80年代で一番売れた曲「ダンシング・オールナイト」7秒のイントロでハートを鷲掴み! 1980年 4月21日 もんた&ブラザーズのデビューシングル「ダンシング・オールナイト」がリリースされた日

80年代ヒット曲 “イントロ秒数徹底調査” 1980年のシングルTOP100篇

最近の曲って、イントロ短くなってない!?

私は、“イントロマエストロ” という肩書で、イントロクイズ企画の立案~進行と出題までを、年間で100本近く実施しているのですが、ここ2~3年で、「最近の曲って、イントロが短くなってない!?」と言われることがとても多くなりました。私も含め、なんとなく皆さんも、そう感じていたのではないでしょうか。でも、本当に短くなっているのかどうかを調べた人っていないんですよね。

「じゃあ、やってみよう!」と、2020年12月に発表されたビルボード「2020年 年間JAPAN Charts」と、その前年の2019年にランクインした100曲のイントロの秒数を数えてみました。

結果は、2020年の平均秒数は12.3秒、2019年は13.4秒。1年で1.1秒短くなっていることがわかりました。※詳細は私の「note」を参照ください。

シャレでやってみたのですが、もっと前の年はどうだったのか… も調べてみたい気持ちになりまして、今回から、リマインダーで取り上げている1978年~1991年までの14年分を、1年ごとに年間シングルランキングTOP100のイントロ秒数を調査し、その結果を連載という形で紹介していきます。14年分を調査した先に見えるものは一体何か!? 皆さんも一緒に楽しんでください。

1980年 シングルTOP100のイントロ秒数は?

1回目の調査年は “1980年”です。その年間ランキングTOP10のラインナップと調査結果がこちら。

1位 ダンシング・オールナイト / もんた&ブラザーズ(7秒)
2位 異邦人 / 久保田早紀(27秒)
3位 大都会 / クリスタルキング(27秒)
4位 ランナウェイ / シャネルズ(0秒)
5位 順子 / 長渕剛(14秒)
6位 贈る言葉 / 海援隊(19秒)
7位 おまえとふたり / 五木ひろし(22秒)
8位 別れても好きな人 / ロス・インディオス&シルヴィア(19秒)
9位 さよなら / オフコース(12秒)
10位 哀愁でいと / 田原俊彦(14秒)
※(カッコ)の数字はイントロの秒数

調査方法は、年間シングルランキングTOP100にランクインした曲のイントロ秒数を、“0秒”、“1~2秒”、“3~10秒”、“11~20秒”、“21~30秒”、“31~40秒”、“40秒以上”… の7つの長さに分けて集計していきます。グラフにすると、こうなります!

“11~20秒” が35%、“21~30秒” が34%。全体の約7割が “11~30秒”。平均秒数は、18.9秒。2020年の平均と比べると6.6秒長いという結果でした。

イントロが印象的な曲というイメージが強い、2位の「異邦人」(久保田早紀)と、3位の「大都会」(クリスタルキング)のイントロ秒数はともに27秒。平均秒数よりも8.1秒長いです。

「異邦人」の編曲は萩田光雄。CBSソニーの音楽プロデューサー酒井政利から、新人のシンガーソングライターのデビュー曲をとにかく派手に、一発目からドーンと行ってくれ… という依頼を受け、ダルシマーなどの民族楽器を使い完成させた「異国風」イントロ。

一方の「大都会」の編曲は船山基紀。緊張感のある音数の少ないピアノにストリングスが入り込んでくる緊張感のあるイントロは、「アーアーッ!」ではじまる田中昌之の高音ボーカルを最大限に活かす形として機能しています。

7秒のイントロに込められた熱意を強く感じる「ダンシング・オールナイト」

この素晴らしい編曲家による、一度聴いたら忘れられないインパクトあるイントロ2曲を抑え、1980年の年間1位に輝いた曲は、もんた&ブラザーズの「ダンシング・オールナイト」。力強く的確なリズムを刻むベースとドラムの上に、マイナー調のメロディとリフを刻むギター、そして、もんたよりのりの、しゃがれ声のボーカルが混ざり合い、日本でもカッコいいR&Bナンバーを生み出すことができると証明した曲です。

イントロ秒数は7秒と、平均秒数より11.9秒も短い曲ですが、曲名通り、聴いている人を “ダンシングオールナイト” させるためにイントロの長さは関係ない。たった7秒のイントロだけで、味わったことのない高揚感を生み出し、聴いている人のハートを鷲掴みにします。

この「ダンシング・オールナイト」は、売上161万枚のヒットを記録。その後の10年で、この曲以上にヒットした曲は無く、1980年代(集計期間:1979年12月~1989年11月)のシングル売り上げ枚数1位という金字塔を打ち立てます。

素晴らしいイントロは、その曲を聴いてもらう間口を、どれだけ広げられているか… だと私は思います。「ダンシング・オールナイト」は短いイントロの中に「日本に新しいR&Bスタイルの音楽を広げるんだ!」という熱意を強く感じる曲だからこそ、ヒットしたのではないでしょうか。

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カタリベ: 藤田太郎

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