などを務め、17年から現職。宮崎市。64歳。

© 株式会社宮崎日日新聞社