リン獲得を逃したチームによる先発投手争奪戦がスタートか

今オフの移籍市場は先発投手を中心に動いている。フリーエージェント市場ではチャーリー・モートン、マイク・マイナー、ドリュー・スマイリー、ロビー・レイがすでに契約を決め、ホワイトソックスはトレードでレンジャーズからランス・リンを獲得。あるアメリカン・リーグ球団の幹部は「(リンの移籍が)先発投手市場にドミノ現象を引き起こす可能性がある。リン獲得を逃したチームは他の有力な投手に目を向け始めるだろう」と指摘しており、本格的な先発投手争奪戦が幕を開けそうだ。

今オフの移籍市場における最高の先発投手はトレバー・バウアーだが、契約が高額になることが予想されるため、バウアーを獲得できるチームは限られる。よって、多くのチームのターゲットとなるのはジェイク・オドリッジ、田中将大、タイワン・ウォーカーといったバウアーに次ぐ「2番手グループ」の投手たちだ。マーカス・ストローマンとケビン・ゴーズマンもこのグループに該当するが、この2投手はクオリファイング・オファーを受諾し、早々に移籍市場から姿を消している。

オドリッジ、田中、ウォーカーの3投手のほか、ホゼ・キンターナ、ジェームス・パクストン、ギャレット・リチャーズ、コリー・クルーバー、J・A・ハップ、ジョン・レスターといった投手たちも各球団の補強ターゲットとなるだろう。また、ポスティング制度でのメジャー移籍を目指している菅野智之と有原航平の2投手も選択肢の1つとなる。

さらに、ソニー・グレイ(レッズ)とブレイク・スネル(レイズ)の2投手もトレード放出の可能性が取り沙汰されている。ただし、この2投手は相場よりも安い金額で複数年保有することができるため、獲得にはリン以上の対価が必要となることが確実。リンには少なくとも5チームが獲得に動いていたことが報じられているが、各球団が十分な対価をオファーできるかどうかがポイントとなりそうだ。

ある関係者は「リンの獲得を狙っていたチームは別の選択肢を検討しなければならない」とコメント。あるナショナル・リーグ球団の幹部は「トレード市場やフリーエージェント市場で先発投手の獲得を狙っているチームの顔ぶれは変わっていないと思う。(リンの移籍によって)ターゲットに多少の変化はあるかもしれないけれどね」と語る。

今のところ、先発投手市場は「コロナ不況」の影響を受けておらず、たとえばモートンは1年1500万ドル、スマイリーも1年1100万ドルの契約を手にしている。別のナ・リーグ球団の幹部は「今オフの移籍市場には大きな不確実性があるものの、どのチームも投手を必要としている。先発投手市場はそれほど大きなダメージを受けないエリアの1つだろう」と分析。現在も多くのチームが先発投手の補強を必要としており、有力な先発投手は実力と実績に見合った契約を手に入れることができるかもしれない。

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