“リーグ格差”の結果か?一因か? 2015年以降ゼロ、圧倒的に少ないセ→パへのFA移籍

FAでソフトバンクに移籍した中田賢一(左)と内川聖一【写真:藤浦一都、荒川祐史】

FA権を行使してセ・リーグからパ・リーグに移籍したのは実質的には2014年の中田が最後

オフのストーブリーグで注目を集めるFA市場。今季はDeNAの梶谷隆幸外野手、井納翔一投手、ヤクルトの小川泰弘投手、ロッテの松永昂大投手、西武の増田達至投手、熊代聖人外野手がFA宣言を行った。増田と熊代は権利を行使したものの、西武に宣言残留することに決まっている。

DeNAから権利を行使した梶谷、井納はともにDeNA退団が決まり、巨人に入団することになった。すでに両球団に意向を伝え、14日に正式に契約を結ぶ見込みだ。巨人は球団で10度目となるFAダブル獲りに成功。その中でも同一球団から2人の選手が加入するのは、史上初めてとなる。

梶谷と井納はセ・リーグのDeNAから同じセ・リーグの巨人への移籍となる。1993年に始まったFA制度だが、その歴史を紐解くと、特に近年、セ・リーグ球団からパ・リーグ球団へと移籍する選手が激減していることが分かる。

1993年にFA制度が始まると、松永浩美が阪神からダイエーに移籍。その後も仲田幸司(阪神→ロッテ)、稲葉篤紀(ヤクルト→日本ハム)、小久保裕紀(巨人→ソフトバンク)、内川聖一(横浜→ソフトバンク)とセ球団からパ球団へと移籍することは珍しくなかった。

パからセへの移籍が最も多い31例に対し、セからパへの移籍は11例しかない

だが、2014年に中田賢一(現阪神)が中日からソフトバンクに移籍し、2015年に木村昇吾が広島から西武へ移籍。ただ、木村の場合は宣言後に他球団からのオファーがなく、入団テストを経た移籍だった。実質的にはFA権を行使してセ球団からパ球団へとFAで移籍した選手は中田を最後に出ていないと言える。

これまでプロ野球では93人のFA移籍が成立し、梶谷と井納の移籍が正式に成立すれば、94人、95人目となる。これまでの93例のうち、セからパの移籍はわずか11例しかない。パからセへの移籍が31例と最も多く、パからパが24例、そしてセからセが27例となっている。

今季のプロ野球はソフトバンクが4年連続の日本一に輝いた。日本シリーズでは2年連続で巨人に4連勝して頂点に立った。パ・リーグ球団は2013年から8年連続、ここ10年で2012年を除く9度、日本一になっている。今季は開催されなかった交流戦でも2019年まで10年連続でパ・リーグが勝ち越し。今年の日本シリーズ後にはセ・リーグとパ・リーグの間にある“リーグ格差”も叫ばれていた。

近年、めっきりと減少しているセ・リーグ選手のFAでのパ・リーグ球団への移籍。パ・リーグ球団が求める選手がセ・リーグに少ないのか、セ・リーグの選手がパ・リーグへの移籍を望まないのか……。この傾向にも何らかの関係があるということだろうか。

【セ球団からパ球団へのFA移籍】
1993年 松永浩美 阪神→ダイエー
1994年 仲田幸司 阪神→ロッテ
2004年 稲葉篤紀 ヤクルト→日本ハム
2006年 小久保裕紀 巨人→ソフトバンク
2007年 石井一久 ヤクルト→西武
2008年 中村紀洋 中日→楽天
2010年 内川聖一 横浜→ソフトバンク
2011年 大村三郎 巨人→ロッテ
2012年 平野恵一 阪神→オリックス
2014年 中田賢一 中日→ソフトバンク
2015年 木村昇吾 広島→西武(Full-Count編集部)

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