地銀提携「数が大事」 りそなHD社長インタビュー

 業界再編が加速する地方銀行。国内金融大手、りそなホールディングスは、自前の商品やサービスを提供して共に利益確保を目指す「基盤」を武器に、地銀との業務提携を拡大していく考えだ。提携は「数が大事」であり、りそなが「中核になりたい」―。南昌宏社長は11月、インタビューに応じ、そう語った。(聞き手、共同通信=永森健)

インタビューに応じる、りそなHDの南昌宏社長=11月、東京都江東区

 ▽大きな転換点

 ―菅政権が発足し、地銀の再編機運が高まっています。現状をどうみていますか。

 長らくいろんな議論がされてきたが、地域経済の活性化と地域金融の維持強化が話の根っこにある。地域の金融機関が地元の経済や金融を中長期的にどう考えていくのかが一番のポイントだ。

 ―政府、日銀が地銀再編に向けて制度を整えています。  

 大きな時代の転換点に来ている。地域経済をどうやって活性化させるかは日本にとっても非常に重要であるし、産業や社会構造そのものが変わってきた中で、地域金融の在り方や、それを維持・強化していく方向感を、もう一回考え直さないといけない時期だ。

 そういう文脈の中で、地域金融機関が自身の地盤を中長期的に見たときに、世の中の変化を下敷きにしてどう考えるか。われわれは、いろいろな困りごとがあれば「プラットフォーム(基盤)」の中でしっかりと連携できると思っている。社会的な意義もあるのではないか。

 ▽地銀とウィンウィン

 ―りそなは、どうしていくおつもりですか。

 地域金融機関とウィンウィン(相互利益)の関係をしっかり構築したいし、中核になりたいというのが偽らざる気持ちだ。今年6月に「めぶきフィナンシャルグループ」とデジタル分野で戦略的な業務提携を結んだ。

 われわれが大きな顧客基盤を持ってない地域で、彼らは有力な顧客をたくさん抱えている。われわれの商品やサービスが間接的に届いていくネットワーク効果は重要だ。

りそなHD傘下にある、りそな銀行と関西みらい銀行の共同店舗=大阪府高槻市富田町

 ―今後はどこの地域の地銀と提携していく考えですか。

 特にどこかの地域というのはない。まず面積を広げる。数が大事というのが一つのポイント。新型コロナウイルス感染もあり、顧客のニーズは相当多様化し、高度化し、複雑化している。もともとの銀行が持っている知見やノウハウだけで対応するよりも、もっと外に開き、異業種が持っている知見やノウハウと一緒につながって連動することで、よい解決策を迅速に提供できる。それがこれからの価値だ。つながっている顧客の数があるということが一つの大きな出発点になる。

 今回新型コロナ感染拡大を受けて、上半期は資金繰り支援に軸足が置かれていたが、おそらく世の中の価値観や常識は相当揺さぶられている。その中で顧客がこれから感じる新しい困り事がいろいろ出てくる。経営支援、国際分業や供給網の見直しのほか、貸借対照表をどうしていくかもお悩みとして出てくる。一方で、デジタルとかキャッシュレス、働き方改革といった今まで困り事として認識されなかったものがどんどん出てくる。こういうものに最適な解決策を素早く提供していくかどうかが、今後の銀行の大きな勝負の分かれ目だ。

 ▽「まず資本から」は現実的でない

 ―「第4のメガバンク」構想を掲げるSBIホールディングスは出資を通じて地銀との連携を進めるなどいろんな動きが出ています。他陣営との違いは何ですか。

 他社の戦略を深く理解しているわけではないが、それぞれの地域金融機関に困り事があり、例えばこういう分野でもっと営業を展開していきたいとか、こういうところが弱いので補強したいとか、ということに対し、われわれには24の商品・サービスがある。先方の地域金融機関の機能強化とか困り事の解消にもつながってくる。比較的簡易で労力をかけずに実はつながることができる。 昔は資本ありきとか、システム統合ありきという文脈しかなかったが、今は相当変わってきている。われわれは「資本を絡めて」というのを全く拒絶しているわけではないが、ケースバイケースで話をさせていただく。「まず資本から」と入ってくることの方が現実的には少ないのではないか。まず、自分たちが補強したいということに対してどうやって手当てしていくかを考えていく。

りそな銀行と関西みらい銀行の共同店舗内=大阪府高槻市富田町

 ―業務提携の数など目標はありますか。

 相手先があることだ。目指しているものが共有され、しっかりとしたウィンウィンの関係が構築できていなかったら、うまくいかない。われわれは幅広くわれわれの商品やサービスを磨いていくし、入っていただく基盤についても入りやすい形にしていく。その中で地域金融機関と是非つながっていきたい。

 ―基盤強化などへの投資額はどのくらいになりますか。

 地銀連携だけの話ではなく、戦略的な分野であるデジタル関係も含めて3年間で300億円くらいは入れ、強化していきたい。

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