募る不安…PCR検査までの道のり、記者が体験 風邪症状で遠く

© 株式会社神戸新聞社

PCR検査を実施している姫路市内の医療施設。防護服やフェースガードを着けた医師らが駐車場の車内で待つ患者の元へ向かう=姫路市内

 体調を崩しやすい冬。いつもは「ただの風邪」で済ませる症状に、今年は神経をとがらす。軽症のコロナ感染症と区別しにくい上、医療機関を受診しても、PCR検査が受けられるとは限らない。兵庫県姫路市に住む記者は先週、そんな状況に陥った。感染抑止には検査を増やす必要があるとされるが、体験から感じたのは検査までの“狭き門”だった。(小林良多)

 熱っぽく感じたのは10日ほど前。頭痛もあった。発熱などの場合、姫路市は地域の医療機関に電話で相談するよう呼び掛ける。仕事を休み、近所の内科に行った。職業は明かしていない。

 「風邪の薬を出しておきます。ゆっくり休んでください」。症状を確認すると医師はあっさりと言った。

 たしかに37.5度を超す熱や味覚・嗅覚異常はないが、心のもやもやは晴れない。国内では陽性者の8割が軽症か無症状だからだ。

 2日休んでも不調は続いた。「PCR検査を受けたいのですが」。診察を受けた内科医に電話した。答えはにべもなかった。

 「症状が当てはまらないので難しいだろう。不安な市民全員が検査を受けることになってしまう。どうしてもと言うなら市の相談センターに電話してみては」

 助言の通り、市発熱等受診・相談センターに尋ねた。電話口の女性は症状に加え、陽性者との接触の有無などを聞き取ると、諭すように「検査対象にはなりにくいはず」と説明した。

 「軽症や無症状の人からも感染が広がっているのにですか」。記者が問うと、女性はマニュアルに沿うように言った。「特殊な事情でどうしても検査が必要という方にお伝えしているのですが」。前置きの後、市内の医療機関の連絡先をいくつか読み上げ「検査が受けられるかどうかはあくまで医師の判断になります」と念を押した。

 結局、その中の一つでPCR検査を受けることができた。陰性の判定を受け取る時、記者の表情は緊張でこわばっていたはずだ。

 PCR検査は「偽陽性」や「偽陰性」もあるが、感染拡大の防止策として有効な手段の一つだ。“グレーゾーン”にいる患者の精神的負担を和らげる効果も大きいと実感した。

     ◇    ◇

 経験を基に取材した。姫路市保健所によると、姫路市では現在、1日最大590件のPCR検査が可能で、12月初旬は平均190件とまだ余裕がある。有川敦子副所長は「検査を絞り込む意図はない。ただし検査には医師の診断が必要。症状や陽性者との接触がないのに『不安だから検査を』というだけでは通らないでしょうね」と話す。

 判断基準は医師によって差があるという。どんどん検査に回す医師もいるが、消極的な場合もある。「受診後に『検査を受けられない』と連絡してくる市民はいる。ただ行政の立場から別の病院での重複受診は勧めにくい」と明かす。

 姫路市医師会は7月からドライブスルー式の「地域外来・検査センター」を開設し、直近は1日25件ほど検査する。石橋悦次会長は「対応できる数を大幅に増やし、地域の医師に活用を呼び掛けている。感染を抑え込むため、風邪ぐらいの症状でも積極的に受診してほしい」と指摘した。