大根も、白菜も…

 「大根食うたら菜っぱ干せ」という言い習わしがある。捨ててしまいがちな大根の葉も、干しておけばいつか使える。無駄に思える物でも役に立つ。そういう意味らしい▲とはいえ、大根の葉は無駄どころかビタミン類が豊富と聞く。煮物によし、葉っぱも使える大根の出番が増える季節になった。歳時記をめくれば、冬の季語には大根も、鍋料理に合う白菜もある▲そんな旬の物をはじめ、このところ野菜の値段がぐんと下がっている。農林水産省の先週の調べでは、大根は平年の6割ほどで、白菜、キャベツ、レタスはほぼ半値だった▲この秋、天候に恵まれてよく育った一方、新型コロナで飲食店の需要が落ちたという。それで安値になったと知れば、スーパーで格安の値札を見てもやや複雑な気持ちになる▲県産の野菜の即売会が諫早市で開かれたと、9日の経済面にあった。きょう、あすも開かれる。少しでも生産者の助けになればと、旬の野菜をセットで売る。農家にとってもこの冬は厳しい▲受けがよくない、当たらない役者を「大根役者」と言う。大根は消化がよくて、あたることがめったにないからそう呼ぶらしい。しゃれの利いた、そんな言葉を生み出すほど体に優しい冬の野菜に、家庭での出番をより増やしたい。いくらかでも支えになればと心を寄せて。(徹)

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