35年ローンを組んだばかりなのにボーナス減で赤字転落、妻の妊娠も!どう立て直す?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、36歳、会社員の男性。住宅を購入したばかりのタイミングでコロナ禍が直撃。ボーナス減で家計が赤字に転落したという相談者。さらにこのタイミングで妻が妊娠。どこから家計を見直せばよいでしょうか?家計再生コンサルタントの横山光昭氏が運営する『マイエフピー』のFPがお答えします。

オリンピック前に買ったほうがよいと言われ、住宅を購入したのですが、コロナの影響で月収が下がり、毎月赤字続きになってしまいました。住宅購入に頭金は500万円ほどを入れ、諸費用を払ったら、いま残っている貯金は180万円だけになりました。ローンは35年、4,300万円を組んでいます。

毎月の支払い負担が大きくなりすぎないように、ボーナス払いも利用して購入したのですが、今年はそのボーナスが大幅に減額されています。夏は1割カットでしたが、冬は5割ほどカットされます。金額にしても昨年は年間100万円ほどだったのに、今年は50万円ほどです。これでは、支払いをすると毎月の赤字の補てんができません。貯金など、全くできる家計状況ではありません。

しかも、共働きの妻が妊娠したのです。その影響で体調が悪く、会社を休みがちで、給料ががっくりと減りました。ボーナスも期待できないそうです。成果主義の会社なので仕方がありませんが、八方ふさがりな気持ちです。もちろん子どもが生まれるのはうれしいのですが、このままで子育てができるのかという不安も増えてしまいました。

不安解消には赤字をなくす、貯金を増やすことだとわかっているのですが、何をどうすると黒字にできるのか、わかりません。妻の産休、育休の時は暮らしていけるのでしょうか。出産費用を払えるかも心配ですし、子どもが生まれたとたん、困窮した暮らしをさせるのかもと思うと、気が気ではありません。どうすると切り抜けられるでしょうか。

【相談者プロフィール】

・相談者(36歳、会社員)、妻(34歳、会社員)

・毎月の手取り収入:相談者26万9,000円、妻14万8,000円

・年間の手取りボーナス:相談者約50万円、妻約30万円

・毎月の支出の目安:43万8000円

・貯金:180万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:8万3,000円

・食費:7万8,000円

・水道光熱費:1万4,000円

・通信費:8,000円

・生命保険料:1万8,000円

・日用品代:1万6,000円

・医療費:1万7,000円

・教育費:1万5,000円

・自動車関連費:3万2,000円

・被服費:1万2,000円

・交際費:2万8,000円

・娯楽費:3万2,000円

・嗜好品(コーヒー):5,000円

・奨学金返済(二人分):3万6,000円

・その他:4万4,000円


FP:住宅購入後、家計が赤字なのですね。購入前から増えた支出はないか、比較はしてみましたか? ローン返済額は今の収入から見ると妥当と言えますが、今後収入が減る可能性がある中ですと、将来の見通しが甘かったといえます。この状況下で家計を改善していけるか、考えてみましょう。

まずは家計管理の基本を取り戻そう

いろいろな問題を抱えていますが、いま直面している問題を解決していくにはまず、家計の赤字をなくすことが重要です。赤字がなくなれば、ボーナスの使い道の1つが減るのですから、かなりの軌道修正ができます。支出を見直し、削減を検討していきましょう。

ご夫婦二人暮らしなので収入をある程度、自由に使ってきたのでしょう。支出は全体的に多めで、特に食費、日用品代、交際費、娯楽費などが多いと感じます。奨学金の返済負担も、今となっては大きく感じます。

支出は全体的に把握して削減を目指してほしいのですが、どこから手を付けてよいかわからないという場合、固定費の見直しから始めてみましょう。固定費は毎月一定額の支払いが生じる支出です。住宅ローンは組んだばかりでしょうから見直しも意味がないかもしれませんが、通信費、自動車関連費、教育費は、契約内容を見直したり、そもそもそれが必要なのかということ自体から見直しをしてみましょう。生命保険も固定費の一つですが、子どもが生まれると必要な保障がまた異なってきますから、出産後に見直されることでもよいかもしれません。

固定費の次は変動費にメスを

固定費が終わったら変動費の見直しです。今年は新型コロナの影響で変動費が増えているご家庭が多くなっています。外出自粛、テレワーク、感染予防などにより、食費や日用品代、水道光熱費が増えているのです。いつもより1割くらい増えているかな、という状況ならそのままでも良い場合もありますが、ご相談者は家計運営に大きな影響が出ている状況ですから、今までと比較するのではなく、不要な分はカットすると考えて減らしていくことを考えましょう。

今の支出が収入の中に納まることが、これからの家計管理の入口です。ここをしっかりと作り上げていきましょう。

妻の休暇中の収入と暮らし方を知っておこう

妻が産休に入ると、民間企業の場合、通常は無給になります。社会保険料は免除になりますが、無給はご相談者のご家庭には痛いところです。胎児が一人の場合で、産前6週、産後8週の期間です。その間の生活ができるよう、今ある貯金は減らしてはいけませんし、前述のように収入の中に支出を収め、貯金を増やしていかなくてはなりません。

ただ、産休期間が終わると「出産手当金」を健康保険に請求できます。支給額は、妻が手当を支給開始する前1年間の標準報酬月額の平均を出し、30日で割ります。そして、その金額の2/3が一日当たりの手当額となり、産前産後休暇分の98日分が一度にもらえます。予定日が早まるとその日数は少なくなりますし、遅れると、その分の手当が貰えます。

貯金があり、その中で暮らせると、あとからお金が戻ってくるので生活は立て直しやすくなります。その後、育児休業に入ると、開始から6カ月は休業前の標準報酬月額の67%、7カ月目以降は、休業前の標準報酬月額の50%が支給されます。支給は2か月に一度ですが、生活費を考えると随分やりくりが楽になると思います。

肝心の出産費用はどのように準備する?

出産費用は、実はあまり大きな心配は必要ないと思います。普通分娩でも、帝王切開になったとしても、分娩には原則として子ども1人につき42万円の「出産一時金」が支給されるからです。健康保険から病院に直接払われるので、入院費用と相殺されます。自己負担額は病院で提示されている金額との差額となります。

とはいえ、今は1週間ほどの入院でも分娩の場合は関東近郊で50万円以上、60万円、70万円など費用が病院によって異なりますから、そこは事前によく調べ、選択するとよいでしょう。

ちなみに分娩にかかる費用も、確定申告の際の医療費控除の対象になります。出産一時金と相殺される部分は対象にはなりませんから、自己子負担額が高額になった場合は、確定申告をすると節税ができます。

このように、出産や出産後はある程度の収入がありますので、今の家計をしっかり整えることが、そのあとの暮らしにもつながっていくでしょう。不安もあると思いますが、慌てず、今できることをしっかりと取り組み、お子さんと楽しい暮らしを送ることができるよう、準備していきましょう。

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