忘年会シーズン真っ盛りのはずが… 自粛の波、飲食店に痛手

2人組の20代男性客は「最近は少人数で飲むようにしている」と話した=長崎市、海鮮台所さかなや

 忘年会シーズン真っ盛り-のはずが、新型コロナウイルス禍の今年は様相が違う。感染第3波が本県にも及びそうな中、多くの長崎県内企業が社員の会食を制約しており、書き入れ時に痛手を負う飲食店主らの表情は明るくない。

 9日午後7時ごろ、長崎市の歓楽街・銅座町。居酒屋「海鮮台所さかなや」は平日にもかかわらず、ほぼ満席だった。ただ、よく見ると2~3人の小グループばかり。20代男性2人組は「今日もサクッと飲んで早めに帰ろう」とビールをあおった。
 例年と違い、10人以上の団体利用はほとんどないという。先週土曜の予約はわずか1件。ずっと時短営業を続けており、3代目の河田庄一さん(30)は「12月で巻き返したかったけれど…。何回、壁を越えればいいのか」とため息をつく。頼りは「Go To トラベル」で訪れる飛び込み客。地元客から不安の声も聞くが、「県外客を断れば商売にならない」と消毒や接客時のマスク着用など対策を徹底し出迎えている。
 同市万屋町の居酒屋も忘年会の予約は「ほとんど入らない」。3月の送別会シーズンやゴールデンウイークと並ぶ書き入れ時だが、今は売り上げが1万円にとどまる日も。オーナー(48)は「今月は前年比60%に届くかどうか。客は感染拡大に敏感だ」と頭を抱える。
 こうした中、居酒屋チェーンのミライザカは「個食忘年会」と銘打ち、コース料理を小分けにして提供。「外食をためらう人やリモート飲み会を楽しみたい人」向けに鍋料理の持ち帰りも始めた。県内では市内2店舗限定企画で、大手デリバリー事業者と提携し宅配にも応じる。
 企業は社員の会食に目を光らせる。三菱重工業は以前から、県内を含む全職場に「感染リスクが高い場と認識し、業務上の必要性を厳格に見極める」よう通達。関係者によると「4人以下、2時間以内」を目安にしている。年末年始にシステム統合を控える十八親和銀行(同市)は、12月から行員同士の会食を原則禁止に。外部との会食も自粛を要請した。
 一方、県は9日、年末年始の会食時の感染対策を改めて県民に呼び掛けた。県職員に対しては「県民と同様」の注意喚起にとどめ、規制はしていない。
 東京商工リサーチが県内企業に忘年会や新年会を開くかアンケート(有効回答75社)したところ、昨年は開催したが今年は見送る企業が53%を占めた。昨年に続き開催しない企業を合わせると89%に上る。
 「(企業の)接待や2次会の利用が戻らない。だからといって『来てね』と言えば、常連客を困らせてしまう」。同市籠町のクラブ経営者はこう悩む。時には3密を避けるため「泣く泣く」入店制限することも。そんな折の10日、市内の接待を伴う飲食店でのクラスター発生が明らかになった。「さらに客足が遠のくのは避けられない」。言葉に悲壮感がにじんだ。


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